自動運転AIチップの地平線機器人 世界シェア3割奪取への戦略を語る

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自動運転AIチップの地平線機器人 世界シェア3割奪取への戦略を語る

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創立5年目のAIチップユニコーン企業、地平線機器人(Horizon Robotics、ホライズン・ロボティクス)が製品商業化まであとわずかの段階に入った。量産車向けの厳しい製品要求水準を満たした結果、長安汽車が同社製品を採用することを決定、初の中国製の量産車向けAIチップとなった。米インテルなどの陣営に対抗するために、オープンソース化によって顧客の取り込みを図り、自動運転用のAIチップで2030年までに世界シェア3割を奪取する戦略を描く。そこにいたる道筋について同社創業者兼CEOの余凱氏に聞いた。

長安汽車は地平線の第2世代チップ「Journey(征程) 」を搭載した新型コンパクトSUV「UNI-T」を、今年半ばに発売する予定。量産車の自動車向け機能安全規格を満たしたAIチップは中国初となる。 米インテル傘下の自動運転技術企業「Mobileye(モービルアイ)」が他メーカーとクローズドイノベーションで提携するのに対し、地平線は、提携先の自動車メーカーが他社と差別化した機能を実現できるよう、ツールチェーンやアルゴリズム などをオープンソース化して提供する。

余凱氏は「今年は当社が商業化を実施する上で重要な年だ。長安汽車との提携がうまくいけば、他の自動車メーカーとの提携もスムーズになる。いつか、地平線がMobileyeや米大手半導体メーカー、NVIDIAと拮抗する中国企業になることが願いだ。当社の目標は、2020年から2025年までに中国で車載AIチップのトップ企業になり、2030年までに世界シェア3割を達成すること」と語る。同氏はまた、中国車の75%〜80%は2025年までにL2(部分運転自動化)からL3(条件付き運転自動化)を装備すると予測する。

Horizon Robotics創業者兼CEOの余凱氏(写真提供:Horizon Robotics)

以下は余凱氏へのインタビューの抄訳である。

世界シェア3割を達成するには

――地平線の発展についてお聞かせください。

「当社は性急に商品化と経済効果を追い求めるビジネスはしない。車載チップは一般向けや産業用より要求が高く、最も難しいと言ってよい。難しいので競争相手もほとんどいないブルーオーシャンだ」

「地平線は今年7月で設立5周年を迎える。この5年間は基本的に地道な基本技能を積み重ね、世界一のAIチップのスタートアップ企業となった。AIチップのスタートアップとしては世界で初めて、2017年に中国初の非車載型のエッジAIチップ(クラウドサーバーではなく端末に近いところでデータ処理するためのAIチップ)を、昨年には中国初の車載型エッジAIチップをローンチした。今年は、自社ブランドの中国産AIチップを量産車に搭載というブレイクスルーを達成した」

――地平線の目標にはどのような変化がありましたか。

「長期的な目標は変わっていない。我々は最初から、ロボット時代の『Wintel(WindowsのOSとIntelマイクロプロセッサを搭載したパソコンの業界標準的存在)』になり、エッジAIのグローバルリーダーになることを望んでいた。これまでの5年間、中国初の車載AIチップメーカーになることを目標としてきたが、今やそれを実現した。 今後の目標は、2025年までに中国の車載AIチップで1位になり、2030年までに世界シェア3割を達成することだ。 2030年以降は汎用ロボットチップのグローバルリーダーになることを目指す」

最も難しいのは0から1へのブレイクスルー

――地平線はAIチップを搭載するよう従来型の自動車メーカーをどのように説得されたのでしょうか。

「これは本当に難しかった。新興企業には、大量生産の実績も、品質不良率の過去データもない。車載レベルの要件は不良率ゼロであり、証明するためには100万個以上の出荷履歴が必要だ。したがって、車載チップを製造できるのは通常、数十年の歴史を持つインテルのような超大企業だ」

「長安汽車と提携するには、彼らからの信頼獲得という壁を乗り越える必要があった。 2018年に長安と共同研究所を設立し、量産の前に双方で長期間にわたるすり合わせを行い、信頼を築いた。もちろん、当社からしっかりした測定データも提供した」

「長安汽車との提携は強力な宣伝になる。 当社が非常に厳格な品質テスト認証に合格し、サプライヤーとしての資格があることを皆に知らしめることができるのだ。0から1へのブレイクスルーが一度達成されれば、1からNへの移行ははるかに簡単で、今では多くの自動車メーカーが我々に会いに来るようになった」

「世界中でこのレベルの電力消費と演算能力を提供でき、しかもオープンソース化しているチップメーカーは我々だけだ。 NVIDIAは、運転支援やインテリジェントコックピットのマルチモーダル・インタラクション(視覚、聴覚、触覚など複数のモードでシステムを操作できる仕組み)などの関連製品をまったく作っておらず、チップの消費電力も高めだ。我々の消費電力と演算能力ならMobileyeとの真っ向勝負も可能だ。Mobileyeはオープンソースに対応していないが、我々は自動車メーカーの自主開発のニーズを満たすことができる。オープンソースこそが正しい方向であり、より強力なビジネスモデルだと私は考えている」

