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「美団(Meituan)」がこの3月で創業10周年を迎えた。同社は10年前に「団購(共同購入型クーポン)」サイトとして設立し、現在では中国最大のO2Oプラットフォーム企業となっている。創業者の王興CEOはこの10年間どのようにして数々の危機を乗り越えてきたのだろうか。
クーポンサイトで出発:数千社との死闘を勝ち抜く
王氏は2003年、米国での学業を投げうって中国に戻り起業。中国版facebook「校内網(Xiaonei、のちの人人網)」を創業したが2006年に買収されている。2007年には中国版Twitterの原型「飯否網(Fanfou)」を創業。そして2010年3月、王氏は3度目の起業で共同購入型クーポンサイト「美団網」をリリースした。
クーポンサイトは一気に盛り上がり、瞬く間に数千のサイトが市場にひしめいた。当時のデータでは、美団設立の2010年3月から2011年8月までの1年半に中国国内では5000を超えるクーポンサービスが生まれたという。
投資市場も共同購入のビジネスモデルを評価し、2010年末に美団は「セコイア・キャピタル・チャイナ(紅杉資本中国基金)」から1200万ドル(約12億6000万円)の資金を調達。ライバルである「拉手網(Lashou.com)」も3度の資金調達で合計1億6000万ドル(約170億円)を調達したほか、口コミサイト大手「大衆点評(Dianping)」も調達した1億ドル(約105億円)を同事業に投入すると発表した。
資金を獲得したクーポンサイトは相次いで広告合戦を行い、市場シェアを奪い合った。
2011年、ライバル「団宝網(Groupon.cn)」は年間5億5000万元(約80億円)を広告に投入すると宣言。各媒体を通して全面的にプロモーションを行った。「糯米網(Nuomi.com、のちの百度糯米)」は2億元(約30億円)を、大衆点評は3~4億元(約45~60億円)を広告に投入すると宣言。美団は唯一広告合戦に参加しない企業となったが、ライバル企業のすさまじい宣伝を目の当たりにして焦りが無かったと言えば嘘になるだろう。
美団は当時、事業者に向けて自社ブランドをアピールする広告は意味がないと考えていた、それよりもオフラインでの運営を重視し、これが成功の要因となった。当時、より激しく資金の投入をした拉手網が米国での上場に失敗したことや、「窩窩団(55tuan)」が事業者への支払いを滞納した事件なども結果的に美団に有利に働いた。
次の舞台はフードデリバリー戦争:インターネット大手がライバルに
美団にとってクーポン事業は小さな勝利を収めたに過ぎなかった。続いて新事業を展開することになる。当時、中国のフードデリバリー業界は立ち上がったばかりで、美団は大きなビジネスチャンスと考えたものの、当初は自力で手がけるつもりはなかった。美団共同創業者の1人である王慧文氏は当時のデリバリー大手「餓了麼(Ele.me)」の創業者である張旭豪氏に買収を持ちかけたが、拒否された。
そこで2012年11月、自社で「美団外売(Meituan Waimai)」をローンチ。翌月にはアリババが「淘点点(dd.taobao.com)」をローンチしている。当時、餓了麼・美団外売・淘点点・IT大手バイドゥ(百度)傘下の「百度外売(Baidu Waimai)」の4社がフードデリバリー市場シェアの80%を占めていた。中でも2008年に設立した餓了麼が市場シェア・セグメンテーション双方において業界1位だった。
団購サイトの時とは違い、ライバルは少ないながらもより強力だった。百度はフードデリバリーに参入すると決めてから200億元(約3000億円)をかけて「百度糯米」をサポートすると宣言。大衆点評は2014年初め、テンセント(騰訊)から投資を受けている。つまり、美団のライバルは実質的には当時のIT企業御三家「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」となった。
美団は今回も地に足の着いた方法を選んだ。事業者を一軒一軒訪問したのだ。当時の営業チームには「訪問した顧客数が3日連続で1日3軒を下回れば解雇する」というノルマがあったほどだ。
2014年には餓了麼と大学キャンパス市場を、2015年には百度とホワイトカラー市場を奪い合った美団外売は2年という時間をかけて2社に追いつき、トップに躍り出た。
<後篇:大衆点評との合併で味方のアリババが敵に、香港上場、収益モデルの呪縛>
(翻訳・山口幸子)
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