「あつまれ どうぶつの森」中国未発売ながら話題沸騰 Switch代理販売のテンセントはジレンマ

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任天堂が320日から販売を始めたゲームソフト「あつまれ どうぶつの森(以下、どうぶつの森)」の売れ行きが好調だ。ゲーム情報誌「ファミ通」が325日に公開した速報によると、20日からの3日間に日本国内で188万本を売り上げ、Nintendo Switch向けソフトの発売週販売本数で歴代1位となった。しかもこの販売本数はパッケージ版のみで、ダウンロード版は含まれていないというから驚きだ。

任天堂の家庭用ゲーム機「Nintendo Switch(以下、Switch)」は、テンセントが正規販売代理店となり中国国内でも販売されているが、中国版Switch向けの「どうぶつの森」はまだ発売されていない。それにもかかわらず、中国のSNSはすでに「どうぶつの森」の話題で持ちきりだ。

3月20日から、同ゲームの検索数が一気に高まってきた(「百度指数」より)

 とはいえ中国で実際に「どうぶつの森」をプレイするのは簡単なことではない。海外向けパッケージ版を購入しようとECサイトをのぞいても、どこも予約を受け付けているだけで、実際に商品を受け取れるのは4月中旬以降となっている。

 今すぐにでもダウンロード版を手に入れようと思うなら、ハードルはさらに高い。中国版Switchでは海外のeショップにアクセスできないため、まず海外版のSwitch本体を入手する必要がある。さらに海外eショップでは中国の決済サービスに対応していなかったり、ダウンロードに時間がかかったりするなど、一筋縄ではいかないのだ。

これほどのお金や時間やエネルギーを費やしてでも、中国で「どうぶつの森」をプレイしようとする人は多い。その魅力はいったいどこにあるのだろうか。

「どうぶつの森」は移住先の無人島でさまざまな材料を集めて必要な物を作り、暮らしを豊かにさせていくゲームで、ミッションと言えるのはせいぜい家の増築やローン返済といったところだ。敵もモンスターも出現せず、刺激的な戦いの場面も一切ない。このゲームの一番の魅力は自由度の高さや心温まる交流、そして現実世界と同じ時間がゲーム内でも流れていくということだろう。今作では北半球か南半球かの設定に応じて季節も変わる。

ゲーム専門メディアやプレーヤーコミュニティーをのぞいてみれば、人々がいかにこのゲームを楽しんでいるかが見て取れる。動画投稿アプリ「TikTok(中国版は抖音)」には白髪の女性が魚釣りに夢中になっている動画がアップされた。親が子どもと一緒に「どうぶつの森」で遊ぶシーンも少なくない。もともとファミリー向けのゲームが大半を占める任天堂だが、このゲームは年代を問わず誰もが楽しめるようになっている。

ここ数年、中国ゲームの王者であるテンセントは「王者栄耀(日本語版:伝説対決-Arena of Valor-)」や「和平精英(Game for Peace)」などのヒットを飛ばした一方で、世論や当局から厳しい目を向けられ、かつてない重圧にさらされている。テンセントは膨大な資金とエネルギーを費やして、自社やゲームに対するイメージ回復に必死だ。例えば未成年者を保護するシステムを整えたり、教育的意義を持つゲームの開発に取り組んだり、青少年の社会活動に積極的に関わったりすることなどだ。 

これらの努力によって、ある程度の効果を期待できるだろう。しかし「どうぶつの森」のヒットで、さらなる可能性が生まれるかもしれない。 

「どうぶつの森」シリーズのプロデューサーを務める野上恒氏は、米テック系メディアThe Vergeの取材で、ちょうど発売時期が世界的な新型コロナウイルス感染拡大と重なったことにひどく心を痛めたことを明らかにしており、「だからこそ多くのファンが本作を現実から逃れる場として活用し、困難な時に少しでも楽しんでくれることを期待している」と語っている。 

「どうぶつの森」は手軽に遊べるカジュアルゲームとも中毒性の高いゲームとも全く異なった性質を持つ。野上氏が述べた「逃れる場」が心癒やされる優しい世界を指すことは明らかだ。

人として誰もが持っているこのような感情こそ、「どうぶつの森」の爆発的ヒットの核心なのではないだろうか。また有料サービスにつながる可能性や交流要素などを考えても、代理販売かオリジナルかにかかわらず、テンセントはこのようなゲームを中国市場に投入したいと考えているはずだ。

テンセントが社会的な苦境から抜け出す上でも、「どうぶつの森」はぜひとも必要だろう。テンセントが代理販売する中国版Switchには、当局からのさまざまな制限が課されている上、海外版に比べてプレイできるゲームが圧倒的に少ないため、中国版ユーザーは不満を募らせている。Switch向けゲームが話題になればなるほど、中国版Switchの売り上げが落ち込み、評判が下がるといったジレンマが存在しているのだ。

※筆者補足:4月10日、「あつまれ どうぶつの森」のゲームソフトが中国本土の通販サイトから消えたと報じられた。原因は不明だが、民間では「政治的理由だ」との声も上がっているという。海外版を入手した中国のユーザーにさほど影響ないが、これから正規版を発行するテンセントに大きな痛手となるだろう。

(翻訳・畠中裕子)

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