中国独自のGPS「北斗」が完成 5GやAIと組み合わせてスマホや自動運転への活用進む

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6月23日、中国の衛星測位システム「北斗3号」を構成する最後のグローバルネットワーク衛星が打ち上げに成功した。同衛星は55基目となる北斗測位衛星で、打ち上げ後は順調に軌道に投入された。これで北斗3号を構成する衛星30基が全て所定の位置についたことになる。

「北斗衛星測位システム(BDS,BeiDou Navigation Satellite System)」は中国が独自に開発・運用する衛星測位システムで、米国のGPS、ロシアのGLONASS、欧州のGalileoとともに世界の四大衛星測位システムと呼ばれている。完成した北斗システムは、国家の重要な宇宙インフラとして高精度の位置情報やナビゲーションなどのサービスを提供する。

衛星測位システムと聞いて多くの人がまず思い浮かべるのはGPSだろう。しかし中国のスマートフォンの70%は北斗システムのサービスが活用されているとの報道もあるとおり、北斗システムはすでに人々の生活の隅々にまで浸透しているのだ。そして北斗システムの背後には3400億元(約5兆2000億円)もの巨大な産業があり、毎年20%ほどのペースで成長を続けることが見込まれている。

北斗システムの背後にある巨大市場

宇宙インフラというステージは整った。そのステージに登場するのは北斗システム関連産業だ。

中国企業情報サイト「企査査」によれば、2013年以降に衛星測位に関連した企業の登記数はネズミ算式に増加しているという。今年6月の時点で、存続状態にある衛星測位の関連企業は全国で7500社に上る。

ここ10年における衛星測位関連企業の登記状況

北斗システム関連産業を上流、中流、下流で分類すると、北斗システムの背後に巨大な市場が広がっていることがよく分かる。関連産業は、上流の基礎データ、チップやアンテナなどの部品、GNSS受信機と電子地図を組み合わせるソフトウェア、中流のシステムインテグレーションの研究・生産・販売、そして下流の技術や製品の活用、運用サービスに大別できる。

2015~2023年の中国衛星測位・位置情報サービス産業の市場別評価額(単位:億元)

データから分かるのは、北斗システム関連産業の中で活用や運用を担う下流産業が今後、最も大きな比率を占めるようになり、急成長を遂げるということだ。現在、北斗システムは通信やカーナビゲーション、情報サービス、スマートシティー、測量などの分野で幅広く応用され始めている。

中国の衛星測位サービス関連企業の応用分野

北斗システムの中心機能は位置情報、ナビゲーション、時刻配信だ。北斗システムはインフラであり、多くの先端技術を活用して初めて全天候、24時間、高精度というサービスの特性を発揮することができる。そして最終的には応用を進める下流産業に、より良いサービスを提供することにつながる。

中国信息通信研究院(CAICT)が発表した「北斗システムの測位技術および産業発展白書(2019年)」によると、地上型衛星航法補強システムや5G、IoT、モバイルインターネット、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、AIなどの先端技術を衛星測位技術と融合させることで、北斗システムはスマートシティー、ウエアラブルデバイス、スマート製造、自動運転など多くの分野で実用化されており、今後も活用分野を広げていくという。

一例として、北斗システムのナビゲーション機能を搭載した無人トラクターは、データや方向を入力するだけで正確に作業を行うことができる。このような農業分野での活用は、すでに北京市や上海市、黒竜江省、遼寧省、山西省、湖北省、江蘇省、浙江省、新疆ウイグル自治区などで始まっている。自家用車の自動運転に関してはサブメートル級、場合によってはセンチメートル級の精度が求められるため、今後は5G基地局による測位精度のアシストや北斗の地上型衛星航法補強システムを活用することで、コネクテッドカーに必要な精度と可用性を備えた位置情報サービスを提供できるようになるとしている。

家庭用の電子機器においても実用が進んでいる。2019年第3四半期までの時点で、中国本土で発売された位置情報サービス付きの携帯電話414機種のうち、4Gと北斗システムのサービスを利用しているものが273機種、5Gと同サービスを利用しているものが16機種あり、合わせて全体の70%を占めている。

現在は、北斗2号システムと北斗3号システムが共同で位置情報サービスを提供しているが、2020年以降は北斗3号システムをメインにサービス提供するよう移行していく計画だという。今後は、2035年までに北斗システムを中心とした、より高度でユビキタスな衛星測位(PNT)システムを構築することを目指している。
(翻訳・畠中裕子)

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