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中国の電気自動車(EV)大手BYD(比亜迪)の新車7000台以上を積んだ自動車運搬船「深圳号」が約1カ月の航海を終え、5月末にブラジル北東部のスアペ港に到着した。世界市場へ向けて中国の新エネルギー車(NEV)が着実に歩みを進めている。
ブラジルは世界第6位の自動車市場であり、EV市場の成長が著しく、中南米全域への影響力も持つことから、中国のNEVの輸出先として存在感を増しつつある。
ブラジル電気自動車協会(ABVE)によると、ブラジルで2024年に販売されたEVは前年より90%増加し、17万7360台となった。中国乗用車市場情報連合会(CPCA)によると、2025年1月から5月までの中国製EVの輸出先上位3カ国はベルギー、ブラジル、メキシコで、輸出台数はそれぞれ11万9678台、10万5513台、8万4862台だった。
BYDは海外進出する中国自動車メーカーのなかでもブラジル市場で一歩リードしており、純電気自動車(BEV)で優位を保っているだけでなくプラグインハイブリッド車(PHEV)も順調に売れ行きを伸ばしている。同社のブラジル支社は2024年、前年比300%増となる7万6713台を販売した。ブラジルの25年5月のBEV販売台数6969台のうち、BYDが5596台と80%以上を占めた。
しかしBYDは現在、新たな課題にも直面している。ホンダや仏ルノー、独フォルクスワーゲン(VW)など、長年にわたりブラジル市場を開拓してきた老舗メーカーとの競争に加え、ビジネス環境の変化にも対応しなくてはならないのだ。
ブラジルはEVに対する関税を一旦は免除したが、開発商工サービス省(MDIC)は2023年、国内生産を推進するために翌24年から再びNEVに対する関税を再開し、26年7月まで段階的に税率を引き上げ、最終的に35%にすると発表した。
今年7月には、税率の引き上げが実施され、BEV、PHEV、ハイブリッド車の税率はそれぞれ25%、30%、28%となる。冒頭の自動車運搬船が出航したのも、こうした状況を踏まえてのことかもしれない。
ブラジルの関税の変更は、メーカーの輸出の動きにダイレクトに影響した。中国メーカーは昨年末から輸出をペースアップし、税率引き上げ前に出荷するための船腹を奪い合った。ブラジルが2024年上期に中国から輸入したEVは6万2000台を超え、輸入台数全体の91.4%を占めた。
しかし完成車の輸出はメーカーにとって海外進出の一部分にすぎず、本当の戦いはブラジル現地で繰り広げられることになる。
ブラジル政府は2024年、グリーン・モビリティ・イノベーション・プログラム(MOVER)を打ち出し、世界の自動車メーカーに現地生産を呼びかけて、自国の自動車産業の活性化を図っている。ホンダや米ゼネラル・モーターズ(GM)、欧州のステランティスなどを始め、中国のBYD、広州汽車(GAC Group)、長城汽車(GWM)、奇瑞汽車(Chery Automobile)、吉利汽車(Geely Automobile)などがこの数年間に相次いでブラジルへの投資を表明し、現地での生産や合弁を進めている。
中国メーカーは製品展開や販売ルート、現地サプライチェーンの構築まで、ブラジルで着々と歩みを進めている。2026年は中国のNEVメーカーにとってブラジル進出の重要な転換点になるかもしれない。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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