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美顔自撮りアプリを運営する「美図(Meitu)」の株価が先月、続けざまに上昇した。これは同社の美容医療事業参入が、市場に支持されたことを物語っている。
美容整形医療への布石
美容医療を手がけるという考えは、創業者兼CEOの呉欣鴻氏の事業計画の中に常にあった。昨年6月には「上海美図大健康管理有限公司」を設立。美図はこれについて、「皮膚科学で一定の技術的蓄積を備えている」とうたう。
これ以前にも、美図は関連製品を試験的に発表している。スマート洗顔器の「meituspa」だ。しかし、この製品はヒットしなかった。
次に美図が売り出したのは肌診断器「meitukey」だ。この製品の注目ポイントは、美図が他社の肌診断アプリ「皮膚宝」と提携したことだ。meitukeyユーザーは美図の別アプリ「美図美膚管家」を経由して、皮膚宝に登録する8000人近い公立病院の皮膚科医にアクセスできる。
しかし、リリースして半年経ってもこれといった収穫はないようだ。そこで、美図は自ら美容医療に乗り出すことにした。流れに掉さす、というわけだ。
風を追いかけ風に乗れず
設立から11年、美図は順調にIPOを成功させたが、事業拡大に関しては始終理想的とは言えない状況だ。
「2019年はまず止血、2020年に大々的に増血する」。呉CEOはこの2年をこう定義する。止血の効果は明らかだ。昨年末、美図は公式サイトで黒字化宣言を行った。広告事業と有料オプショナルサービス事業の成長、販売費やマーケティング費の削減などいくつかの要素が重なり、利潤を押し上げたという。
しかし、止血の成功は美図の必死な「減量」の賜物だ。
かつて、美図の稼ぎ頭だったのはカメラ機能に特化したスマートフォンだ。しかし販売台数の低迷が続き、ついにスマホ事業からの撤退を発表。美図のブランド、カメラ関連技術、セカンドレベルドメインのグローバルライセンスはすべてスマホメーカー「シャオミ(小米科技)」に譲ることになった。
大いに期待されていたEC事業も自然消滅した。SNS「微博(Weibo)」、動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili)」、ソーシャルECアプリ「小紅書(RED)」などを介し、「肌質診断→オススメ商品紹介→モールでお買い上げ」という青写真を描いた美容系ECアプリ「美図美粧」も運営中止。その後の運営は高級品ECを手がける「寺庫(SECOO)」が出資する美容系EC「TryTry」に引き継がれた。
特筆すべきは、かつてはMAU(マンスリーアクティブユーザー)が最大1億5200万人に達した短編動画プラットフォーム「美拍(Meipai)」が、ライバルの「TikTok(中国国内版は「抖音」)」や「Kwai(中国版では「快手」)」の突撃に次々と敗退したことだ。
美図がこれまでに世に出した製品は20を越えるが、ほとんどは鳴かず飛ばずに終わっている。間断ないチャレンジの繰り返しは、創業まだ11年のIT企業にとっては詰め込み過ぎだったようだ。潔く枝葉を切り捨てて初めて、美図は呉欣鴻氏の言う「止血」に成功したのだ。
ソフト開発から美容整形医療への転身
2019年、美容医療関連のSNSとeコマースを手がける「新氧科技(So Young)」が、美容医療分野のIT企業として上場の先陣を切った。美容整形医療は、数兆円規模の市場になるチャンスを秘めており、さまざまな業界、ジャンルが注目している。
美図もこうした企業の1つだ。呉CEOは年次総会で主要事業重視を前提に、美容整形医療への参入を宣言したのだ。
おもしろいことにその数日後、美図の株価が連続的に上昇した。市場が美図の新戦略を認め、前向きな評価を下したことが容易に見て取れる。
では、美図はソフト開発企業から美容医療企業へどのように転身を図るのだろうか。
まず、美図にはもともと相当数のユーザーがいる。
今日、美容医療業界は混然としており、情報や価格の非対称性に起因する医師・患者間の紛糾が絶えず発生している。非公開、不透明という業界の問題点はインターネットプラットフォームの介入で解決できる。
業界関係者は、巨大な消費者グループと若者が消費の主流になり、中国の美容医療業界が今後大きく発展すると指摘する。
美図が過去10年余りで蓄積してきたユーザーは異業種参入への重要な基盤であり、しかもほとんどの既存ユーザーが美容に関心を持つ若者であることも重要なポイントだ。
第二に、技術面ではソフト開発企業ならではのアドバンテージがある。
美図は美肌や美顔など、同社の競争力の核心である既存技術を活用し、サプライチェーン全体を動かし、美容医療業界へ浸透していくだろう。画像検出、肌状態管理、AIによるメイクシミュレーションや顔造形なども実現可能だ。こうした技術は業界全体にコスト削減をもたらすだろう。
ある統計によると、中国の美容医療業界の市場規模は2018年に前年比40.8%増の2470億元(約3兆8000億円)に達した。2019年はさらに前年比36%増の約3000億元(約4兆6000億円)を実現すると見込まれる。今年も急速な成長は続くだろう。
美容医療事業へと舵を切った美図がどう走るか、これまでの事業とこれから参入する事業への道筋をどうつけるが勝敗の鍵を握る。
作者:锌刻度(ID:znkedu),李觐麟、邓晓进
(翻訳・永野倫子)
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