シャオミ生態系の成長株「雲米」、スマート家電による快進撃はいつまで

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シャオミ生態系の成長株「雲米」、スマート家電による快進撃はいつまで

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中国のスマートフォン・家電大手「シャオミ(小米科技)」のエコシステム(生態系)内にある企業には典型的な成長プロセスがある。まずはシャオミの助けを借りて成長するステップだ。シャオミ傘下の「シャオミ(Mi)」やIoT家電ブランド「米家(MIJIA)」の製品として知名度を上げる。次は徐々に自社ブランドに移行、そこで売上高を伸ばしてシャオミに対する依存度を下げるという方法だ。

独自の発展プロセスを遂げる「雲米(Viomi)」

すでに上場まで果たした「雲米(Viomi)」はこうした定石とは異なるケースだ。シャオミとの協力関係をさらに拡大し、両者の提携製品も主力の浄水器のみならず多くの製品ラインアップを展開する。同時に、自社ブランドの拡充も行っているのだ。

1.シャオミの家電事業拡大による利益増

雲米は最初にシャオミの浄水器ブランドとして有名になった。その後、製品ラインアップをスマート家電全体へと拡大し、シャオミのエコシステム内企業の中では最も多くの種類の家電製品を展開する企業となった。

過去2年間、家電はシャオミのIoT事業拡張のカギとなっており、コア製品以外はエコシステム企業やパートナー企業と共同で、シャオミあるいは米家ブランドとして製品をリリースしている。雲米にとって、シャオミの家電事業拡大による利益は大きい。

36Krの調査によると浄水器以外にも、シャオミの公式ECサイト「小米商場」で販売されている冷蔵庫、ガステーブル、レンジフードなどは雲米との提携製品で、2019年8月に発売されたロボット掃除機も雲米の製品だ。

作成:36Kr  データ:雲米公式

シャオミとの提携による販売促進の結果、2019年、雲米のスマートキッチン製品(冷蔵庫、ガスレンジなど)、その他のスマート製品(ロボット掃除機、洗濯機など)事業成長率はそれぞれ78%、195%に達し、ともにスマート浄水システムの成長率を上回った。

しかし、双方の提携が拡大しても、雲米のシャオミへの依存度は上がっていない。2019年の決算報告によると、雲米の総売上高に占めるシャオミブランドの売上高は40%にまで下がっている。雲米ブランドの売上高の伸びが速いため、シャオミブランドの売上高との差が開いている。

2018年、雲米ブランドの売上高は前年比5倍を超え、2019年の売上高はそこからさらに倍になった。

作成:36Kr  データ:雲米公式

2.多彩な製品ラインアップとオフライン店舗による成長

雲米ブランドの売上高の伸びは、急速な製品ラインアップの拡大とオフライン戦略によるものかもしれない。

雲米の通販アプリ「雲米商場」の販売商品の中で、雲米の自社ブランドは大小の家電、スマートハードウエアなど商品カテゴリは30を超え、SKUの総数は170を超えており、テレビを除くほぼ全ての一般的電化製品を網羅している。

豊富な製品ラインアップは、雲米のオフライン体験型店舗とセットになっている。決算報告によると、2019年末時点で雲米の体験型店舗は1700店あり、オンライン販売を主とするほかのシャオミ系企業とは販売モデルが異なっている。

しかし、雲米はこれまでにカテゴリ別の売上高およびオンライン・オフラインチャネルの売上比率を詳細には公表していない。

高成長下の3つの懸念点

新型コロナウイルスの影響により、雲米の好成長も2020年第1四半期に足踏みを余儀なくされ、同期の売上高は2019年の第1四半期と同程度になる見込みだ。

さらに雲米の今後の成長に関しては3つの懸念点がある。

1.売上総利益率

高成長を維持すると同時に雲米は業務拡大に対する代価も支払っている。2019年、雲米全体の売上総利益率は23.3%まで下がり、データを公表し始めて以来、最低の水準となった。

2019年の決算報告では、例年通り事業別の売上総利益率は公表していないが、2016年~2018年の推移から見ると、その期間に拡充されたスマートキッチン製品やその他のスマート製品が売上総利益率を下げる要因となっているようだ。

雲米自身も、売上総利益率低下の主因は業務と製品の組み合わせが変化したことにあると説明している。

作成:36Kr  データ:雲米公式
作成:36Kr  データ:企業公式、i問財

今後、雲米の売上総利益率はさらに低下するリスクがある。2019年第4四半期には抱き合わせ販売や販促キャンペーンの影響により、売上総利益率は19.9%となり、上場以来最低の水準を記録した。

2.開発費用

粗利益率が低いことが雲米の研究開発費用に影響するかどうかが2つ目の懸念点だ。

しかし、その心配はない。なぜなら雲米の研究開発費用はそもそも多くないからだ。
決算報告によると雲米の2019年の研究開発費用は2億元(約30億円)だった。

作成:36Kr  データ:企業公式
作成:36Kr  データ:雲米公式

雲米は販売駆動型の企業で、販売費用をかけてブランドや製品をプロモーションし、ECプラットフォームと体験型実店舗を通じて販売を行う。製品の宣伝では、スマート化、IoT、デザインなどの面を強調している。

3.スマート家電市場での優位性

市場調査企業「中怡康(China Market Monitor)」によると、2019年のスマート家電市場の全体規模は1937億元(約2兆9000億円)を超え、製品の平均価格は前年比12%下落し2771元(約4万2000円)となった。

製品カテゴリ別では、テレビのスマート化率が最も高く、97.7%に達したが、それ以外には空気清浄機とエアコンのスマート化率が50%程度、7つの製品カテゴリではスマート化率が10%を下回った。

作成:36Kr
作成:36Kr

雲米はスマート化が遅れている製品カテゴリに着手し、スマート化やIoTなどの機能を売りにして他の従来型製品に対抗すれば、ブランド力や技術力の弱さを補って市場シェアを増やせる可能性がある。

しかし、シャオミや既存の大手家電メーカーがこぞってスマート家電を手掛け始めたら、研究開発費が少なく製品の種類の多さだけが売りの雲米に勝ち目はあるだろうか。

※アイキャッチ写真:雲米公式サイトより

(翻訳・普洱)

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