AIの計算を地上から宇宙へ 中国「StarDetect」、303基の衛星ネットワーク構想

商業宇宙開発をめぐる競争が、「人工衛星を打ち上げる」ことから「軌道上でどう価値を生み出すか」を競う段階に突入しつつある。そこで注目を集めているのが、衛星を活用した宇宙コンピューティングだ。

宇宙コンピューティングを手がける中国の「星測未来(StarDetect)」はこのほど、シリーズAで2回にわたる資金調達を実施し、計数億元(数十億円)を調達した。北京創新産業投資(BCT Capital)や華映資本(Meridian Capital)などのほか、既存株主の無錫市創新投資集団(Wuxi Capital Group)と厚天資本(Houtian Capital)が出資した。

2020年に設立された星測未来は、清華大学が主導する宇宙科学プロジェクト「天格計画」の中心メンバーが立ち上げた企業で、主に衛星を活用したAIコンピューティング基盤や関連サービスを手がけている。同社は、宇宙環境向けに設計した専用チップを使うこれまでの手法ではなく、技術的に成熟した地上向けの先進プロセスGPUを使用するという、米SpaceXと同じアプローチを選択した。

過酷な宇宙環境でも安定して使用できるよう、宇宙線を遮断する構造設計、システムの耐障害性、宇宙線リスクの能動的な回避という3重の対策を講じ、より低コストかつ速いペースで性能を向上させながら、高性能の宇宙コンピューティングの実現を目指す。

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大きなポイントは、データ処理の一部を地上ではなく衛星上で直接行えるようにしたことだ。従来のリモートセンシング衛星では、大量の生データを地上に送信してから分析するため、通信帯域を圧迫するうえ、処理にも時間がかかっていた。これに対し、データの選別や対象物の識別、初期分析までを衛星上で済ませ、有効な結果のみを地上に送信すれば、応答速度を大幅に高められる。

同社は2021年に、初の衛星搭載用AI計算装置「星渓」を発表。22年には中国初となる12nmプロセスチップの軌道上運用を実現し、24年には世界初の7nmプロセスチップの軌道上運用に成功した。現在、37枚の先端プロセスGPUが軌道上に配備され、39基のAI計算装置が安定稼働しており、最も長いものは4年以上にわたって軌道上で運用されている。

ビジネスモデルは、単に衛星搭載用AI計算装置を販売するだけでなく、業界向けアプリケーションや計算基盤の構築、計算リソースの運用へと段階的に広がっていく。倉基栄CEOは「AI計算装置はスタートであり、用途に応じたサービスを足がかりに、最終的には計算リソースの運用を目指す」と話す。

同社は、中国送電大手の国家電網(State Grid)と提携し、赤外線リモートセンシング衛星に軌道上の計算基盤を提供している。また、中交水運規劃設計院との提携では、衛星のリモートセンシングを利用した航路状況の監視に取り組んでいる。金融・保険、緊急救援などにも用途を広げているほか、海南衛星データ・応用研究センターと協力して国際展開も進めている。

現時点で、すでに打ち上げ可能なAI計算装置を100基以上確保している。手元の受注も金額にして1億元(約24億円)を超え、2026年の売上高は倍増を見込んでいる。

このほど、分散型の宇宙コンピューティングクラスターの構築を目指す「扶揺計画」も発表した。自社開発のコンピューティング衛星303基を打ち上げ、業界各社が配備する約3000基の衛星とも連携して、大規模な宇宙コンピューティングネットワークの実現を目指す。

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これまではAI計算装置を提供するサプライヤーという立ち位置だった星測未来だが、この計画では衛星コンステレーションを構築・運用する側に回り、川下企業に直接サービスを提供するようになる。すでに、衛星搭載用の光学機器を手がける譜星航天と提携を結び、1024基のリモートセンシング衛星クラスターの構築を進めるほか、業界各社が利用できるよう軌道上の軽量型計算装置2000基余りを開放する。

計画によると、2027年にセンシング・コンピューティング一体型衛星の技術検証を完了し、28年までに100基規模の衛星からなる100POPS級のコンピューティングクラスターを構築、32年までに自社のコンピューティング衛星303基を全て軌道上に投入する。35年には衛星コンステレーションを完成させ、1000POPS級の宇宙コンピューティングネットワークを実現するという。

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*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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