中国「人工太陽」に290億円 諾瓦聚変、小型核融合炉で29年「Q>1」目指す
核融合エネルギーの実用化を目指す中国スタートアップ「諾瓦聚変(Nova Fusion)」が8月31日、プレシリーズAの複数ラウンドで計12億元(約290億円)を調達したと発表した。美団竜珠(Meituan DragonBall)、高瓴創投(GL Ventures)が追加出資したほか、聯想創投(Lenovo Capital)や国中資本(Guozhong Capital)が新たに戦略出資をした。調達資金は、核融合反応で生じるエネルギーが外部から投入するエネルギーを上回る「Q>1」の実証や、将来の商用発電所に必要な設備の開発に充てる。
諾瓦聚変は2025年4月の設立から約16カ月の間に3回の資金調達を実施し、累計調達額は24億元(約580億円)に達した。今回の調達後の評価額は100億元(約2400億円)を超え、中国の民間核融合分野で最大級となる。
同社は、中国で初めて磁場反転配位(FRC)方式を採用した小型・モジュール型核融合炉の開発と事業化に取り組んだ企業とされる。創業者で最高経営責任者(CEO)の郭後揚氏は核融合研究に20年以上携わり、米ワシントン大学や米核融合スタートアップのTAE Technologiesなどで研究開発を担った。米エネルギー省で米中の核融合共同研究にも携わり、19年に中国へ戻った。
核融合技術は、太陽の内部で起きている核融合反応を再現することから「人工太陽」とも呼ばれる。原子力発電に使われる核分裂とは異なり、軽い原子核同士を融合させることで、大きなエネルギーを生み出す。燃料資源が豊富で、発電時に二酸化炭素(CO2)をほぼ排出しない次世代エネルギーとして各国が開発を競っている。実用化すれば、電力消費が急増する人工知能(AI)向けデータセンターや製造業などへの電力供給源になる可能性がある。
世界の核融合研究では現在、「トカマク方式」が主流だが、諾瓦聚変はよりコンパクトな構造のFRC方式に注力し、さらに小型モジュール炉の発想を取り入れた。FRC方式はプラズマの閉じ込め効率を示すベータ値が高いため、同社はこの方式で核融合装置の小型化を図り、建設コストやエンジニアリングの複雑さを低減しようとしている。さらにモジュール化して展開することで、AIデータセンターや工業団地など、消費電力が高い分野への電力供給を目指している。
同社初のFRC方式実験装置「諾瓦一号」は、基本設計と主要部品の開発を終え、全体の組み立てとシステム統合作業を進めている段階だ。ここ数カ月は高出力の全固体パルス電源、モジュール式強磁場磁石、大型石英真空容器、ナノ秒単位の制御・データ収集システムという4つのコア分野で大きな前進があり、関連部品の独自開発も完了した。パルス電源や磁石など一部の主要部品はすでに量産段階に入っており、真空排気や診断、燃料投入などの補助システムもほぼ定型化されている。
諾瓦一号は226年末に初のプラズマ放電に挑む予定で、27年にはプラズマ温度を1億℃に向けて高めていく計画だ。核融合反応を起こすには1億℃という超高温状態が必要とされており、損益分岐点を超えるQ>1に挑戦するうえでも重要な一歩となる。
諾瓦聚変は複数装置を並行して開発する戦略を採用している。諾瓦一号の実験と同時に、「諾瓦二号」の建設を始めている。ロードマップでは、2029年に重水素と三重水素を使ったDT反応で、Q>1の実現を目指す。そのうえで、電源や制御システムなどをアップグレードし、出力50万〜100万キロワット(50〜100メガワット)級の核融合実証発電所の建設につなげる計画だ。
核融合装置向けに開発した技術の外販も進める。郭CEOは、高出力パルス電源などの技術を核医学や鉄道、電力、蓄電などの分野に展開し、核融合発電の実用化に先行して収益源を育てる方針を示している。
*1元=約24円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)