中国の電動船「御水飛行」、水中翼構造で航続距離2倍に 観光や物流向け展開へ

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電動水中翼船を開発する中国スタートアップ「御水飛行(深圳)科技」(以下、御水飛行)がこのほどエンジェルラウンドで、香港科技大学の李澤湘教授が設立したXBOTPARK基金から1000万元(約2億円)近くを調達した。

2025年に広東省深圳市で設立された御水飛行は、高性能な電動水中翼船の開発に特化したテック企業で、すでに第1号製品をリリースして納品を進めている。創業者の呉関CEOは、マレーシアのクアラルンプール大学(UniKL)で船舶・海洋工学の博士課程に進み、複数の国際的なプロジェクトに参加した経歴を持つ。

世界市場、30年に2.4兆円

ここ数年、世界的な気候変動や中国政府の二酸化炭素(CO2)排出削減政策が進む中、海運業界でも新エネルギーを動力源とする船舶の導入が強化され、その市場規模は急速に拡大している。市場調査会社の中研普華などのリポートによると、世界の電動船市場規模は、2024年の632億3500万元(約1兆3000億円)から、30年には1190億元(約2兆4000億円)超に成長すると予測されている。

深圳市大沙河でテストされる御水飛行の電動水中翼船(画像は企業提供)

電動の水上モビリティを実用化するうえで鍵を握るのが、航続距離と耐航性だ。燃油船に比べ、同等重量の動力源を搭載しても一般的な電動船の航続距離は30~50キロメートルにとどまり、燃油船の200キロメートルに遠く及ばない。バッテリー容量を増やせば解決できるが、船体の大型化とコスト増を招く。これが業界全体の大きな課題となっている。

御水飛行は水中翼構造を導入し、この課題に挑む。呉CEOによると、流体力学の原理で船体を水面から浮かせて走行することで水の抵抗を減らせるのが特長。電動水中翼船の航続距離は従来の電動船の2倍となる80キロメートルに達し、効率性を大幅に改善した。

船体に炭素繊維、総重量800kg

さらに同社は航空機設計の思想を採用し、炭素繊維複合材料(CFRP)を船体に使うことでエネルギー消費を減らした。材料の降伏強度や船体の構造強度の改良を進め、製品の総重量を800キログラムに抑えている。

広東省東莞市の松山湖で製品公開

また、自動操縦を可能にする制御アルゴリズムも独自に開発した。このアルゴリズムは、船載センサーを通じて水流や水域などの環境データをリアルタイムで収集する。データが中央処理装置に送信されると、システムが航行の姿勢や水中翼の角度を細かく調節し、旋回の際も高い安定性を保つことができる。

船体デザインのカスタマイズサービス

御水飛行は、今後数年で国内外市場への本格展開を計画する。中国国内では沿岸部の観光地を重点的に開拓し、観光関連企業や政府などの法人顧客に製品を供給する。海外市場では東南アジアや中東のヨットクラブ、船舶輸送会社などをターゲットとして、プライベートヨットやグリーン輸送の用途を広げる。さらに欧州では島しょ航路や特殊輸送への対応を進め、観光プラットフォームや物流企業向けの販売を見込む。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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