中国IT巨頭の代理戦争には加わらない 完全ローカル化の「Sendo」がベトナムEC業界で急伸

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中国IT巨頭の代理戦争には加わらない 完全ローカル化の「Sendo」がベトナムEC業界で急伸

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ベトナムのEC市場が熱い。

会計事務所世界大手デロイトの調べでは、ベトナムのEC市場は2025年までに150億ドル(約1兆6500億円)規模に達し、東南アジアではインドネシアに次ぐ2位となる見込みだ。一昨年、ベトナムでECを利用した消費者の年平均消費額は前年比2倍の350ドル(約3万8000円)となっている。

EC事業に欠かせない二大インフラが決済と物流だ。ベトナムでは現在、オンラインショッピングの決済の約半分がバンクカードで行われている。今年はEウォレットによる決済が販売総額の28%になると予想される。物流はベトナムで最も成長の速い産業の一つで、GDPの15~20%を占め、世界銀行による物流効率指数(LPI)ではすでにマレーシアやインドネシアなどを抜いている。

ベトナム市場の「EC四強企業」は2社が外資企業、2社が地元企業だ。外資企業の2社はシンガポールを拠点に東南アジア諸国で展開する「Lazada」と「Shopee」で、前者は中国最大のEC事業者アリババグループの傘下にあり、後者はアリババのライバルであるテンセントが出資する。地元企業のうち1社「Tiki」には、中国の大手EC企業「JD.com(京東集団)」が出資している。残り1社はベトナム国内最大手のITコングロマリット「FPT」が設立した「Sendo」で、4強のうち唯一、中国資本が入っていない。つまり、中国企業による代理戦争からは免れた存在だ。

資金力の面ではSendoはすでに群を抜いている。世界最大規模のベンチャー企業データベースCrunchbaseによると、Sendoは昨年11月にシリーズCで6100万ドル(約67億円)を調達した。出資者はSBIホールディングス、大和PIパートナーズ、ソフトバンクベンチャーズアジアに加え、グローバルECなどを手がける「ビーノス」、フィンテックなどを手がける「デジタルガレージ」と日系企業の名が並ぶ。さらにシンガポールのVC「EV Growth」、タイのカシコン銀行も出資に加わった。

36KrはSendoのCFOを務めるJJ Ang氏を取材。外資による「侵略」が進むベトナム市場で、Sendoはローカル企業としてどのように優位性を得たのかなどについて聞いた。

Sendoの CFO、JJ Ang氏

勝因は「地方戦略」

デロイトがベトナムの小売市場について調べたリポートによると、ベトナム全土の小売販売額に占めるシェアは二大都市のホーチミンとハノイで合計33%を占める。しかしSendoのターゲットユーザーは、人口の75%を占めるホーチミン、ハノイ以外の消費者たちだ。ベトナムの地方都市では小売店自体が十分に行き届いていない。場所によっては自宅から10~20キロも離れた大型商業施設まで日用品を買いに行かなければいけない。

企業の戦略はターゲットに定めたユーザーに左右される。SendoはまずC2Cモデルからスタートした。中小規模の小売業者や個人経営店を取り込み、地方都市在住の消費者に向けて安価な日用品を売り出したのだ。現在、ユーザーの6~7割が地方都市在住者だという。

Sendoで取り扱う商品の平均価格は15ドル(約1600円)。売れ筋は50ドル(約5500円)以下のファッションカテゴリの商品だという。通常は20ドル(約2200円)ほどのTシャツがSendoでは5ドル(約550円)程度で買えるとあって、自然と集客につながっている。

地方を中心にC2Cで展開するスキームは、大都市圏で派手に展開する外資系ECとの競争回避につながった。Sendoでは一般商品の他、エンターテインメント、旅行、交通、教育などのサービスも取り扱う。現在はサービス系の受注は多くはないが、将来的には利益率の高い収益源になるとAng氏はみている。

ベトナムのEC事情はちょうど10年前の中国に似ており、現在は創生期にある。C2Cは比較的身軽な事業スキームとはいえ、質の良い出品者を呼び込むにはある程度の体力も必要だ。Sendoは出品者に対し無料で研修を行うほか、ライブ配信機能「SenLiv」をローンチし、現在トレンドとなっているソーシャルコマースをいち早く取り入れている。

現段階では出品者から手数料などは徴収しておらず、大部分の収益を広告から得ている。マレーシアの価格比較サービス「iPrice」の昨年第3四半期のデータによると、Sendoのサイト訪問者数はShopeeに次ぐ国内2位だ。

Ang氏によると、今年の目標は流通総額(GMV)10億ドル(約1100億円)。出品者はすでに50万人を超え、取扱商品は1700万SKU、ユーザー数は1200万~1300万人に達する。

「省エネ」運営も重視

Sendoは立ち上げ当初から身軽さを重視してきた。具体的には物流および決済業務に力を割かず、現地のサードパーティーに極力お任せするということだ。ただし、傘下でもEウォレット「SenPay」を運営しており、すでに国内3位のサービスに成長している。

黒字化への道のり

アーリーステージにあるEC企業にとって、業績は共通の悩みだろう。ベトナムのオンラインニュース媒体VnExpressによると、2016年のLazadaの損失額は4330万ドル(約47億円)、Tikiは778万ドル(約8億5000万円)、Sendoは58万4800ドル(約6400万円)だった。

黒字化の見込みについて、Ang氏は「インドネシアECのたどった道が参考になる」とする。インドネシアでは現地大手「Tokopedia」がすでにプレIPO(上場前最後の資金調達)のステージに進んでいる。通常、企業の業績は上場前までには黒字に転じる。10年前の中国と同等のフェーズにいるベトナムでは、EC事業の黒字化において相応の時間と忍耐力が求められるだろう。現在、Sendoの受注件数は年150%のペースで伸びているところだ。
※画像提供:Sendo
(翻訳・愛玉)

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