シャンシャンを輸送した中国企業、日本支社社長の不可解な交代から全てが始まった【日本人フリーランス vs 中国企業②】

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シャンシャンを輸送した中国企業、日本支社社長の不可解な交代から全てが始まった【日本人フリーランス vs 中国企業②】

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中国最大の物流会社、シャンシャンの輸送も担当した順豊エクスプレス(SFエクスプレス)と数年にわたって取引してきたフリーランスの筆者は、フリーランス保護法施行を機に契約書を作成することになった。ところが時を前後して同社で経営者が交代し、契約書どころか提出した請求書の承認も渋られるようになった。不審に思った筆者は、同社の人事責任者に面談を申し入れた。【全5回の第2回】

1回目はこちら:契約書を求めたら取引終了に、中国巨大企業との7カ月にわたる攻防記」

人事責任者と契約書作成も……

数年にわたって業務を受託していた順豊エクスプレス(SFエクスプレス)と、フリーランス保護法施行を機に契約書を交わすことになった。しかし同じタイミングで同社の経営陣が一新され、契約書作成が進まなくなった。筆者は2024年11月下旬、懇意にしていた順豊エクスプレスの人事責任者であるの林川氏(仮名)と2日続けて面談した。

そこで、前社長が本人も予想しない形で突然退任したことと、1カ月後に元衆議院議員の日本人が後任に就いたことなどが説明された。

筆者は前経営陣に業務を委託されていたので、当然ながら今後どうなるか分からない。ではあるが、支援していたマーケティングが責任者も交代し、そこには筆者が採用に関わった日本人社員の田中氏(仮名)が残っているので、彼のことも心配だった。

筆者と林川氏は、面談で以下の2点を取り決めた。

  1. 2024年12月から半年は業務委託を継続する前提で、契約書を作成する。
  2. 新たな責任者の方針に沿うように業務内容を見直す。

その後、田中氏の業務をサポートしながら、契約書のたたき台を作成した。その間にも横やりが入ることがあり進捗は遅れ気味だったものの、12月18日に都内にある順豊エクスプレスのオフィスで田中氏、人事責任者の林川氏と契約書の最終確認を行うに至った。

林川氏が「何が起きるかわからないので、契約終了は6カ月前に通告するようにしましょう」と提案し、「ありがとうございます」と応じた。

また、書面を発行しないまま何年も業務を委託していたのは問題なので、契約締結日を過去の日付とし、自動更新する体裁にしたいとも打診された。それも了承した。

この少し前、筆者は公正取引委員会と中小企業庁から取引に関する定期調査の依頼を受け取っていた。

「下請け事業者」と思われる事業者をランダムに抽出した調査らしく、調査対象の欄には「順豊エクスプレス」と記載されていた。質問項目には「発注書や条件取引書の有無」と問うものもあった。

筆者は田中氏、林川氏との面談の場で公取委の調査の件を話し、「今の状況は明らかに問題だと思うので、新社長からこれ以上横やりが入れば、正直に申告するかもしれない」と伝えた。ただ、この時点では林川氏、田中氏とは和やかに話せる関係であり、2人とも「当社のごたごたで申し訳ない」という反応だった。

「まだサインしていないか」社長の照会

契約書にサインするばかりのはずだったが……。

あとは契約書にサインするだけとなりほっとしたのもつかの間、2日後の12月20日朝、田中氏から「今からいいですか」とオンライン会議の依頼があった。

「社長が林川さんに契約書の締結が済んだか問い合わせをしてきて、午前中いっぱいの回答を求められているけどどうしたらいいか」という相談だった。

なんちゅう相談、と思うことなかれ。筆者はこういったことまで一つ一つ相談や報告を受けるくらい、同社の業務に関与していた。そして田中氏の口調から、「社長が契約書にサインするまでの隙を突いて、何かを考えている」ということも伝わってきた。

とは言え、下手に嘘をつくと後々厄介かもしれない。「契約書の文面を作成し、サイン待ちと答えるしかないのでは」と告げ、「11月初めに御社から書面をきちんとしましょうと申し出があったのに、どうなっているのですか。フリーランス法も施行されたし、ちゃんとしようと言ったじゃないですか」と続けると、田中氏は「新社長は元国会議員で、法律にも詳しいみたいなので、自分は何も言えない」と答えた。

突然送られてきた業務解除通知書

週末を挟んで12月24日、田中氏からLINE通話の着信があった。田中氏は普段はオフィスの電話からかけてくるが、社内の人に聞かれたくないときは個人のスマートフォンのLINE通話を使うことが多い。

電話を取ると田中氏は、「今から会社に来れませんか」と切り出した。

「今の今は無理ですけど、なぜですか」と尋ねると、「マネージャー会議で業務終了が決まった」「他のベンダーもまとめて切られたので理解してほしい」という説明をされ、電話が切られた。その1時間後にメールで業務終了通知が届いた。

契約書にサインするばかりのはずだったが……。
数日前まで契約書の作成をしていたのが一転、業務打ち切りの書面が送られてきた。

 

通知書には「フリーランス法に違反していない」旨がご丁寧に書かれていた。

翌日、レターパックでもプリントアウトした通知書が届いた。

「問い合わせは下記まで連絡のほどお願いします」と、田中氏の部署の電話番号とメールアドレスが記されていたが、これ以降、連絡しても返信が来ることはなかった。田中氏のLINEにメッセージを送っても既読スルーとなり、チャット履歴は彼によって全削除された(不穏だったので、念のために一部を保存していた。本当によかった)。

さまざまな事情で業務が終わることはある。それがフリーランスの宿命だが、普通は「これまでありがとうございました」「またご縁があれば」くらいの社交辞令もある。

説明がなく通知書が送られてきて、その後連絡がつかなくなるというのは初めての経験だった。日本でもそういうことが起きることにびっくりした。

落ち着いて通知書の文面を読むと、筆者の業務契約は、「前任コンサルタントとの契約書の内容を適用する」と書かれていた。そんなことあるだろうか。そもそも前任コンサルタントとの契約の中身なんて一切知らないわけだし。

ただ、筆者もざっくりとしか知識がなかった。フリーランス法が施行され、保護が手厚くなるのは知っていたが、筆者のケースが保護されるかは実際のところ不明だった。知識がなくても7~8年間、そこまで理不尽な目に遭うことがなかったのは、今思えば幸運だったと言うよりほかない。

それでも「何かおかしい」という違和感はぬぐえない。フリーランス法の違反を申告するフォームを見つけ、自分に起きたことを記載して送信した。

翌日、都の労働局担当者から電話がかかってきた。自分が申告してこういうのも何だが、その迅速さに驚いた。

第3回に続く⋯

(文・香香、文中は全て仮名)

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