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中国ではいったん下火になったトイレットペーパーのシェアリングに代る新サービスとして、非接触型の「スマートトイレットペーパー端末」が注目を集め始めた。北京の新興企業「小趣智品科技(Xiaoqu Zhipin Technology)」が展開する「小趣智衛」ブランドのオフィス向けサービスで、スマートフォンのアプリを使えば空いているトイレを検索できるだけでなく、トイレットペーパーやペーパータオルが自動的に一定量出てくるほか、個室のカギも手を触れずにかけられる。新型コロナウイルス感染防止のための「非接触」サービス人気を背景にしているが、紙の無駄遣いが避けられるため、導入したオフィスビルの側にとってもコスト削減の効果がある。
中国のシェアリングエコノミーの世界ではティッシュペーパーがユーザー獲得の見込める商材として注目を浴びたことがある。公衆トイレに無料設置してあるトイレットペーパーを持ち去るなどの被害が横行していたことから、アプリを持つ登録ユーザーだけに無料で紙を提供するサービスだ。ディスペンサー(自動供給機)にアプリのQRコードをかざせば紙が出てくる仕組みになっている。しかし、中国では同種のサービスが乱立、収益性が見込めず最終的には下火となった。
とはいえ、商業空間のトイレは1000億元(約1兆5000億円)クラスの市場規模を有している。ビル管理業界に関するある報告書によると、中国における非住宅分野のビル管理市場は1兆2000億元(約18兆円)規模となっており、そのうち清掃サービスが44%を占めている。清掃サービスで70%を占めるのがトイレ清掃で、これだけでも市場規模はおよそ3600億元(約5兆4300億円)となる。中国交通部が2019年に発表した統計を参考に、外出・移動する人の数と1人当たりの平均的なトイレットペーパーの使用量をもとに計算すると、商業空間で使用されるトイレットペーパーは約400億元(約6000億円)に上るのだ。
節約もでき衛生的なトイレ備品
2017年に創業した小趣智品科技も過去にティッシュペーパーのシェアリングを手がけたことがあるが、2018年の旧正月期に事業継続を断念している。その後はトイレットペーパーのディスペンサーなどトイレ関連用品を扱う「小趣智衛」ブランドとして鞍替えし、顧客も一般消費者から企業に移した。製品は主にRFID(近距離無線通信を用いた自動認識)技術を導入した消耗品、スマート端末、各端末を取りまとめるクラウドプラットフォームの三つで構成される。スマート端末に当たる製品はペーパータオルやハンドソープ、トイレットペーパーのディスペンサーやトイレのスマートロック、空気測定器、空気清浄機などだ。
トイレットペーパーを使う際の二次接触を回避するため、製品は設計初期からセンサーによる非接触型と決め、ペーパーが必要な長さだけ自動で押し出され、カットされる仕様にした。創業者でCEOの李崢氏によると、紙質の柔らかいペーパーが詰まらずにスムーズに押し出せるようにすることが製品開発上の一つの大きな壁で、1億回以上の試験を繰り返したという。完成した製品は50万回の使用に耐える特許品のブレードを使っている。また、電源に接続すればすぐに使える設計を心がけており、設置時には壁に穴を開けたり電線を通したりする必要はない。ペーパーディスペンサーの場合はフル充電時の連続使用時間は14日間となっている。
利用者にとってはアプリでトイレの空き室を検索できることや手を差し出すだけでトイレットペーパーが受け取れること、一部のトイレでは使用後に自動で個室の洗浄・消毒を行ってくれることなどが利点となる。
事業のターゲットは主にビルオーナーと管理会社で、消耗品とスマート端末をセットで提供する。価格は消耗品の使用量に応じて段階的に設定される。主な収益源はRFIDタグを付けた消耗品の販売によるものだ。
開発チームの計算によると、同社のペーパーディスペンサーを導入するとトイレットペーパーの使用量は約50%、ペーパータオルは約40%節約できる。ペーパーディスペンサーの量産化が実現すれば、利用者が多くペーパーの消費量が多い設置場所(1日に1ロール以上のトイレットペーパーを消費する場所)の場合、設備投入から約3~5カ月で導入資金を回収でき、全体平均でも約半年で回収できるという。
ターゲットのトイレは2000万カ所
顧客をスマート化導入に動かす最もわかりやすい売り文句は消耗品の節約だが、清掃・メンテナンス担当者の業務様式を改善できる点にも大きな意義がある。
管理担当者側ではオンライン管理システムを通じて清掃や消耗品の状況を随時把握できる。清掃員の人件費を省くことができ、なおかつ一層高い衛生基準を満たすこともできる。李CEOは、需要の高まりに応じて製品機能を洗浄から除菌にまで拡張するという将来の展望を語る。家庭向け製品も想定しているという。
中国全土の商業空間には2000万のトイレがあるといわれる。そのうち1日に1ロール以上のトイレットペーパーを消費するトイレは400万~500万あると推定され、小趣智衛ブランドは製品の普及を急ぎたい考えだ。昨年10月に試験導入されて以来、これまでに1000台以上のペーパーディスペンサーを設置してきたが、新型コロナウィルスによりそのペースは明らかに上がっている。
現在、シリーズAでの資金調達を進め、商業施設やオフィスビル、交通ターミナル、観光地などへの設置を重点的に行っていく計画で、年内に5万台のペーパーディスペンサーを設置させる予定だ。設備や消耗品の生産能力を確保するため、すでに台湾のフォックスコン(富士康)から戦略的出資を受けており、最大で月数万台の生産を可能にしている。
小趣智衛は北京本社のほかに南京、上海にも拠点を設ける。中核メンバーとしてさまざまなキャリアを持つ人材が集まっており、年間製造台数数十万台のスマート機器の製造管理責任者、ローンチ・ビークル(人工衛星などの輸送ロケット)の技術ディレクター、モバイルインターネット業界での起業経験者などが居並ぶ。
(翻訳・愛玉、編集・後藤)
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