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中国最大の物流会社、シャンシャンの輸送も担当した順豊エクスプレス(SFエクスプレス)と数年にわたって取引してきた筆者は、フリーランス保護法施行を機に契約書作成を求めたら逆に業務を打ち切られてしまった。これまでの流れや送付された業務解除通知書の文面に不審さを感じた筆者は、厚生労働省のフリーランス保護法違反申告窓口に相談した。そうすると、すぐに都の労働局から電話がかかってきた。【全5回の第3回】
過去記事はこちらから。
第1回:「契約書を求めたら取引終了に、中国巨大企業との7カ月にわたる攻防記」
第2回:「日本支社社長の不可解な交代から全てが始まった」
労働局から電光石火の電話
反応の速さに驚いていると、都労働局の担当者のK氏は「年末休みに入る前にお話を聞いた方がいいと思った」と切り出した。言われてみれば年の暮れだ。
K氏は筆者の話を30分ほど聞いた後、「こちらで一度整理して、年明けにまた連絡します」と前置きし、所見と相談窓口を伝えてくれた。
- フリーランス法は2025年11月以降に結んだ契約が対象。筆者は以前から業務を行っており、契約書を作成していても「締結した」とは認定されにくい。
- メルマガやレポートの発注にあたり発注書や取引条件書を出していないのは、下請法(現・取適法)3条違反の可能性がある。労働局の管轄でないのではっきりとは言えないが、下請法違反の申告をした方がいい。
- 業務終了については、1カ月前に通知し、かつ理由を明示しているので法的な問題はない。
- モラル的に問題があっても、合法の範囲内というケースはよくある。そういった問題については、フリーランス・トラブル110番の専門家による相談や和解あっせん制度を利用できる。
K氏は年明けにも電話をくれ、筆者の疑問に一つ一つ答えてくれた。K氏の説明は自身で論点を整理する上で、ガイドラインとして大変役に立った。同時に、似たような話がいくらでも転がっているのだろうと感じた。
フリーランス110番にも相談

労働局のK氏に勧められたフリーランス・トラブル110番にも電話を入れた。この相談窓口は厚労省から委託を受けた第二東京弁護士会が運営している。
受け付けの番号に電話するとと、弁護士による電話相談は最短で翌年1月中旬になるとのことで、業務通知解除書を添付し、メールで相談した。
こちらも思っていたより早く、12月26日に回答が届いた。
いわく
- 前任者との契約がそのまま引き継がれることはない。
- 2024年11月以前から継続している契約と考えられ、フリーランス法でなく民法の適用となる。
- 11月時点で契約が更新され、条件が確定していたなどの事情があれば、「合意していた」と主張できるが、相手方は「合意していなかった」という前提で主張してくるだろう。

という見解だった。
公取委への申告で未払金発覚
労働局とフリーランス110番への相談と並行し、下請法(現・取適法)違反でも申告した。
労働局などがすぐに対応してくれて状況が整理できたため、年末年始の休みの時期に提出書類の準備ができたが、1年の最後のタスクがこれかと悲しい気持ちになった。
順豊エクスプレスと何かトラブルになっていたわけでもなく、直前まで普通にやり取りし、新年会の日程も決まっていたのに、業務解除通知をメールで送って来た後は、誰とも連絡がつかなくなった。
中国企業ではあるが、この一件で筆者がやり取りしていたのは全て日本人社員だった。信頼がベースと言うが、信頼とはかくももろい。
公取委から電話がかかってきたのは申告から1カ月後、1月下旬のことだ。労働局のときと同じように電話で30分ほど質問され、その後、証拠物の提出を求められた。3週間ほど期限があったが提出物の分量はかなり多く、仕事の合間に一人でやるのは大変だった。
そして公取委に言われて取引期間中の業務と報酬の振り込み履歴を突き合わせていたとき、2023年にコンテンツの作成や翻訳を受けたときの報酬2件、数十万円が支払われていないことに気づいた。確定申告の作業でも漏れていた。
筆者は単発・少額の業務も多く、取引先は年間20~30社になる。継続的に業務を受けている企業については、入金されていると思い込み、確認を疎かにしていた。この一件がなければ今も気づかないままだっただろう。
既に2月に入っていたが、2024年12月分と1月分の請求書も送付できていなかった。公取委の担当者に促され、2カ月分の請求書を順豊エクスプレスのマーケティング担当者である田中氏(仮名)に送付し、支払い漏れがあることも伝えたが、それも返信がなかった。
和解・あっせん制度に申し立て
2月下旬、公取委に追加の資料や証拠物を全て郵送した。4年近く業務を請け負い、やり取りも相当あったので、求められたものは全てそろえられた。
順豊エクスプレスに送付した2024年12月、1月分の報酬は2025年3月中旬になっても入金がなかった。未払いも発覚した。そこで、労働局の担当者にも案内されたフリーランス110番の「和解あっせん」を利用することにした。

和解あっせんは弁護士の中から選ばれた和解あっせん人が、話し合いによる解決を支援する制度で、無料、非公開で進められるのが特徴だ(裁判は原則公開となる)。
制度利用にあたっては、申立書、法務局で取得した企業の履歴事項全部証明書(オンラインで取得可能)、同意書を仲裁センターに提出する。
筆者は順豊エクスプレスに以下の3点を求め、3月中旬に申立書を仲裁センターに郵送した。
- 2024年12月分、2025年1月分の支払い。
- 2023年の未払い2件に支払い遅延利息を加えた支払い。
- 今後の契約に合意した後、業務を突然終了したことへの補償金。
仲裁センターは申し立てを受理すると、まず話し合いの期日を決め、順豊エクスプレスに協議への参加を要請する。強制力はないが、「7割程度について相手方が出席して手続が進み、そのうち6割程度が和解等で解決しています」(公式サイトより)という。

5月中旬、仲裁センターから「話し合いに応じて頂けることになりました」と連絡があった。直接の連絡はとことん無視されていたので、こういった制度を使うことの意義をさっそく感じた。
仲裁センターからは、順豊エクスプレスの回答も送られてきた。
- 2024年12月分と2025年1月分の請求書は3月31日に支払ったと主張した。実際支払われていた。突っ込みどころはあるが、「支払いが遅い」ことを非難したところでむなしいだけだ。
- 未払いについては、一件は支払い済み、一件は請求書を受け取っていないが、「当社で請求書を紛失したかもしれないので支払う」という回答だった。
- 補償金の支払いは拒否された。
協議は5月に予定していたが、順豊エクスプレスの意向で直前に延期となり、6月下旬に先延ばしされた。仲裁センターへの申し立てからは3カ月が経つ。時間と根気が求められる。
2025年6月、和解あっせん制度を使った順豊エクスプレスと協議が行われた。突然業務打ち切りを通知され、連絡も絶たれてから半年を経てようやく話し合いの機会が得られた。社長とはこれが初めての接触だった。
第4回に続く。
(文・香香、文中はすべて仮名)
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