「中立」サービスを提供する「U Cloud」 中国クラウドコンピューティング業界初の上場へ

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「中立」サービスを提供する「U Cloud」 中国クラウドコンピューティング業界初の上場へ

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クラウドコンピューティングサービス大手「優刻得科技(U Cloud)」は1月20日、上海証券取引所の中国版ナスダック「科創板」に上場を果たした。中国クラウドコンピューティング業界初、また中国A株市場では種類株式を設定した初の例となる。始値は72元(約1200円)と発行価格33.23元(約530円)から113.06%の上昇となった。

「中国のインターネット業界にはテックジャイアントが存在するものの、スタートアップにも成長のチャンスが残されている」。優刻得の会長兼CEOの季昕華氏は上場時の挨拶で感慨深げに語った。同社は絶え間ない独自のイノベーションにより、中国の基礎研究・開発にも発展の可能性があることを証明してきた。

2012年創業の優刻得は、自社をクラウドコンピューティングサービスを提供する「中立的な」プラットフォームと位置づけており、「中立性を堅持し、顧客の事業領域に立ち入らない」ことをモットーとしてきた。この点はアリババ、テンセント、ファーウェイなどが主業務以外の事業領域として手がけるパブリッククラウドに対し、同社がクラウドサービスを主軸とする上での強みとなっている。

具体的な業務としては、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)、AIサービスプラットフォーム、ビッグデータ流通プラットフォームなどを含む一連のクラウドコンピューティング製品を自主開発しており、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、プライベートクラウド、デディケイテッドプライベートクラウドなど業界向けのトータルソリューションを提供する。

パブリッククラウドは同社の最も主要な収入源となっており、売上高全体に占める割合は、2016年度で91.43%、2017年度で90.97%、2018年度で85.15%、2019年1~6月で80.89%に上る。

パブリッククラウドに加え、優刻得が2014年から育ててきたハイブリッドクラウドサービスも好調だ。売上高に占める割合は年々増加しており、2017年度と2018年度の伸び率はそれぞれ119.05%、182.44%に達した。

同社はインターネットやゲーム事業向けのクラウドサービスから事業を開始し、今ではインタラクティブエンターテインメント、モバイルインターネット、企業向けサービス、既存業界向け企業サービスが売上高においてほぼ同等の割合を占める。

財務報告をみると、売上高は2016年度の5億1600万元(約83億円)から2018年度には11億8700万元(約190億円)に伸びたほか、2019年1~6月の売上高は6億9900万元(約110億円)となった。ただし2019年第3四半期(7~9月)の業績に関していえば、売上高は3億7600万元(約60億円)、純損失は583万2800元(約9300万円)と一定の赤字状態にある。

優刻得は損失に関し、主力製品の値下げ、固定資産のコスト上昇、川下のインターネット業界の成長鈍化およびクラウドコンピューティング市場の競争加熱などがその要因だとしている。

目論見書によれば、同社は今後3年間でクラウドコンピューティング、ビッグデータ、AIからなる「CBA」成長戦略を徹底していく。

米IT専門調査会社IDCのリポートによれば、中国のパブリッククラウド市場規模は2018年に71億8500万ドル(約7800億円)に達しており、2018~2022年の年平均成長率は39.91%に上り、2022年の市場規模は275億3100万ドル(約3兆円)となる見込み。クラウドコンピューティング技術の先進性、業界川下で派生するニーズの拡大、国家政策による後ろ盾が業界の急成長を支えており、市場は「青天井」だといえる。

注意すべきは、上述のように優刻得がA株市場で初めて種類株式による上場企業となった点だ。種類株式は、テック企業の成長特性に合わせ科創板で新設された革新的制度だが、こうした企業は創業初期に莫大な資本投資を必要とするため、度重なるエクイティファイナンスによって創業メンバーの株式が希薄化し、自社の経営決定権を失う可能性さえあった。種類株式制度はテック企業の資金調達に資するものであり、経営陣が企業の長期的な発展の方向性をより確実に見定める上でも有用だ。さらに資本市場が中国本土企業に対する出資、価格決定、リスク分散などの機能を果たす上でも重要な意義をもつ。

※アイキャッチは優刻得の提供による
(翻訳・神部明果)

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