先頭を走る中国家庭用サービスロボット市場、2020年下半期に新たな成長の兆し

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先頭を走る中国家庭用サービスロボット市場、2020年下半期に新たな成長の兆し

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中国のサービスロボット市場の成長率は、ここ数年世界でも先頭を走っており、新型コロナウイルスの流行が、その成長を更に後押ししている。国際ロボット連盟(IFR)のデータによると、2019年の世界のサービスロボットの市場規模は290億ドル(約3兆円)で、成長率は3.2%に達した。このうち中国国内の市場規模は約22億ドル(約2400億円)、成長率は33.33%で、世界市場に占める割合は約23%となった。

投資家向け情報プラットフォーム「CVSource」によると、今年2月から現時点までのロボット企業への出資は15件を超え、出資総額は約30億ドル(約3200億円)に達している。このうちサービスロボット企業への出資額は10億元(約150億円)近くになっている。

業界内の競争が激しくなるに伴い、ロボットの生産コストは大幅に低下している。これは大規模な実用化にとって重要な指標だ。

ロボットの大規模な実用化が実現できるかどうかは、AI、ビックデータ、エッジコンピューティング、IoTなどカギとなる技術の成熟、センサーなど核となるハードウエアのコスト削減、産業チェーンの整備にかかっている。単純にハード面だけを見れば、サービスロボットの敷居はすでにそれほど高くはない。そのためここ数年業界では、競争の焦点が、組み込みソフトウエアやアルゴリズムの最適化に移っている。アルゴリズムの最適化は製品の応用範囲を広げ、コスト削減を実現するためだ。

「深眸科技(Deep Eye Technology)」は、AIアルゴリズムの研究開発およびPaaS開発の強化により、ソフトウエアとハードウエアのリソースを統合し、サービスロボットの生産コストを大幅に削減した。同社は消費者向けの家庭用サービスロボット市場に参入している。

AIにとって重要なのはデータ、アルゴリズム、コンピューティングだ。深眸科技は画像のタグ付けシステムを自社開発し、自動タグ付け技術によって、大量データの機械学習の高速化を実現した。学習の重点を人間の動作認識に置き、これを核心技術としている。創業者の許淞斐氏は「人の顔認識は「センスタイム(商湯科技」や「メグビー(曠視科技)」などのトップ企業が先行して市場を独占している。わが社は人の動作認識を切り口にすることで、これらの企業との直接対決を避けたいという考えだ。また、この技術は国内の介護市場などに需要があると考えている」と語っている。

深眸科技がコスト削減を実現するための2つめのカギは、PaaSの開発だ。クラウドコンピューティングの処理能力、IoTによる通信能力、エッジコンピューティングによって提供されるローカルサポート、AIアルゴリズムによる技術サポートなどによって、ハードウエアへの負荷を下げその性能を引き出すことに注力している。それにより低コストのハードウエアでもアプリケーションのアップグレードが可能となり、コストパフォーマンスを上げ、様々なシーンでの需要を満たしている。他のロボット研究開発企業のPaaSは、外注による開発が多いが、同社は自社で研究開発しているので、サービスロボットの産業チェーンの低コスト化を実現している。

以上の2つの優位性によって、深眸科技はロボット1台あたりの価格を3000元(約4万6000円)以内に抑え、2019年下半期の販売開始以来、出荷台数は100台を上回っている。サービスシーンは、店舗、家庭、オフィスなどをカバーし、リモート介護、リモート会議、リモートワーク、ロビーでの案内業務、レストランでの配膳、巡回警備などにおける需要を満たしている。同社のロボットは、音声コントロール、転倒の検知、健康管理、ガス検知など様々な機能を持ち、拡張性にも富んでいる。

消費者向けのサービスロボット販売は同社の主な収益源ではあるが、現在の市場全体の状況を見ると、消費者向け市場のニーズを開拓するには、大規模な量産が可能なコストパフォーマンスの高い製品が必要となる。同社は今年の出荷台数が2000台を超え、売上高が1000万元(約1億5000万円)に達すると予想しているが、「小胖機器人(Evolver)」、「弗徠威(Flyingwings)」など業界トップ企業のロボットは1台数万元(約数十万円)で出荷台数もまだそれほど多くない。

しかし、サービスロボットの普及にはまだ課題も多い。

サービスロボットの開発では、ソフトウエアやアルゴリズムの研究開発以外に、生産プロセスの最適化も多額のコストがかかる部分であり、大規模な量産化を通じて全体コストを下げていく必要がある。ロボットのインタラクティブ能力も依然として課題であり、特に重要な音声インタラクティブ能力については、比較基準となるAppleのAIアシスタント「Siri」にどこまで追いついているのかを考える必要がある。

しかし許氏は、家庭用サービスロボット業界が2020年下半期に転機を迎える可能性があると考えている。

アマゾンが家庭用ロボット「Vesta」をリリースするという情報があり、イスラエルのロボットメーカー「Robotemi」が開発したビデオチャットや音楽再生ができる家庭用ロボット「Temi」も中国市場に進出する。大ヒットしたスマートスピーカー「Amazon Echo(アマゾン・エコー)」によって、バイドゥの「小度(Xiaodu)」、アリババの「天猫精霊(TMALL GENIE)」、シャオミの「小愛(Xiaoai)」など中国国内のスマートスピーカーに急激な発展がもたらされたように、家庭用サービスロボットも海外のトップ企業の参入により、中国国内市場が新たな局面を迎える可能性は高い。

(翻訳・普洱)

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