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昨年10月、テスラが中国の大人気ショート動画アプリ「快手(Kuaishou、海外版はKwai)」への進出を宣言した。その後、下記のようなテスラの専門ページが設置され、ここから試乗予約や価格検索ができるようになった。テスラストアや充電スタンドの場所も調べられる。
一見するとやや異色の今回の協業は、快手にとって象徴的な意味を持つ端緒となった。テスラの大々的な快手への進出以降、快手も自動車業界に食い込もうと躍起になっているのだ。
快手と手を組んだ自動車企業はテスラだけではない。快手は昨年6月に専門チャンネル「快説車」を開設し、自動車修理・メンテナンス、中古車、運転免許試験などの自動車関連コンテンツの集約を試みている。現時点で同チャンネルの短編動画作成者は12万人超、フォロワーも4億5000万人に上る。こうした動きは、実のところ商業化に向けた快手の布石である。しかも、自動車企業はこれまでずっと広告マーケティング業界にとって非常に重要な広告主の一つだ。快手やライバー(ライブ配信者)たちはこの大きなパイをどのように奪うのだろうか。
快手と手を組む各社自動車メーカー
「江淮汽車(JAC)」が先日行った新車発表会の現場には、メディアや観客のほかに、スマートフォンを片手にライブ配信を行う快手ライバーたちが大勢駆けつけていた。彼らは発表会に参加しつつ、自身のファンに向けて新車紹介のライブ配信を行っていた。36Kr系列の自動車メディア「未来汽車日報」の調べによると、こうしたライバーたちはいずれも自動車メーカーが自主的に招待したゲストだという。
こうした快手ライバーたちの姿を自動車メーカーのイベントで頻繁に見かけるようになった。昨年9月の成都モーターショーでは、「二哥評車」「南哥説車」「麦浪哥哥」といった百万人単位のフォロワーを抱える複数の自動車関連ライバーが、各大手自動車企業のステージでライブ配信を行っていた。
公式データによると、上記の「二哥評車」は成都モーターショー開始前二日間のライブ配信で45万人超の視聴者を集めたとのこと。また快手には成都モーターショーをテーマとした作品が1万5000件以上投稿されている。昨年11月の広州モーターショーでも、関連短編動画の視聴回数は9億回超、動画の「いいね!」数は2000万件超となっている。
自動車消費市場が地方都市まで拡大しつつあるため、自動車メーカーは快手を重視せざるを得ない状況だ。自動車メーカーはブランドイメージを飽和状態気味の一~二級都市からポテンシャルの高い三~四級都市まで広げたいと考えており、快手はこの役目を担うことができる。持ち味の異なる自動車関連ライバーたちは、自動車企業が潜在顧客にリーチする上での新たなチャネルとなっており、彼らを通じてブランド露出を行なえば購入につなげることも可能だ。
自動車企業にとって快手における最も直観的なリソースとは、1億人を超えるデイリーアクティブユーザーだ。そのトラフィックをベースとした広告、ECでのレコメンド、自動車関連の取引はいずれも商業化のチャンスを備えている。
昨年5月には200万人超のフォロワーを抱えるライバー「二哥評車」が遼寧省瀋陽市で共同購入を企画し、最終的に288台を販売したという。また10月には快手のインフルエンサー「手工耿」氏が俳優の雷佳音氏らと行った3時間半のライブ配信では、ボルボに1623台の注文をもたらし、総額は2億2000万元(約34億円)に上った。ライバーがファンのアクセス数を購入へとつなげるスキルは、日用消費財だけでなく自動車にも適用できるといえる。
自動車メーカーもブランド宣伝における短編動画プラットフォームの潜在力に気づき始めており、テスラを含む多くの企業が自社の動画アカウントを開設している。「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」上のBMW中国、「一汽大衆(FAW-VOLKSWAGEN)」、アウディ、「長安福特(長安フォード)」など主流自動車ブランドのファンはいずれも10万人を超えている。
快手の「快説車」チャンネルの創設にせよ、テスラの専門ページ開設にせよ、自動車企業における短編動画の意義は、単純なブランド露出手段という次元を超えている。短編動画プラットフォームと自動車業界は、単純な広告マーケティング以外のさらなる提携のあり方を模索している。今後は中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」の運営と同様、全ての自動車ブランドがファンに向けた快手の自社アカウントを開設する日が来るかもしれない。
作者:未来記者日報 牛暁通
(翻訳・神部明果)
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