中国版テスラ「NIO」、2020年Q1純損失は35%縮小 国内で上場の可能性も示唆

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中国版テスラと言われる中国の新興EVメーカー「NIO(蔚来汽車)」は5月28日、2020年第1四半期(1~3月)の決算を発表した。売上高は前年同期比15.9%減の13億7200万元(約210億円)、純損失は同35.5%減の16億9180万元(約259億円)で、単四半期の損失額としては上場以来最低となった。2020年3月31日時点の現金および現金同等物、制限付き現金・預金、短期投資は合計23億9740万元(約367億円)だった。

2018年Q3から2020年Q1の売上高と損失額の推移 作図:未来汽車日報

依然として営業赤字、株主資本がマイナスの状態であるものの、NIOは手元にある運営資金や中国工場への投資資金、融資限度額を考慮した結果、向こう1年間は十分に経営できると判断した。

NIOの李斌CEOは、中国安徽省合肥市に生産拠点を建設するという同社のプロジェクトが順調に進んでおり、2020年6月末までには引き渡しできるとの見方を示した。決算報告カンファレンスコールでは中国市場への上場の可能性も示唆している。

かつて自らの強みを「崖っぷちからはい上がれること」と評した李CEOだが、今回は財政難で瀕死の状態だったNIOを死の淵から引き上げた格好だ。しかし一時的に資金難を抜け出したとはいえ、今後プラス成長への波に乗れるかどうかが重要になってくる。

コスト削減の「減量計画」が奏功

NIOは昨年第3四半期から「減量計画」に取り組んでおり、今四半期に入ってその効果が現れ始めた。

今四半期は新型コロナウイルス流行の影響で納車台数は前年同期比3.8%減の3838台、売上高は同18.2%減の12億5560万元(約192億円)となり、粗利率や総売上高もそれに伴い減少したが、三大支出(研究開発費、販売費、管理費)と営業損失はいくらか縮小している。

コロナ流行により開発・マーケティング活動が減少したことと、組織最適化のための一時費用が減ったことにより、今四半期の研究開発費は前年同期比51.6%減少となる5億2240万元(約80億円)、販売および管理費は同35.7%減少となる8億4830万元(約130億円)に圧縮された。

「2020年第1四半期に全体効率の向上が見られ、とても満足している」と奉瑋CFOは語る。さらにコロナ流行期間中のコストコントロールやそれまでの運営効率向上の努力が奏功して、営業損失は前期比44.4%減少の15億7030万元(約240億円)に縮小したことを明らかにした。

李CEOは5月17日のライブ配信で、現在の従業員数が昨年1月より25%近く少ない約7500人であることを明かしている。同社の2018年の人件費が約41億元(約626億円)だったことからすると、人件費だけでも9840万元(約15億円)ほどが削減された計算だ。

販売チャネルに関しても昨年第3四半期から調整を行っている。建設コストと維持費のかさむイベント型ショールーム「NIO House」からコストを抑えた「NIO Space」へとシフトしている。

コスト削減の一方で納車台数を伸ばすことにも力を入れている。第2四半期の納車台数は前年同期比170%前後の増加となる9500~1万台を見込んでおり、売上高は同130%ほど増加した33億6840万元(約515億円)~35億3420万元(約540億円)となる見通し。

コスト削減と収益性向上に努めたことで、翌第2四半期には完成車の粗利率が5%を超え、全体粗利率も3%以上になると李CEOは予測する。今四半期の粗利率は前期より低下して-12.2%だった。

2018年Q3から2020年Q1の粗利率と負債構成比率の推移 作図:未来汽車日報

危機は脱したが、課題は尽きない

「NIOの中国本部について言えば、中国市場で上場の可能性もありうる」。李CEOは決算報告カンファレンスコールで、状況を総合的に判断したうえで上場に向けた計画を立てていくと語った。

NIOと枠組協定を結んでいる合肥市政府はこれより前に中国版ツイッター「Weibo」で、NIO中国本部が2025年までにハイテク企業向け市場「科創板(スター・マーケット)」上場を計画していることに言及している。

NIO Chinaの株式構造 画像:中金公司研究部

4月29日に調印された投資協議によれば、NIOは中国本部に現金42億6000万元(約650億円)に加え、完成車の開発から製造販売までを含むコア事業と関連資産177億7000万元(約2715億円)相当を投資し、75.9%の株式を保有するという。合肥市政府は中国本部に70億元(約1070億円)を出資し、戦略的投資家が合わせて24.1%の株式を保有することになる。

奉CFOは「これまでの転換社債で調達した現金を中国本部への投資に充てる」と語り、今後も中国本部への投資を続けられるよう資金調達を進めていく考えを示した。

生きるか死ぬかの試練を無事乗り越えたNIOだが、予断を許さない状況には変わりない。販売台数の伸びを保てるか、中国本部に必要な投資を行えるだけの資金を調達できるか、これがNIOに突きつけられた新たな課題である。
(翻訳・畠中裕子)

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