中国EV充電スタンド事業が苦境 自動車メーカーが相次いで撤退か相互利用へ

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電気自動車のブームが起きる前から、自動車メーカーは充電スタンドの設置を進めていた。中国では2015年に「上海汽車集団(SAIC MOTOR)」と「比亜迪(BYD」が充電スタンド事業の開始を発表し、その後は「小鵬汽車(Xpeng Motors)」、「蔚来汽車(NIO)」も自社が製造した車両専用の充電スタンドの設置を始めた。

海外の大手メーカーも後れを取ってはいない。BMWは2015年に中国で充電サービスプラットフォームをローンチ。2016年以降は大手同士の提携が目立ち、フォルクスワーゲンはアウディ、BMW、ダイムラー、フォード、ポルシェと提携しており、2018年12月からは中国企業との提携も始めた。

現在、充電スタンド業界は安定期に入りつつあり、自動車メーカーや充電スタンド企業の成長はともに減速している。大手充電スタンド企業が誕生し、そうした企業との提携が自動車メーカーにとって新たな選択肢となっている。

自動車メーカーは自社スタンドの建設に消極的

自動車メーカーのうち、現在も自社専用の充電スタンドの開設を続けているのはテスラと蔚来だけだ。現在では電気自動車メーカーへの政府からの補助金が減り、代わりにインフラの方に使われるようになったが、充電スタンド産業には電気自動車ほどの投資が集まっていない。なぜなら、補助金を受けるための基準は充電スタンドの運営能力となっており、交付も遅いからだ。

そのため、自動車メーカーは自社で共用充電スタンドを開設することやめ、充電スタンド企業と提携するか、充電スタンドの情報を集め提供するサービス提供者としての役割を演じるようになった。

自社専用の充電スタンドにこだわってきたテスラでさえ変わり始めている。同社は2018年末までに1.8万のスーパーチャージャーを設置するとしていたが、今もその目標には届いていない。同社が最重要市場と位置づけている中国では、数カ月以内にスーパーチャージャーを39%増やすとしているが、この目標が達成できるか否かも不透明だ。米国本土において、テスラはすでに外部との協力を模索しており、米国最大の充電ネットワーク運営会社「EVgo」の充電ステーションではテスラ車が使用できるアダプタの設置を開始した。

充電分野の専門家によると、充電スタンド産業の再編が進むなか、自動車メーカーが成熟した充電スタンド企業と提携するのはよい選択であり、今後はこうした提携がより進み、分業化がより明らかになるという。

充電スタンド産業の苦境

自動車メーカーだけではない。大手充電スタンド企業のスタンド開設のスピードも落ちている。現在中国で充電スタンド所有数上位10位の企業を見ると、「特来電(TGOOD)」は2017年だけでスタンド数が4.7万増えたが、2018年には2.3万増に留まった。「浙江万馬(WANMA GROUP)」と「中国普天(Potevio)」も2018年に開設したスタンド数は2017年より減少した。「中国南方電網(China Southern Power Grid)」に至ってはここ3年間スタンド数が増えていない。

政策と市場に牽引され、充電スタンドの数自体は増えているが、伸びているのは自宅用のスタンドだ。2019年7月時点でみると、充電スタンドの58%が自宅用である。これは共用型充電の市場が縮小していることを意味する。現在中小の充電スタンド企業はほとんどが赤字で、2018、19年には上場廃止や倒産が相次いだ。この業界のリソースは大手に集中しているのである。

目下、充電サービスでは相互利用可能という形態がトレンドになりつつある。特来電や「星星充電(Star Charger)」は中小企業のスタンドをそのまま自社のネットワークに接続できるプラットフォームを開設している。「国家電網(STATE GRID)」、特来電、星星充電、南方電網は昨年「聯行科技(UNIEV)」というジョイントベンチャーを立ち上げ、共用充電スタンドを急速に増やしている。インターネット企業からも参入が相次いだ。

そのため、充電スタンド企業はビジネスモデルの転換を迫られている。すでに多くの企業が単なる設備メーカーから運営会社に転換しようとしており、赤字覚悟で利用料金を低く抑える企業も出てきた。しかし、このような価格競争ではやはり収益化は難しい。

充電スタンドの販売も戦略の1つだ。自動車メーカーやバス、タクシー、ネット配車企業のような車両使用頻度の高い企業に販売し、その後の運営で長期的な提携をする形だ。

現在の電気自動車と充電スタンドの比率は3:1前後で、数字を見る限り充電スタンドの市場にはまだ成長の余地がある。そのため、モビリティ企業の「DiDi」、中国の大手不動産会社やバス会社が各自の利用シーンから充電スタンド産業に参入し始めている。今は充電スタンドのEPC(設計、調達、建設)契約、電気自動車のカーシェア、自動車メーカーと充電スタンドメーカーの提携など複数のモデルが併存している状態だ。

今後、充電スタンド市場に参入する企業はさらに増えるだろう。自動車メーカーが冷静であったため、いち早くモデル転換を行ったが、各種のリソースが集約されることで、より合理的なビジネスモデルの誕生が期待できる。

(翻訳:小六)

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