新型コロナでメンタル不安に、中国のメンタルヘルスサービス需要高まる

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新型コロナでメンタル不安に、中国のメンタルヘルスサービス需要高まる

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「壹心理(Yixinli)」は2011年に設立されたメンタルヘルスサービス専門のプラットフォームだ。同社主力サービスは心理カウンセリングで、自己成長やメンタルヘルスに関する相談、マリッジカウンセリングなどを中心に受け付けている。昨年7月時点で、すでに心理カウンセラー約500人と14カ国・地域のユーザーを抱え、累計25万人にサービスを提供していた。また、ユーザーの8割がオンラインカウンセリングを利用していた。

感染症の流行がメンタルヘルス業界の変化を後押し

今年年初に発生した新型コロナウイルスの大流行により、中国の国民生活は大混乱に陥った。人々はパニックや不安、緊張など不快な感情を抱きがちになり、心理カウンセラーの手助けを求める人が増え、メンタルヘルスの重要性に対する認識が高まった。

壹心理は新型コロナウイルスの流行期間中、メンタルサポートプログラム「後背計画」を打ち出した。無料のメンタルサポートサービス「疫情公益心理援助専線」の利用者は累計1万人を超え、400万人以上が中国共産党機関紙・人民日報傘下のサイト「人民網」や共産党思想学習アプリ「学習強国」などに開設された壹心理の無料メンタルチェックを利用した。

壹心理のカウンセリングサービスの利用者はこの期間中、以前の3〜5倍に増加した。同プラットフォームの共同創設者、曹洪雯氏は、今回の感染症流行が心理カウンセリング業界の直面してきたボトルネックの解消を後押ししたとし、具体的な内容を三つ挙げた。

1.心理カウンセリング業界は倫理と専門性を重視してきたが、オンライン事業についてはプライバシー保護などの点を疑問視されていた。しかし感染症の流行以降、オンラインカウンセリングに対する認知度と信頼感が高まった。

2.心理カウンセリングはオフラインでの体験を非常に重視している。感染症の流行以降、オンラインカウンセリングの割合が増えたが、カウンセラーはこれまで1対1のカウンセリングで培ってきた手法をオンラインでのカウンセリングにも適用し始めており、今後のオンラインとオフラインの融合に役立つと考えられる。

3.専門的なサービスを提供する心理カウンセラーだけでなく、アマチュアの心理学愛好家がユーザーに助言することが可能になり、今後はメンタルヘルスサービスにおけるプロとアマチュアの比率に変化が生じる可能性がある。

曹氏はさらに、感染症の流行を背景にカウンセリング機関のオンライン化が加速していると指摘した上で、費用を支払って心理カウンセリングを受ける習慣が根付いていけば、心理カウンセリング業界により多くのチャンスがもたらされる可能性があるとの考えを示した。

「壹心理」のメンタルサポートサービス「疫情公益心理援助専線」

壹心理が進める事業者向けサービスの拡充

壹心理は現在、心理カウンセリングサービスに講座サービスとメンタルチェックサービスを加えた三大サービスとオーディオブック配信サービス「読書会」を提供している。

講座サービスでは、一般ユーザー向けと心理カウンセラー向けの2種類の有料講座を200講座近く開講しており、これまでに延べ60万人以上が受講している。

メンタルチェックサービスについては、専門的なテスト約170種、娯楽的なテスト約2千種をリリース。事業者向けにメンタルチェックのオーダーメードも行っている。初期費用は数万元(数十万円)程度かかるが、利益の大部分は事業者側が得ることになる。オーダーメードを利用した事業者は累計1500社に上る。

三大サービスの合計売上高は毎月数千万元(数億円)に上り、全サービスの合計売上高の9割以上を占めている。いずれのサービスの売上高もここ2、3年で急速に伸びている。

しかし、カウンセリングサービスの売り上げの大部分はカウンセーラーの報酬として支払われるため、売上高が伸びているにもかかわらず、売上総利益は少ない。そのため、壹心理はカウンセリングサービスについて事業者との提携やオーダーメードサービスに力を入れ始めた。

「壹心理」のスマホアプリ

壹心理は昨年、事業者向けプログラム「盤古計画」を立ち上げ、全国の心理カウンセリング機関に「盤古線上諮詢室系統(盤古オンラインカウンセリング室システム)」を無償開放した。同システムは、ビデオ通話形式のカウンセリングや予約管理システムが利用できるほか、カウンセラーの管理・教育システムも一元的に操作することができる。

中国では昨年、国家資格としての「心理諮詢師(心理カウンセラー)」認定試験廃止が決定されている。曹氏は、これにより資質の劣る個人や機関が正常な市場秩序を乱すことを危惧し、優良なカウンセリング機関に科学的かつ効率的に成長と発展をもたらすプラットフォームを提供しようと考えたという。曹氏は、盤古計画を壹心理の今年の重点事業とすると表明している。

壹心理の現在の登録者は2200万人。ユーザーは120カ国・地域に広がっている。主なユーザー層は18〜35歳の若者で、女性が7割を占め、課金ユーザーも300万人近い。曹氏は、現在のユーザー数は市場規模から見れば氷山の一角にすぎず、メンタルヘルス業界ではより多くの事業者による共同事業の推進が必要だと指摘。壹心理は総合的なメンタルヘルスサービスの構築を目指し、一般ユーザー向けにはカウンセリングやメンタルチェックなどを、事業者向けにはカウンセラーの育成システムやカウンセリング機関のオンライン化などを提供していくとの方針を示している。

壹心理は昨年7月、シリーズBで「 楓海資本(Fenghai Capital)」から数千万元(数億円)を調達した。これに先立ちシリーズA+で「賽富亜州(SAIF Partners)と「北極光創投(Northern Light Venture Capital)」から出資を受けたほか、頭頭是道投資基金(Toutoushidao Capital)」の戦略投資も受けている。

(翻訳・田村広子)

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