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米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・フアンCEOは7月15日、年内3度目の訪中の際に、米当局から中国向け人工知能(AI)用の半導体チップ「H20」の輸出再開の許可を得たと明らかにし、「すでに出荷を開始している」と語った。
バイデン前政権が輸出規制を強化した2023年以降、NVIDIAの先端半導体チップ「A100」や「H100」の中国輸出が禁止され、H20などを代替製品として投入してきた。しかし、中国のAIスタートアップ「DeepSeek」が高性能AIモデルの開発にH20を使用していたことが発覚し、トランプ政権は今年4月、H20も輸出規制の対象に追加した。
NVIDIAの発表から数時間後、同業の米AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)も、中国向けに設計されたAIアクセラレーター「MI308」の対中輸出を再開すると発表した。
しかし、わずか3カ月間の禁輸措置が、中国半導体業界で起きた動きは、エヌビディアにとって無視できないものとなっている。この間隙を突くように、中国国内の主要半導体メーカーはH20の代替となる製品を相次いで発表した。
IT大手の百度系の昆崙芯片科技(Kunlunxin)が第3世代の半導体チップ「P800」を、「摩爾線程(Moore Threads)」は「MTT S80」を、華為技術(ファーウェイ)は「昇騰910C」を、そして中国科学院系の寒武紀科技(カンブリコン、Cambricon)は「思元590」をそれぞれ市場に投入した。
中国半導体が突き進む“国産化”の現実
H20は、NVIDIAが米国の輸出管理政策に対応する形で開発した中国市場向けの半導体チップだ。フラッグシップモデルであるH100シリーズをベースに計算能力、接続機能、帯域幅を大幅に抑制した設計で、いわば「簡易版」である。ピーク時の計算能力はH100の約15%に相当するが、AI推論やエッジコンピューティングなどの用途には対応可能とされている。
複数の業界関係者は、今年上半期に国内の主要チップメーカーの「すべての生産ラインは受注で埋まっている」と指摘。中でも、「昆崙芯、カンブリコンなどの企業に注文が殺到している」と明らかにし、国内需要の高まりが鮮明となっている。
決算のデータからもこうした動きが裏つけられる。カンブリコンが4月18日に発表した2025年1~3月期の決算によると、売上高が前年同期比42.3倍と急増し、上場以来初の四半期での黒字を達成した。
この急成長を支えた顧客は主に二つの分野に集中している。一つ目は、国産化を進めることが求められる半導体チップを大量調達する通信事業者や各地のデータセンター。二つ目は、大手IT企業である騰訊控股(テンセント)、字節跳動(バイトダンス)、アリババグループなどだ。これらの企業はH20の輸出規制の対象となる前に既に10万個以上のチップを調達していたが、AIの継続的な運用に伴い、演算能力に対する需要が依然として旺盛だ。
これまで、中国国内のGPUメーカーはNVIDIAが支配する機械学習の市場に切り込んで、参入することが困難だった。これはチップの計算能力、連携能力、ソフトウェアのエコシステムのレベルが極めて高く、NVIDIAが十数年かけて築き上げた牙城だからだ。一方で、大規模言語モデル(LLM)の推論分野においては、参入障壁は比較的低い。そのため、多くの中国メーカーはまず推論から市場参入を試み、足掛かりを築く戦略を採用している。
NVIDIAの市場シェアを奪うべく、各社は製品開発において以下の分野に注力している。例えば、推論向けチップとAIモデルの最適化を強調する。推論処理に必要なメモリ容量を拡大することで通信負荷を軽減し、より大規模なモデルへの対応力を高める。また、データ転送速度の向上とメモリ依存度の低減に取り組むことで、全体的な処理効率を改善している。そして、H20に対する優位性を確保すべく、推論チップのエネルギー効率を強化している。
H20は機能を一部制限した製品ではあるが、依然として高いコストパフォーマンスを誇り、ハードウェアとソフトウェアを一体で提供するAIソリューションにも適しているとされる。しかし近年、米国による輸出規制の強化が繰り返されており、中国市場への安定供給には不透明感が拭えない。こうした国際情勢の先行きが見通せない中、「長期的には、(中国の)国産チップメーカーの成長を抑え込むのは難しいだろう」との見方も業界内で広がりつつある。
業界関係者は、中国製の半導体チップは着実に進化しており、現在はH20を主なターゲットとして開発しているが、長期的に見ればより高性能なB200やH100との競争も視野に入ってくるだろうと指摘する。同氏によれば、「現在、H20が一定の優位性を保っているが、年末までにその優位性は弱まる可能性がある」と述べた。
5月20日に台湾で開催されたコンピューター関連機器の展示会「Computex 2025」で、ジェンスン・フアンCEOは、中国のAIチップ市場におけるNVIDIAのシェアが2022年の95%から、米国の輸出規制の影響を受けて2025年には約50%まで低下したと明らかにした。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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