好調な事業はスピンオフするべきか 中国IT大手企業の葛藤

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スピンオフ、つまり重要な事業を分割し独立して上場させるのは大企業がよくとる手法だ。

大手ポータルサイト「捜狐(Sohu)」の取締役会主席をつとめる張朝陽氏は感慨深かったはずだ。11月初旬、捜狐とその子会社である検索エンジン大手「捜狗(Sogou)」はともに第3四半期(7~9月)の決算を発表。捜狐の売上高は4億8200万ドル(約530億円)、分割して独立した捜狗の売上高は3億1500万ドル(約350億円)となった。捜狗に帰属する純利益は前年同期比53%増の3660万ドル(約40億円)となったが、親会社の捜狐は1700万ドル(約19億円)の赤字となった。

2017年11月に上場した捜狗

同様の状況はネットサービス大手「新浪(Sina)」と中国版ツイッターと呼ばれる「微博(Weibo、ウェイボー)」の間でも起きていた。2014年「新浪微博」は正式に「微博」と改名し、ほどなくして米国で上場。上場後、微博は新浪の売り上げの中で大きな割合を占め、毎年10%近いスピードで拡大している。決算報告によると、微博の売り上げは、2015会計年度には新浪全体の54%を占め、2018会計年度には82%にも達している。ネットでは「微博はいつ(親会社である)新浪を買収するのか」というジョークも囁かれるほどだ。

バイドゥ創業者の李彦宏(ロビン・リー)CEOはほっとしたことだろう。同社が発表した2019年第3四半期の決算では売り上げ281億元(約4400億円)、純利益44億元(約690億円)で、売り上げは予測を上回った。傘下の動画配信サイト大手「愛奇芸(iQiyi)」の安定した成長がバイドゥの売り上げのうち26%にあたる74億元(約1160億円)をもたらして貢献したかたちだ。フードデリバリーサービス「百度外売」や金融サービス「百度金融」などの事業分割は成功したとはいえなかったが、今後は愛奇芸がバイドゥの成長をけん引することが期待される。

スピンオフが最も成功した例はアリババ傘下のECモール「タオバオ(淘宝)」とその決済サービスとして生まれた「アリペイ(支付宝)」だろう。アリババの張勇CEOは以前こう明かしている。「第三者決済サービスとしてのアリペイ全体のシェアはタオバオとすでに対等だ……分割することで以前は見えなかった市場のチャンスがもたらされる」

現在、IT大手テンセント(騰訊)はクリエイティブ事業の重要戦略としてスピンオフするかどうかという問題に直面している。テンセント傘下の電子書籍サービス大手「閲文集団(China Literature)」は「騰訊文学」が「盛大文学」を買収後、複数の電子書籍サイトを再編してできたものだ。

テンセントの子会社で中国最大手の音楽配信サービス「テンセント・ミュージック・エンターテインメント・グループ(TME、騰訊音楽娯楽集団)」はテンセント傘下の「QQ音楽(QQ Music)」が「中国音楽集団(CMC)」と合併したもので、後者の傘下には「酷狗音楽(Kugou)」、「酷我音楽(Kuwo)」という音楽プラットフォームがある。

買収と組織再編を通して、閲文集団とTMEの両社は急速に業界トップに躍り出た。上場後は資本市場からも認められている。現在、閲文集団の評価額は314億香港ドル(約4400億円)、TMEの評価額は222億ドル(約2兆4200億円)だ。

テンセントが次にスピンオフするとしたら、おそらくeスポーツ事業だろう。今年1月、テンセントは人気ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」を運営する「拳頭遊戯(Riot Games)」と共に「騰競体育(TJ Sports)」を上海に設立。同社は中国で初めてeスポーツ事業を独立して運営する会社となり、事業再編の一歩を踏み出している。

しかしテンセントがeスポーツ事業を会社として上場させるにはまだ時間がかかりそうだ。データによると、中国のeスポーツユーザーは3億5000万人を超え、業界規模は138億元(約2200億円)に達する見込み。しかし、ユーザー数は多いものの業界の規模は小さく、今スピンオフして上場してもうまくいくとは限らないからだ。

作者:Tech星球 張雅婷
原文記事: URL   https://mp.weixin.qq.com/s/yPd3UGYG8urZPlM0D7dnTQ

(翻訳・山口幸子)

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