ダイレクトブランド時代における企業の海外進出、Shopify中国担当者「機は熟した」

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

特集注目記事

ダイレクトブランド時代における企業の海外進出、Shopify中国担当者「機は熟した」

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

2019年11月26日~27日、スタートアップやIT業界に特化した中国の最大級メディア「36Kr」は、北京国際会議中心(China National Convention Center)において「2019WISE 新商業大会」を開催した。同イベントは中国ニューエコノミー領域では最も盛大なカンファレンスとして今年で7年目を迎えた。2018年の来場人数は約2万人だった。

36Krはこれまで10年間、中国のデジタル経済やイノベーション産業の成長を注視し、資源や情報、ブランドを介した支援によって各業界の主要企業を結び付け、ニューコマースの展開を促してきた。今日、インターネット産業の発展は中盤に入り、新たな技術、新たなシナリオが既存産業を根本から覆し、再構築している。同社は本イベントに世界のスタートアップ・大手IT企業・投資機関・地方政府・既存型企業などを招き、産業とイノベーションの深い融合に関連するさまざまな挑戦や好機を共有してもらう。

会期中にはECサイト構築支援を行うカナダ企業「Shopify」で中国地区の顧客管理を担当する陳瑛氏が登壇し、中国のEC、とくにDTC(販路を自社サイトに限定するECの手法)業界に訪れた好機やその背景について明かした。以下はその抄訳。

DTCとは、自社の商品を中間業者を通さずに直販を行うという概念だ。商品だけでなく、ブランドの持つ言語やサービスの価値を直接消費者に届けることができる。

WISEに登壇したShopifyの陳瑛氏

Shopifyの存在は、世界的にDTCがトレンドとなっている現状と切り離せない。2004年に設立された弊社は、全ての企業や個人事業者が低コストで簡単に、かつ素早くブランドを確立できる独自のシステムを構築した。ECサイトの構築だけではなく、DTCのインダストリーチェーンに存在するいかなる運営上の需要にも応えられる支援サービスを行う。2015年に上場し、現在は175カ国の100万以上の業者がShopifyを利用してDTC事業を立ち上げている。顧客は個人事業者から急成長中のブランド、フォーチュン・グローバル500にランクインするような大企業までを網羅している。

ShopifyとDTCが切っても切れない関係なのはなぜか?弊社の今日の成功は決して自社の力だけで成し遂げたものではなく、エコシステムの構築という理念のもとに築いてきたものだ。成功企業はおしなべて時代のトレンドを掴んでいる。トレンドが世界の消費習慣や事業モデルを従来の単純なB2CからDTCへ発展させてきた。Shopifyはこうしたトレンドの誕生を加速させたのだ。

今回はとくに、今という時代は世界各国のブランドが海外進出を実行に移すのに最良の時機だということをお伝えしたい。

海外進出が好機を迎えた背景にある一つ目の要素は、新興ブランドの台頭が過去に例をみないほど急速に進んでいるという点だ。

新しいブランドの振興がこれほどまでに速くなった理由が三つある。

一つ目は、消費者の変化。消費者は現在、従来のように実用性や安さだけを決め手に商品を購入することはない。商品の魅力を感じ、商品を通じて自分の意見や主張を表現できる、商品が自分のカラーに合う、商品で自分のイメージを構築できると感じた場合に商品を購入する。

二つ目の理由は、購買チャネルの多様化。現在は数多くのメディアやデバイスを通じて消費者にリーチできる。

三つ目の理由は、DTCを運営するインフラが整ったこと。企業は低コストでサイトを構築し、商品を出品できる他、サイト上での決済や受注処理、出荷、通関手続きも可能になるなど、スピーディーに事業システム全体を連携させられるようになった。

以上の理由から、中国のみならず世界各地で新興ブランドが急速に台頭し、中国ブランドに海外進出の好機をもたらしている。

二つ目の要素は、中国の製造業やイノベーションがこれまでにないほど力を付けた点だ。

三つ目の要素は、DTCが海外進出を果たす基礎条件が満たされた点だ。2013年から現在までに、越境ECの取引規模が貿易総額に占める割合は10%から30%にまで伸びた。B2Cモデルの越境ECが中国の輸出入産業を大きくけん引している。

越境ECにおけるDTC技術の成熟度については、以下の3点を挙げたい。

1)中国からの越境ECに関しては、従来はアリババ傘下の「AliExpress(全球速売通)」や「eBay」などのプラットフォームを経由させていた。中国企業はこの過程において、海外の消費者が好む商品を理解し、自社の運営チームを整え、英語をはじめとした各国言語に対応するアフターサービス体制を固めた。

2)中国の海外向けDTCは、インダストリーチェーンをすでに完成させた。サイト構築にはじまり、通関手続きや国際物流・保管、輸出金融、海外の法律・決済・税務面などを解決する媒体やサービスが出揃って、産業全体の循環体制が整った。

3)中国国内のDTCも急速に発展している。国内のEC企業はインフルエンサーを起用したダイレクトマーケティングの活用や「双11(ダブルイレブン)」をはじめとした販促イベントなど、消費者に直接リーチする手法において経験豊富になっている。

改めて最良の時機について述べる。中国ブランドには現在「天の時、地の利、人の和(ふさわしい時機と場、ご縁)」が揃っている。新興ブランドがこれほどまでに急速に伸びている現在の情勢は「天の時」。中国で製造業が未曽有の強さを持ちえたことは「地の利」。海外進出の条件が整ったことにより、成熟した組織や人材、サービス業者が育ったのは「人の和」によるものだ。これらの要素が揃って、中国ブランドの海外進出を支えているのだ。

しかし、すべてのチャンスには挑戦が伴う。過去十数年で、中国企業は第三者プラットフォームを通じて海外進出を果たしてきたが、そのプロセスにおいて国内と海外の勝手の違いに直面している。海外のプラットフォームは出店業者に顧客データを公開しないため、出店業者はユーザーに直接つながる連絡先を得られない。彼らのデータ分析能力も全体的に弱いままだ。

Shopifyがここまで人気を獲得したのは、ここ数年でプラットフォーム同士の競争が過熱したことによるプラットフォーム側の方針変更などに、多くの出店業者が危機を感じたからだ。我々は今後、中国の企業やブランドが海外のユーザーによりよい体験を提供する能力を高め、海外市場でのマーケティング能力を強化し、市場におけるコンプライアンスを改善した上で、我々のDTC技術を活用して国内外のリソースや経験を統合し、人材を育成するための支援方法を探っていく。我々は、海外に持つ強大なエコシステムで、顧客企業のDTC事業の収益化をサポートしていく。
(翻訳・愛玉)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録