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新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、小売業界における投資と資金調達の流れを変えた。
タートアップを大手企業とともに支援するグローバル・ベンチャーキャピタル及びアクセラレーターの米「Plug And Play」の中国支社常務副総裁兼マネージングパートナーである趙晨氏は「コロナ後、投資は回復しつつある。新しいリテールテック(小売+テクノロジー)のテスト運用は今年既に始まっている。Plug And Playも含めて多くの投資機関が頻繁にプロジェクトに接触している」と語る。
プロダクト・プレイスメントによる広告のパーソナル化
進化したビジュアルレンダリング技術によりプロダクト・プレイスメント(作品中にブランドや商品を見える形で登場させる広告手法)にイノベーションをもたらした企業がある。その技術を使えば、同じ映画、同じシーンに登場するミネラルウォーターのブランドを、再生チャネルごとに完全に変えられるのだ。
動画サイトで映画を見るとき、劇中に登場する製品は、視聴者がちょっと前に「タオバオ(淘宝網)」や「京東(JD.com)」などのショッピングサイトで閲覧していた商品かもしれない。これは、レンダリング技術をベースにビッグデータとAI(人工知能)を活用することで得られる効果だ。
このイノベーションを支えるのはビッグデータ、バックエンドシステムにおける商品モデリング、リアルタイムでのレンダリング技術、レンダリングにおけるAI活用の面での技術的進歩だ。
この種の技術は、オーソドックスな映画やテレビドラマに非常に適している。優れた作品は、劇中に自社商品を露出させるため進んで広告費を払う企業を引き付けてやまない。趙副総裁によれば、これらの技術はまだテスト段階にあるとはいえ、業界内の意気込みは高く、今後、動画サイトやオンラインコンテンツプラットフォーム上での各種ビジネスに転換できる可能性があるという。
広告の可能性広げる新技術
現在では新たなLEDディスプレイ技術が開発されたことにより、同じピクセルが異なる方向に異なる色を投影できる、つまり同一ディスプレイが見る角度で全く違う画像を投影できるようになった。この革新的なプロジェクトは、カリフォルニア工科大学の起業家チームが4年かけて研究開発したもので、業界ではこうしたものをスマートディスプレイと称されている。
このスマートディスプレイ技術にビッグデータやAIを加えれば、活用の可能性は無限に広がる。
まず、広告用ディスプレイとカメラを組み合わせることにより、顧客の入店から商品選び、購入、支払いまでの一連の動線を記録し、顧客の現在の消費ニーズを把握したうえで、ビッグデータとAIに基づいた最適な広告や関連商品の割引情報などもリアルタイムで表示できる。これにより、購買に至る意思決定プロセスを加速させる。
次に、スマートディスプレイを車のリアガラスやサイドガラス、ルーフLEDスクリーンなどのあらゆる場所に配置し、流動的な車内広告スクリーンとして使用できる。位置情報とその地域のビッグデータに基づき広告内容を変えていき、周辺ユーザーとのインタラクティビティも提供する。こうして従来のオフラインメディアをより柔軟で効果の高いものにする。
さらに、リビングルームにスマートディスプレイを設置すれば、ライブ配信と組み合わせ、大量のデータ受信とフィードバックを行い、ユーザーの購買意思決定プロセスを加速できるだろう。
体験の場の拡張
eコマースが成熟してきたとはいえ、オフラインでの消費体験は未来の小売でも依然重要だ。限られたスペースでより多くのバーチャル体験を提供できるVR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)などはビジネス分野にも定着してきている。
今ではVRデバイスを装着せずに裸眼で360°立体画像を見せられる技術もあり、顧客は4m×4mのスペースで、VRでの不動産の内見や大規模実写ゲームのプレイが可能だ。この技術は、既に一部のショッピングモールなどでテスト運用が始まっている。
この種のVR技術は限られたスペースを無限に拡張できるため、商業分野、特に不動産販売、ブランドのポップアップストア、工場のリモートモニタリングや管理、オフラインでのインタラクティブゲームに適している。
さらに、あるVRベンチャーは大手ラグジュアリーブランドのディオールと提携し、ショッピングモールなどでQRコードをスキャンすると、VRによる体験が可能な技術を開発、購買率向上に貢献している。これらの技術はWeChatミニプログラムをベースにしており、新製品の試着などを通してVR技術を一般ユーザーに直結させている。
趙副総裁は、小売業界の起業家が、新しい業界と投資の動向をキャッチするにはどうしたら良いかについても自身の考えを語ってくれた。
「技術イノベーションの多くはビジネスモデルのイノベーションの周辺で遂げられる。例えば、今流行のMCN(マルチチャンネルネットワーク)やライブ配信などがそうだ。Plug And Playが投資するのは、その企業や産業について把握し、データ、新しいインテリジェント分析および必要な技術を根拠とし、その技術を提供できる企業である。
今後イノベーションが起こりやすいのは、AI、ビッグデータ、ソーシャルネットワーキング、5G、IoT関連分野だろう。デジタルマーケティングやスマート広告関連の技術などでは、より正確で効果の高いのものが求められる。こうしたものは動向を読む上での非常に重要な指標となり得る」
作者:新零售商業評論(Wecha ID:xinlingshou1001)、章蔚玮
(翻訳・永野倫子)
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