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中国最大の物流会社、シャンシャンの輸送も担当した順豊エクスプレス(SFエクスプレス)と数年にわたって取引してきた筆者は、フリーランス保護法施行を機に契約書作成を求めたら逆に業務を打ち切られてしまった。下請法(現取適法)違反で公正取引委員会に申告する中で、複数の未払金も発覚し、その支払いや補償金を求めフリーランス・トラブル110番の和解あっせんという制度を利用することにした。【全5回の第4回】
過去記事はこちら。
第1回:「契約書を求めたら取引終了に、中国巨大企業との7カ月にわたる攻防記」
第2回:「社社長の不可解な交代から全てが始まった」
第3回:「公取委に下請法違反を申告、未払い発覚の連絡も無視され⋯」
業務打ち切りから半年、ようやく相対
2025年6月、順豊エクスプレスと協議の場が設けられた。協議は対面、オンラインのどちらでも実施でき、この日はオンラインとなった。

順豊エクスプレスからは社長と、機器の操作を行う補助者として人事の責任者・林川氏(仮名)が出席した。あっせん人として第二東京弁護士会の弁護士が入った。
議題は「未払いの有無」と「契約の準備をしながらぎりぎりでと突然業務を打ち切ったことに対する補償金」の2点。あっせん人はお互いの言い分を聞いて、「訴訟になると~~」と説明しながら落としどころを提示し、解決に導く役割だった。
順豊エクスプレスの社長は、未払い2件のうち1件は「支払った記録がある」、もう1件は「請求書が見つからない」と主張した。
しかし筆者の手元には2件分の納品の受領メール、請求書、請求書を送付した後の受領メール、さらに口座の記録もある。
社長は未払いについて認めなかったが、「支払った記録」も提出されなかったため、支払うべきという結論になった。この件のやり取りは10分もかからず終わった。
次に補償金である。少し前の打ち合わせで、今後半年は業務を継続することで合意し、契約書も作成したので、その期間分の報酬相当額を補償金と支払うよう求めていた。
社長が初めて語った業務解除の理由
筆者は2024年12月24日、業務解除の通知書を受け取った。理由として「組織体制の刷新に伴う、業務体制変更の為」と書かれていた。
ところがこの日の協議の場で、社長は
「マーケティング部門の担当者に半年間の業務状況を聞き取ったところ
- 成果物を出していない
- 月に1度ほどしか打ち合わせをしておらず、期待される業務をしていない
- 旧体制の責任者の友人なので義理で仕事を発注していた
ことが判明したため、業務を委託する理由がないと判断した」
と主張した。
全く想定していないことを列挙され、筆者は面食らった。そして一呼吸置いて反論した。
➀「成果物を出していない」という主張について
順豊エクスプレスに依頼されていたのは打ち合わせへの同席や、顧客アンケート作成の助言、マスコミ対応の助言などであり、コンサル業務だった。業務解除通知書にも「コンサル業務の解除」とあり、成果物の提出を求められていなかった。理由として不適切である。
②「月に1度ほどしか打ち合わせをしておらず」という主張について
オフィスのほか、在宅勤務をしていた担当者の自宅近く、オンライン、そして電話を入れると、週に3、4度打ち合わせをしており、記録も残っている。たとえば2024年9月は対面で2回、通話記録が10回残っていた。10月、11月はさらに頻度が増えていた。
③「旧体制の責任者の友人なので義理で仕事を発注していた」という主張について
業務に入るまで順豊エクスプレスの社内に知人はいなかった。
そもそも2025年11月中旬に就任した社長が、筆者が支援していたマーケティング部門の担当者と初めて面会したのが12月6日だった。その時に、既に社長が筆者を切りたいと告げたというのは、担当者から聞いていた。
ただ、12月18日に契約書の最終稿を作成した際も、順豊エクスプレス側から➀~③の指摘は一切出なかった。つまり社長が提示した理由は後付けとしか思えない。
とは言えここで言い争ってもらちが明かないので、あっせん人が筆者、順豊エクスプレスの社長とそれぞれ話し合うことになった。
あっせん人は筆者に「解決金として〇十万円の支払いで着地できないか。それでよければ、会社側に提案する」と言った。要求額の5分の1だった。
突然の業務解除からここまで半年。過去の業務の未払いにも全く対応してもらえない。
そういったことを解決するために相当な労力を使ったし、今後、別の場で主張しても決着まで長い時間がかかるのも明らかだった。順豊エクスプレスが一定の解決金を払うのであればここで終わりにした方が筆者も解放される。そう思い、あっせん人の提案を一旦受け入れた。
順豊エクスプレスも合意し、合意文書を作る手続きに移った。これで終わりと思いきや、そうならなかった。
守秘義務巡り協議決裂
合意文書を作成する段階で、あっせん人から「守秘義務」という言葉が出た。未払金と解決金を支払う代わりに、和解内容や交渉過程を外部に漏らさないことを約束する守秘義務条項を盛り込むという提案である。
おりしもタレントの中居正広氏のスキャンダルを巡り、「守秘義務」への関心が高まっていた時期だ。

あっせん人は「こういうときはだいたい守秘義務はつけるもの」と言うが、事実でないことを挙げられ批判される、連絡を無視される……これだけ不誠実な扱いを受けたことをちゃらにし、かつ口外を禁止されることの対価と考えるなら、解決金の額は低すぎではないだろうか。
守秘義務をつけるなら要求額を満額支払ってほしいと伝えると、順豊エクスプレスの社長から、解決金を倍額に引き上げると提示された。
駆け引きするつもりはないが、考える時間がほしい。
「持ち帰って検討できないか」と尋ねると、あっせん人は「ここで合意文書をつくるか、協議不調で終了するかの二択」という見解だった。
中居氏の一件が世の知るところとなったように、守秘義務をつけて示談していても大した拘束力がないことは分かっているが、友人間の愚痴のネタにもできなくなるのは嫌かもしれない。ここで結論を急いで後で後悔したくない。
「今ここで決めることはできない」と伝えたところ、和解あっせん協議はその時点で打ち切りとなった。
公取委が動いた
未払い金については双方で連絡を取り合って支払うことになった。順豊エクスプレスから「今後のことは、人事の林川氏かマーケ担当者の田中氏に連絡してほしい」と言われたので、翌日メールするとやっぱり返事は来なかった。
協議の場で、林川氏に「友達と思っていたのに」と言われたが、友達なら泣き寝入りしろということなのだろうか。
「やっぱり個人で弁護士に頼むしかないのかなあ」
公取委に申告する過程で証拠がそろっていたので、弁護士に依頼しようかと考えていた7月下旬、順豊エクスプレスからメールが届いた。
「現在、公取の調査を受けており、早急に未払い分を支払うように指導されています。⋯支払うため請求書を送付いただけますでしょうか」
という内容だった。
第5回に続く。
(文・香香、文中は全て仮名)
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