廃プラを酵素で再生、中国スタートアップ、化学分解とコスト同水準

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再生プラスチック技術を手がけるスタートアップ「塑新科技(Suxin Technology)」はこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億円)を調達した。出資には工業用繊維大手の浙江海利得新材料(Zhejiang Hailide New Material)などが参加。資金は大規模生産ラインの建設に充て、酵素分解法による使用済みプラスチックのリサイクルを推し進める方針だという。

年内にも年産1万トン規模の設備稼働

塑新科技は2024年6月設立。生物学的手法を用いた高分子材料のリサイクルに注力し、酵素分解法を用いた再生ポリエチレンテレフタレート(PET)を中心に事業を展開している。すでに年産1000トン規模のパイロットラインが稼働してしており、年内にも年産1万トン規模の量産ラインの稼働を予定している。

「塑新科技」の再生PET

プラスチック汚染は、いまや世界規模の環境問題となっている。2024年の世界のプラスチック消費量は5億トンを超え、そのうち約4億トンが廃棄物として処理されたと推計される。従来のリサイクル手法は、再生素材の品質低下や膨大なエネルギー消費、さらには二次的な環境汚染といった課題を抱えていた。これに対し、酵素分解によるリサイクル技術は、低エネルギーで高純度の再生PETが得られることから、次世代のプラスチック再生技術として期待が高まっている。

しかし、酵素リサイクルにも限界はある。酵素の触媒効率や安定性、耐性に課題が残り、長らく産業レベルでの実用化を阻んできた。

AIで酵素を発掘・改変

塑新科技を創業した研究チームは、2016年から極限環境微生物の発掘を開始しており、高性能酵素の分離に成功。現在、PETのほか、PU(ポリウレタン)、ナイロン、PLA(ポリ乳酸)などの高分子材料を分解できる酵素ライブラリーを構築している。

また、専用のAIアルゴリズムを開発し、酵素の発掘・性能向上・改変の加速を実現。特定の機能遺伝子の配列を分析し、短時間で大量のサンプルをスクリーニングした上で動的シミュレーションを実施することで、改変が必要なアミノ酸部位を特定できるため、研究開発の効率が劇的に向上した。

さらに、PET分解酵素の耐酸性を向上させ、pH低下による失活を防ぐことに成功。世界で初めて熱硬化性PUを直接分解できる酵素も開発するなど、酵素リサイクル技術の産業応用を大きく前進させている。

3年でバージン材と価格同水準に

塑新科技の酵素分解法を用いたPETの再生コストは、すでに化学的分解法と同水準に達している。今後は酵素の性能向上や量産拡大に取り組むことで、再生PETの価格は3年以内にバージンPETと同等、2030年までにそれを下回る価格を実現できる見通しだ。

「塑新科技」の再生PET繊維とバージンPET繊維の比較

同社はすでに、複数の世界的アパレルブランドや工業用繊維メーカーに100キログラム単位のサンプルを提供しており、年内に供給契約を締結する予定。2025年の出荷量は100トン以上、売上高は約1000万元(約2億円)を見込み、量産ライン稼働後の26年には売上高は1億元(約20億円)を突破すると予想されている。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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