――地平線が自動車メーカーに公開しているのはどのような機能でしょうか。

「Journeyの第2世代チップは、自動車メーカーのADAS(先進運転支援システム)開発をサポートできる。前方視覚認識では、車両、歩行者、車線の検知、距離や速度の計測、道路標識や信号機の認識など多くの差別化された機能、全方位センサーによる自動駐車もサポートする。自動車メーカーは、このチップを使用して、音声認識やアイトラッキングなどによるシステム操作を実現することも可能だ」

2030年にはL3がスタンダードに

――地平線は商品化についてどのようなビジョンをお持ちですか。

「業界の発展に従って進む必要があるので、一気にジャンプしてL4(高度運転自動化)を直接目指すことはしなかった。当社は自身を悲観的な楽観主義者と定義する。プロセスについては 。 2030年にはL3以上が標準となり、すべての車にAIチップが搭載されることになるだろう。来年までの目標は、Journey第2世代チップの100万個量産だ」

「L3以上には、数百TOPS(trillion operations per second / 1秒間に320兆回の命令を処理できる能力)の演算能力を提供するコンピューティングプラットフォームが必要だが、消費電力を100W以下に抑える必要がある」

「地平線は、テスラのFSD(Full Self Driving)チップをベンチマークにしたL3自動運転チップを今年末に発売する予定だ。我々の試算では、自動運転のレベルを1つ上げるには、チップの演算能力を1桁大きくする必要がある。 より高いレベルの自動運転に進むには、各チップの演算力を数百TOPSに上げなければならず、その時はまだ到来していないと我々は考えている」

――自動運転に対する自動車メーカーの態度はいかがでしょうか。

「自動車市場は低迷しており、新型コロナウイルス感染症の流行が大きな痛手となっているため、自動車会社は非常に苦慮している。しかし、この情勢に反して、今年の第1四半期にテスラの販売台数は増加し、単一四半期の自社記録を塗り替えた。多くの人々は、テスラの強みは(電気という)新エネルギーにあると誤解しているが、実は自動運転の積極的採用にあるのだ。テスラは、昨年3月から積極的にFSDチップを搭載し、OTA(Over the AIr、無線通信技術)を介してソフトウェアもアップグレードできるようにし、本当の意味でのソフトウェア定義インテリジェントカーを実現した。テスラは既存概念を覆す全く新しいカーメーカーだ」

「テスラの存在にプレッシャーを感じている多くの自動車メーカーは、より積極的に地平線との提携を求めている。彼らは絶対にスマート化を向上しなければならない。さもなければ、今後、自動車を売るのは難しくなるだろう」

MobileyeとNVIDIAがライバル

自動運転用Matrixプラットフォーム (写真提供:Horizon Robotics)

――地平線はなぜいち早く国産車に車載量産チップを搭載することができたのでしょうか?

「これを語るには、当社が最初にした選択から始めねばなるまい。 2030年までに最大の演算プラットフォームになるのは、ロボット用演算プラットフォームであり、ロボットの中でも最初の大規模な応用シーンとなるのは絶対にインテリジェントカーだと当初から考えていた。また、車載搭載コンピューターはクラウドコンピューターではなく、絶対に(ユーザー端末の近くで情報処理をする)エッジコンピューターだと判断した。AIを自動運転で実用化するには、アルゴリズムだけでなく、ソフトウェアからハードウェアまでが必要であり、チップの問題を解決する必要もある」

「これらの点を考慮した結果、当社はアルゴリズムからチップまで、さらにスマートカーやエッジのプラットフォームまでカバーすることになった。我々は全精力をここに注ぎ、しかも最速で行う必要があった」

――当時、地平線はなぜそのような判断を下せたのですか?

「この判断の理由は、私とチームの背景に由来する。 2012年に我々はバイドゥ(百度)にディープラーニング研究所を設立した。当時、バイドゥとGoogleは、世界で最も早く大規模にAIへ投資した二大企業だった。バイドゥ在籍期間中、私はクラウド上に広告、検索、リコメンド向けのディープラーニングモデルを作成し、自動運転プロジェクトも立ち上げてきた」

「この期間中に、クラウドのレイテンシー(遅延時間)は比較的長く、車載チップにはミリ秒単位の応答速度が必要であることを意識した。当時、ほとんどすべてのチップはサーバー向けに設計されており、消費電力は非常に高かった。私が自動運転を担当していた当時、車のトランクは機械だらけで非常に熱を持っており、低消費電力で高性能、低遅延の専用チップを設計しなければだめだと知った」

「消費電力と演算能力のバランスをとるための核心はハードウェアとソフトウェアの組み合わせにある。チップを手配した後、チップの視点からではなく、システムの視点から問題を見る必要があった。なぜなら、ソフトウェアは最終的にチップ上で使用され、トータルでの電力消費が発生するからだ」

――自動運転用の車載チップに注力している米半導体メーカー「クアルコム」やファーウェイは、地平線のライバルでしょうか。

「車載チップの参入障壁は非常に高く、自動運転の車載AIチップはまったく新しい分野である。多くの企業がプランニングをしてはいるが、市場向けの成熟した量産製品の発売はまだない。現在、当社がライバルと見ているのは、インテル傘下のMobileyeとNVIDIAだ」

「ブレイクスルーは、大企業のように潤沢な資金があれば容易だろうが、スタートアップには実に難しい。当社としては、かけがえのない時間の投資こそが資金投資よりずっと重要だと考える。私たちは時間を友にする必要があり、重要なのは長期的な研究であって投資額の大きさではない。これこそが地平線の方法論である」

(翻訳・永野倫子、編集・後藤)

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