「ラスト100メートル」を自動化 中国、搬送ロボット群で倉庫効率革新

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工場や倉庫向けの自動搬送ソリューションを開発する中国スタートアップ「魔倉機器人(MagicStore)」がこのほど、新たに数千万元(数億円)の資金調達を実施した。産業用ロボット大手の匯川技術(Inovance Technology)系の哇牛資本(Value Capital)のほか、蘇州工業園区科技創新投資基金や一部の既存株主も出資した。資金は製品の改良、生産強化、海外進出に充てられる。

魔倉機器人は2023年に江蘇省蘇州市で設立され、製造企業の工場と倉庫をつなぐ「ラスト100メートル」に焦点を当て、自律搬送ロボットとソフトウエアの一体開発に注力。低コスト導入・空間利用率向上・環境適応力を強みに、医薬、化学工業、食品のコールドチェーン、自動車製造、新エネルギー、物流パークなど幅広い分野に製品を提供している。

工場の生産工程は高度に自動化が進む一方、倉庫に資材を搬送・保管する作業は依然として人手に頼る部分が大きい。フォークリフトが普及してからほぼ100年経つが、基本的な形態や作業方法に大きな変化はない。立体自動倉庫は作業効率が高いものの、改造コストは高額で、空間利用率の向上にも限界がある。しかも投資回収期間の長さから導入に踏み切れない企業も多いのが現状だ。

魔倉機器人の創業者、程昌順氏によると、顧客企業は改造コストを安く抑えた上で、既存の環境に適応させられる費用対効果の高いソリューションを求めているという。競合企業は多いが、総花的な開発に陥りがちだ。数十種類のロボットを開発しても、それぞれの競争力は弱く、クローズドループシステムの構築も難しい。しかも導入プロセスは複雑で費用も高くつく。

そこで魔倉機器人は資材や貨物の移動がXYZ軸の3方向に限定されることに着目し、4種類のロボットとソフトウエアプラットフォームの開発に集中した。床を走る自律搬送ロボット「MagicAnt」は平面移動(XY軸)を担当し、工場と倉庫をつなぐ。立体倉庫用ロボット「MagicCarpet」は各層に設置した軌道システム「MagicRack」と連携(XYZ軸)し、倉庫内搬送を効率化する。さらに垂直搬送ロボット「MagicLift」がZ軸の移動を担当し、ソフトウエアプラットフォーム「MagicVision」で総合的な調整をすることで、クローズドループが形成される。

このクローズドループ型ソリューションにより、1台あたりの材料コストや導入コストを抑えつつ平均保管コストを従来の立体自動倉庫に比べ3〜5割削減。特に空間利用率の改善効果が大きく、高さ30メートル級の大型倉庫でも有効活用できる。

製品設計では品質・安定性・信頼性を重視。MagicCarpetは軽量化設計を採用しており、最も薄いところの厚みはわずか10センチ。LiDARとRFID(無線自動識別タグ)を組み合わせたナビゲーションを利用して静かに稼働し、高い耐久性も備える。MagicAntは、床に置かれた貨物の入出庫ができるほか、貨物の向きに車体の向きを合わせることも可能。ソフトウエアプラットフォームのMagicVisionはAIアルゴリズムを活用し、注文処理から在庫管理までの全プロセスをデジタル管理すると同時に、複数種類のロボットの連携も可能にする。同社は発明特許、実用新案、意匠特許を計100以上出願しており、うち半数以上が発明特許だという。

導入実績は約20件に上り、京東物流(JD Logistics)、国薬集団薬業(China National Medicines)の深圳配送センター、九典製薬(Jiudian Pharmaceutical)、濰柴動力(Weichai Power)など大手企業が顧客に名を連ねる。

創業者の程昌順氏は、物流ロボット大手デマティック(米国)や自動倉庫大手TGW(オーストリア)で15年以上の経験を持つ。CTOはBYD出身で、電気自動車(EV)分野の知見を倉庫ロボットに応用している。程氏は今後について「各製品のスマート化を進め、環境認識と自律判断を可能にするエンボディドAIの方向に発展させたい」と語り、分散型アルゴリズムによる自律協調でシステム効率と安定性を高める方針を示した。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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