2億7200万の機種に接続可能、アリババのAIアシスタントが敷く戦略

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上海市政府が主催する「2020世界人工知能大会(WAIC2020)」で10日、アリババグループのVPを務める庫偉氏が、同社のAIアシスタント「天猫精霊(Tmall Genie)」事業について言及した。今年は100億元(約1500億円)の予算を投入し、AIとIoTによるコンテンツエコシステムを構築するとともに、同じグループ内の「阿里雲IoT(ALIBABA CLOUD IOT)」と共同でAI・IoTを手がけるイノベーションセンターを設立する考えを明らかにした。同氏はアリババ天猫精霊事業部を統括する人物だ。

アリババグループのAI・IoT事業は今後、デバイスからプラットフォームへ焦点を移行していく方針が明らかになった。

アリババは競合のプラットフォームと比較して販路などで明らかな強みがある。庫氏は「我々が持つ個人・法人の全リソースを駆使して顧客へのサービスを提供する。我々の連携力と併せてプロトコルチップセット、PaaSなどの技術サービスを活用しながら、B2B取引プラットフォーム『1688.com』およびB2C取引プラットフォーム『天猫(Tmalll)』の提携企業を動員して顧客に対し販路開拓支援を行っていく。提携する商品は検索連動広告、レコメンデーションを用いた販促、オフライン販路などを経由して適切なターゲットに届くようになっている」と説明する。また、すでに始動している「天猫精霊IoTオープンプラットフォーム(AliGenie.com)」は、外部企業がAIやIoTなどを導入する際に活用されているという。

「これまでの積み重ねにより、我々はスマート家電1台の開発費を1000万元(約1億5000万円)から50万元(約750万円)程度まで圧縮できるようになった。中国の電化製品は2025年までには7割がスマート化されると考えている。これからの電子機器はスマート化が基本となり、それ以外の機器は淘汰されていくだろう」

天猫精霊は今年5月、スマートホームのサブブランド「天猫精霊妙物(Tmall Genie Miaowu)」をローンチした。各家電大手との協業で高度にカスタマイズできるスマート家電を提供する。今年の「618セール(中国で毎年恒例の大規模ネット通販キャンペーンの一つ)」では給湯器、エアコン、オーブントースター、加湿器、マッサージ器、ルームランナー、調乳器など50余りの新製品が投入された。

天猫精霊(Tmall Genie)

このようなIoTプラットフォームの構築を試みているのはアリババ一社だけではない。豊富なノウハウを持つ従来型の家電メーカーも同じだ。彼らと競い合うにあたり、アリババのようなインターネット企業は何で勝負してくるだろうか。

天猫精霊で製品やハードウェアの開発を統括する茹憶氏は、「既存の家電メーカーは多くが『通信接続』の実現を目指している。これは各機器をWiFiで繋いでスマートホームを実現するアプローチであり、遠隔操作を実現することが目的だ。しかし、我々が取り組んでいるのはそれぞれの機器がクラウド上の『ブレイン』に接続し、一つのシナリオを形成することだ。この『ブレイン』はAIを搭載し、理解力、実行力、判断力を備えている」と説明する。

「現時点で想定されている機器間通信は、単純に機器の操作を行うためだけのものだ。しかし真のスマート化は一定の理解力や判断力を伴うべきで、そうして初めてシナリオのスマート化が実現する」。茹氏はその一例としてエアコンの温度設定を挙げ、仮に屋外の気温が31℃だった場合、天猫精霊は通常は室温設定24℃を推奨するが、睡眠時間帯に入ると睡眠に適した26℃まで自動で設定を上げてくれるという。

アリババの公式データによると、天猫精霊が接続できる機器は1100以上のメーカーの2億7200万機種。6月末時点で天猫精霊のディスプレイに表示できるミニプログラム(ミニアプリ)は170万以上に上る。IT専門調査会社IDCによると、天猫精霊は2017~2019年にかけ中国国内で販売台数最多のAIアシスタントであり、累計2500万台を売り上げている。

今年上半期は新型コロナウィルスの影響を被ったスマートスピーカー市場だが、IDC中国が5月に発表した最新の調査結果によると、今年1~4月にかけて中国では1056万台のスマートスピーカーが売れた。前年同期比14.7%減という数字だが、アリババによれば、販売数1位は依然として天猫精霊だったという。
(翻訳・愛玉)

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