「貼る」注射で患者の負担を軽減 経皮吸収パッチの量産体制を構築する「中科微針」

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「貼る」注射で患者の負担を軽減 経皮吸収パッチの量産体制を構築する「中科微針」

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薬剤の投与形態には経口剤や注射剤のほか、貼付剤、軟膏などの外用剤がある。それぞれ新薬開発の過程で最も適した形に製剤され、病気の治療に用いられている。

最近では皮膚に貼って投薬する「経皮吸収パッチ」という新たな投与形態の開発が進み、従来の錠剤、注射に次ぐ第3の投与方法となりつつある。効率的に投薬できるだけでなく、患者の負担軽減にもなっている。この中核的役割を担う「マイクロニードル(極細針)」は、薬の有効性分を針に封じ込めて体内へゆっくりと注入する。注射と比べ、より安全で痛みが無い、手軽、あらかじめ決まった量を投与できるといったメリットがあるという。

この極細針による経皮吸収パッチの量産化に成功したのが「中科微針(Zhongke Microneedle)」だ。総経理の江林氏は、マイクロニードルは最も適用範囲の広い剤形だと考える。

同社は「中国科学院理化技術研究所(TIPC-CAS)」の研究員、高雲華氏が率いる単結晶シリコン製マイクロニードル・パッチ研究プロジェクトチームが発祥。研究結果の積み重ねによって次世代マイクロニードル投薬技術プラットフォームを構築し、事業化を実現した。

中科微針は2018年に「中科院創投(CASVC)」「中科創星(CasStar)」からエンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達している。2019年、北京市に量産体制の整ったマイクロニードルの生産ラインを完成させ、8月には出荷がスタート、月間生産量は180万枚に達する。重慶市で今年10月に登記された完全子会社が、地元政府と共同で4000万元(約6億円)を出資し、2020年上半期には年間数億枚を生産する新工場が竣工する予定。

江総経理は、次の事業拡大に意欲をみせる。
1.製薬会社向け受託開発・製造、自社開発した薬剤用管路の販売拡大。現在は血管疾患、糖尿病、心臓疾患などの適応症を対象としている。

2.低リスクで、通常管理においてその安全性や有効性を保証できるとする「第I類医療機器」や美容医療向け製品の発売。しみ、しわ、目のくま等に対応した商品の拡充。

美容医療向け事業が好調で今年8月の商品発売以降、売り上げは数百万元(数千万円)に達した。2020年には1億元(約15億円)を超える見通し。

中科微針はマイクロニードル・パッチの量産という難題をクリアし、年産数千万枚のファクトリーオートメーション化を実現した。商品はターゲットを絞った免疫治療薬剤、何度も注射が必要なバイオ製剤、小児向け投薬や経皮剤といった分野で応用されている。

マイクロニードルによる薬剤投与の構想については、1958年に既に特許申請されているものの、実用化には至っていなかった。江総経理は「極細針の製造には高度な技術が必要とされ、これまで大量生産できる技術が開発されていなかった。一枚のマイクロニードル・パッチの重さはわずか20~50ミリグラム。繊細ゆえに品質維持がとても難しい」と語った。

同社の工場内部

今後の見通しについて同氏は、外用薬、化粧品、バイオ製剤や一部の化学薬品など多くの分野においてマイクロニードル・パッチの応用が期待されており、とても大きなポテンシャルを秘めているとの考えを示した。業界大手には米国の「Zosano Pharma」や「Corium」があり、中国では「撹微医療(Shanghai Lanwei Medical Devices)」「蘇州納通生物納米技術(Nanomed Skincare)」「新済薬業(Hubei Neworld Pharm)」「和心諾泰(ANSSURE PHARMA)」などがあるが、いずれも量産化には至っていない。

同社創業者で董事長、チーフサイエンティストの高雲華博士は、中国科学院理化技術研究所(TIPC-CAS)の研究員で、2000年に「中国科学院(CAS)」が優れた人材を招致・養成するプログラム「百人計画」に選ばれている。2003年からマイクロニードルによる薬剤投与の技術開発に携わり、蘇州納通生物納米技術でその実用化を成功させた。
(翻訳:貴美華)

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