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DiDiモビリティジャパンは、2018年6月にソフトバンクと中国ライドシェア最大手の「滴滴出行(Didi Chuxing、以下「DiDi」)」が作った合弁会社である。DiDiは評価額6兆円のテック企業で、ライドシェアやタクシーの配車プラットフォームサービスを世界5億5000万人以上のユーザーに提供している。
12月3日、JTBと日中ツーリズムビジネス協会が共催した「日中ツーリズムサミット2019」で、DiDiモビリティジャパン事業開発本部のEric Wei (魏嘉宏)本部長、Baidu Japanの張成煥CEO及びネットスターズの李剛社長が、「中国テクノロジー(MaaS・キャッシュレス決済・ビッグデータ)が生む日本地域創生の可能性」について、パネルディスカッションを行った。その後、36Kr JapanはDiDiモビリティジャパンの現状及び今後について、Eric Wei氏に個別に話を聞いた。
――DiDiモビリティジャパンは2018年に設立されてから現在までに、スタッフ100人以上の規模に成長してきました。まず、今のチーム構成を簡単に教えてくださいませんか。
「配車のプラットフォーム事業がメインなので、半分以上はタクシー事業者向けの営業だ。現在、弊社はすでに400社以上の会社と提携を結んでいる。そのほか、PR・マーケティング戦略部門、(自動車以外の)パートナー開拓推進部門、カスタマーサービス部門など、それぞれ重要な役割を果たしている」
――開発チームは中国にいるのですか?
「そのとおり。日本では直接開発チームを抱えていない。日本のマーケットの特徴を分析し、ニーズを掘り起こすプロダクトマネージャー(PM)がいる。彼らはエンジニアチームに必要な情報を伝えて、システムに反映させるという流れになる」
――日本は中国市場と全く異なる市場だと思いますが、日本市場に進出する際、一番の壁は何でしたか?
「(笑)確かに違う。だからこそ、ローカライゼーションが大事だといつも心がけている。
中国では、DiDiのドライバーの平均年齢は30代だ。スマートフォンの使用に慣れていて、DiDiのアプリをダウンロードさせればすぐサービスの利用開始が可能になる。一方、日本人のドライバーの平均年齢は59歳。スマホの小さいスクリーンだと文字が読めない場合もあるので、DiDiは日本向けに8インチのタブレットを導入した。また、もっと手軽に使ってもらえるように、システムのUI設計もシンプルに変えるように工夫した」
――配車サービスといえば、DeNAが運営する「MOV」、ソニー系みんなのタクシーの「S.RIDE」などがあり、一番大きいものはJapan Taxiでしょうか。日本最大のタクシー運営会社という背景だけあって、非常に強い競合相手になりそうです。同じ土俵で勝負するにあたって、御社の強みは何ですか?
「まず、Japan Taxiはタクシーの運営・管理会社であるのに対し、我々はプラットフォームのプロバイダーだということだ。Japan Taxiのサービスはどちらかいうと運転手向けのものだと考えている。今までにない移動体験をユーザにお届けすることが、DiDiモビリティジャパンの目標だ」
「たとえば、私達は定期的に乗客と運転手にアンケート調査を行い、顧客の声を収集、分析している。ここで日本の状況に対応した2つ例をあげたい。1つ目は、日本人はポイントを貯める習慣があるということ。顧客からの「ポイントないの?」という声を受けて、私たちはすぐ乗車のポイント制度を導入した。最大3%の還元があるので、かなりいい反応を頂いている。これは中国にもブラジルにもなく、日本だけにあるサービスだ。2つ目は、日本では手袋をしている運転手が多いこと。そのため、アプリに音声認識機能を導入した。これで運転手がお客さんからの配車注文を受けた際に、スマートフォンやタブレットの画面を手で操作せずに受注が完了できるようになる」
「DiDiは中国発のサービスではあるが、日本で成功のカギは現地化していくことだと認識している」
――ソフトバンクもDiDiも、疑いのない技術力の高い企業です。特にDiDiの5億5000万のユーザーの行動履歴をもとに磨かれたAI技術及びそのプラットフォームの精度は世界トップレベルだと思います。御社は合弁会社として、技術支援以外に2つの巨頭にどういう期待を持っていますか?
「それぞれが抱えている膨大なユーザの数だ。ソフトバンクの携帯ユーザーは4000万人、DiDiのユーザーは5億人以上。10分の1でもいいので、そういったユーザをDiDiモビリティジャパンのユーザーにできれば、我々ももっと良いプラットフォームを作りあげ、良いサービスが提供できるに違いない」
――中国のタクシーは単価が安いため利用者数は非常に多いのですが、日本のタクシーは高くて乗る人は少ない印象です。本当に日本の市場を拡大できるのでしょうか?
「確かにキロで計算すると、日本のタクシー運賃は世界で一番高い。日本では、料金を安くしてより多くの人に乗ってもらうことが我々の狙いではない。日本のタクシー市場は1兆6000億円以上の規模があり、まず既存のユーザの移動体験を改善することが大切だ。例えば、移動したいときはいつでもどこでも簡単にタクシーを呼べることや、車内の決済の手段をもっと多様化させるとか‥」
「日本ではPOS端末を利用しているタクシーが4割しかないので、決済という問題を解決すると、外国人観光客も利用しやすくなる。そうなると市場のパイも大きくなっていくだろう」
「それから、もう一つ考えられるのはタクシーの相乗りサービス(タクシーに目的地の近い知らない人同士が一緒に乗ること)だ。特に日本の地方都市ではサプライヤーの数はもともと少なく、うちのプラットフォームを通してマッチングすれば、効率よく回転できるし、乗車のコストも減らせる」
――地方での相乗りサービスはなかなかいいアイディアですね。広がる気がします。では最後に、差し支えない範囲で結構ですので、今後日本での計画を教えてください。
「まず、我社では最近広告事業部を立ち上げた。第一弾として、12月9日からタクシー車内のデジタルサイネージサービス 「DiDi TV」の本格的な運営を開始する。O2O(Offline to Online)の広告モデルを通じて収益を図ることで、運転手の収入をアップしたり、乗車運賃を安くしたりすることができる」
「それから、キャッシュレス決済と高精度地図を推進することだ。キャッシュレス決済ではPayPayと提携するほか、チャネルを拡大し続けていく。また、日本市場では弊社のサービスに最適の地図サービスはまだなく、これからゼンリン社と一緒に地図サービスの開発をしていく」
(文・Ai)
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