TikTokのバイトダンス、ロボット帝国への野望―エンタメの巨人が仕掛ける密かな計画

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動画共有アプリTikTokなどで知られる中国のテック大手バイトダンス(字節跳動)が、エンターテインメントの枠を超え、ロボティクス分野で隠れた巨人として密かに存在感を高めてきている。

バイトダンスの大規模言語モデル(LLM)などを手がけるAIチーム「Seed」は7月、、次世代ロボット向けVLA(Vision-Language-Action)モデル「GR-3」を発表した。 公式デモでは、GR-3を搭載したロボット「ByteMini」が、衣類をハンガーに掛けたり、生活用品などを拾い取り指定の場所に置くといった難度の高いタスクを完璧にこなした。

さらに、GR-3は「大きめの皿」「左の椅子」といった複雑かつ抽象的な言語指令も理解できる。

混合学習で高い適応性能 NVIDIAモデル超えとの評価も

GR-3は混合学習によるトレーニングの手法を採用している。まず大量の画像とテキストデータで事前学習、その後、仮想現実(VR)の環境で人と機械の相互作用で微調整を行い、最後に現実世界でのロボットの動作を学習し、模倣させる。この一連のアプローチによって、未知環境への適応力が大幅に向上した。。

米メタ(Meta)の元AI科学者Chris Paxtonは「GR-3の性能はNVIDIAの20億パラメータを持つGR00Tモデルをすでに上回っている」と評価する。

GR-3はバイトダンスが「ロボットの脳」につながる分野で基礎的な技術を確立したが、それ自体はロボットの「神経」に近い部分であり「大脳」そのものではない。

欠けていたピースを補う形で、Seedは9月にロボットシステムのタスク計画と推論モデル「Robix」を発表した。技術責任者の董恒氏によると「Robixは推論・計画・自然な対話を一体化した『統合ロボット大脳』であり、その性能はGPT-4oやGemini 2.5 Proを上回る」と説明した。

技術構造では、Robixがハイレベルな推論とタスク計画を担当し、GR-3などのVLAモデルが具体的な実行を担う。この分業構造は、NVIDIAの「GR00T N1」の二重システム構成に似ており「一方が思考し、もう一方が行動する」という関係になっている。

公式発表によると、GR-3を搭載したRobixは、ByteMiniロボットを通じて「食卓の片付け」「レジ袋詰め」「飲料の選別」などの作業を実行し、いずれも完遂した。 飲料の選別ではGemini 2.5 Proにわずか及ばなかったものの、それ以外のすべての項目で最高スコアを記録した。

2020年から続く“ロボット研究への執念”

バイトダンスのロボット探究は2020年に始まる。当時、創業者の張一鳴CEOはすでにロボットに強い関心を示していた。2023年にSeedチームが設立され、「汎用知能の新しいアプローチ」を模索し、「知能の上限」を追求することを使命とした。チームの研究分野にはLLM、メディア生成 AI(GenMedia)、AI for Science、ロボティクスなど多岐にわたる。

中国のビジネスメディア「晚点(LatePost)」によると、2年の時間を経て、バイトダンスはすでに1000台以上のロボットを密かに量産している。これらの車輪式の物流ロボットは、主に倉庫や生産ラインで荷物や部品を運搬するために使われており、自律的に学習し、ルートを計画し、目的地に移動することができる。抖音(Douyin)の電子商取引(EC)の倉庫のほか、外部の顧客である物流大手の順豊(SFエクスプレス)や自動車大手の比亜迪(BYD)などにも導入されている。

「エンボディドAI」で主導を狙う

GR-3、Robix、ByteMiniという技術開発の流れを見ると、バイトダンスはロボットなどを含む「エンボディドAI(身体性を持つ人工知能)」分野で主導的地位の確立を狙っていることがわかる。

最近、同社の採用サイトには複数の求人募集が出ており、その中には「次世代汎用ロボット」と明記されているものもある。これらの職種はいずれもSeedチーム所属である。 香港英字紙のサウスチャイナモーニングポストによると、Seedチームの人員は年内に300人を超える見込みだという。

産業投資の面でも、バイトダンスは積極的に仕掛けている。人型ロボットのリーディング企業「宇樹科技(Unitree Robotics)」はシリーズCで資金調達を完了し、評価額は100億元(約2100億円)を超えた。その出資者の中には、バイトダンスと深い関係を持つ「秋基金(Jinqiu Fund)」の名がある。

秋基金は、バイトダンスの元財務投資責任者の楊潔氏が2022年に設立したファンドで、コアメンバーの多くがバイトダンスの投資チームの出身である。ファンド名の「秋」は、張一鳴氏が起業した際の原点である北京海淀区にあるマンション「秋家園」に由来している。

文:Wechat公式アカウント「字母榜(ID:wujicaijing)

編集・翻訳:36Kr Japan編集部

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