中国・航宇伺服、高性能サーボ技術で台頭 宇宙から低空経済へ拡大

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高性能サーボシステムを開発する中国スタートアップ「航宇伺服(Aerospace Servo)」はこのほど、シリーズAの追加ラウンドで数千万元(数億円)を調達した。陸石投資(Landstone Capital)が出資を主導し、鈞源資本(Junyuan Capital)や既存株主の希揚資本(Capital X)も加わった。資金はコアチームの拡充や生産・試験設備のアップグレードなどに用い、技術力向上と高性能サーボ市場における競争力拡大を目指す。

2021年に設立された航宇伺服は、航空宇宙や海洋分野を中心にサーボシステムの研究開発と産業化を進めてきた。油圧式、電気機械式、電気静油圧式の三大技術体系を確立し、設計・開発から製造まで一貫して手がける体制を構築している。製品はロケットや航空機、無人機、特殊船舶など、高い性能と信頼性が求められる領域で広く活用されている。

独自技術で「高負荷・高信頼性」を両立

サーボシステムはハイエンド装置の「運動神経」とも呼ばれる部品で、姿勢や推力、方向を精密に制御する役割を担う。従来の油圧式は高負荷環境に強い一方で、液漏れやメンテナンス負担が課題だった。電気機械式サーボは構造がシンプルで応答性に優れるものの、高負荷環境では信頼性を確保するための冗長設計が難しい。

航宇伺服は、電気機械式と油圧式の長所を兼ね備えた電気静油圧式サーボ技術の開発に成功した。応答性や信頼性が高く、高負荷にも耐えられるうえ、従来の油圧式サーボが抱えていたメンテナンス上の負担を解消できる。実用化に成功している企業は世界でも数社に限られる最先端技術とされる。

創業者の鄭華義氏は「当社の製品は冗長設計なしでも極めて高い信頼性を誇る。ロケットは数十回の再使用が可能で、航空機なら数千時間の飛行に耐える」と説明する。高い安全性が求められる用途には、純電動式と電気静油圧式の2種類の冗長システムを提供することもできる。

宇宙分野を主力に、航空・海洋へも拡大

航宇伺服は2024年に数千万元(数億円)に上る受注を獲得し、黒字化を果たした。これまでに納入したサーボシステムおよび制御装置は数百台に達する。

主力は宇宙分野で、商用ロケット、極超音速輸送機、人工衛星、標的機など向けに製品を供給。出力40kWのハイパワーサーボシステムは大推力の固体ロケットブースターに採用され、中国国内で最大出力を記録した。また、低軌道衛星ネットワークの構築が進むなか、同社はロケット打ち上げの増加を追い風に、さらなるシェア拡大を狙う。

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航空分野は次なる成長軸に位置づけられている。大型固定翼機やティルトローター機、eVTOL向けに方向舵制御、スロットル調整、着陸装置の格納・展開に関わるシステムを手がけており、これまでに無人機メーカー十数社に製品を供給するなど、国産航空機のスマート化を後押ししている。

さらに2025には、海洋分野にも参入。科学調査船や特殊作業船向けのサーボ制御・電動推進システムを開発し、複数の試作機を納入済みだ。戦略提携も相次ぎ、事業領域を広げている。

鄭CEOは「技術と品質は研究機関レベルを目指し、価格やサービスでは民間企業らしい柔軟性を発揮する」と語る。

低空経済や宇宙ビジネスの急成長に伴い、信頼性の高いサーボシステムの需要もますます高まっている。航宇伺服は、全技術体系を網羅する製品群と独自の開発能力、迅速な顧客対応力を武器に、ハイエンド国産サーボのリーディングカンパニーを目指す。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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