アリババ支配のクラウド市場にバイトダンスも参入、差別化できるかが鍵

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TikTokなど大人気アプリを展開しているバイトダンス(字節跳動」が「火山引擎」というクラウドプラットフォームをローンチしたことがこのほどわかった。アドレスはwww.byteoc.com。同社は2019年11月にSNSアプリWeChat内に「字節雲(バイトクラウド)」という公式アカウントを開設し、同名のクラウドサービスの内部テストを行っていた。今年2月に招待制のオープンテストを行い、さらに5月11日に「北京火山引擎科技有限公司」を設立。「字節雲」を「火山引擎」に名称変更し正式に運営する運びとなった。

バイトダンス傘下のビジネスツール「飛書(FEISHU、海外版は「Lark」)」と画像共有プラットフォームの「図虫(Tuchong)」は昨年にそれぞれクラウドサービスをローンチしたが、いずれも小規模なものであった。今後は「火山引擎」が字節跳動のクラウドサービスの主役に躍り出るだろう

「火山引擎」にログイン後のトップページはコントロールパネルで、動画配信、動画ライブ配信、企業ライブ配信、リアルタイム通信、ImageX画像サービス、ソフトウェアファクトリー、RM(Reliable Messaging)サービス、アクセス権限設定、ビデオ会議の9のサービスが利用可能だ。企業または個人が実名登録しなければ使用できない機能も一部ある。

トップページには飛書のウィンドウもあり、そこから問い合わせをすることができる。サービス利用料は「火山引擎」の個人ページで確認する仕組みだ。

5G時代の到来、企業のデジタル・トランスフォーメーションの進展などにより、中国のクラウドサービス市場は急成長すると予想されている。ICT産業の政府系シンクタンク「中国信息通信研究院(CAICT)」が発表した「クラウド・コンピューティング発展白書(2018)」によると、中国のパブリッククラウド市場は50%以上の年成長率を保っており、少なくとも今後3年間は勢いが衰えないという。

また、IT調査会社の「IDC」が発表した「中国パブリッククラウドサービス市場追跡 (2019第3四半期)」によれば、2019年第3四半期時点の中国のパブリッククラウドIaaS(Infrastructure as a Service)市場は前年同期比62.2%増の144.6億元(約2200億円)に達する。上位3社はアリババ、テンセント、「金山(KINGSOFT)」のクラウドサービスだ。それを追いかけるのが「中国電信(チャイナテレコム)」、ファーウェイ、アマゾンのAWSとなっている。

IDCの予測では、2019〜2023年の中国のパブリッククラウドIaaSの年平均成長率は46%で、2023年の市場規模は2087億元(約3兆円)に達するという。

これだけ大きな市場に参入できることは、字節跳動にとっても大きなチャンスだが、見通しは明るいものとはいえない。トップ集団であるアリババ、テンセント、金山のシェアを奪うのは難しく、バイドゥ(百度)やEC大手の「京東(JD.com)」、生活関連サービスの「美団(MEITUAN)」、ライドシェア大手の「滴滴(DiDi)」もクラウドサービスを打ち出しており、強力なライバルがひしめき合っているのだ。現状の「火山引擎」の機能は他社と大差なく、顧客が敢えてサービスを開始したばかりの「火山引擎」を選ぶ理由がない。今後どのように自社のサービスを差別化するかが、バイトダンスの課題になるだろう。

作者:深響(Wechat ID :tech618)、陳橋輝

(翻訳:小六)

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