中国、IoT活用のスマート水道メーター 遠隔検針可能で漏水率の低下も

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

中国、IoT活用のスマート水道メーター 遠隔検針可能で漏水率の低下も

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

IoT技術を活用したスマート水道事業を展開するスタートアップ企業「杭州莱宸科技(Hanzhou LAISON Technology)」(以下、莱宸科技)は今年、アフリカや東南アジアといった従来から手掛ける海外市場を主力にしながらも、中国市場でも攻勢に出る方針だ。まだ普及率30%未満のスマート水道メーター市場に安価な独自製品を投入、まだスマート化が進んでいない地方都市などでシェアを獲得することを狙っている。

通信技術を利用して遠隔操作で水道の利用量をリアルタイムで把握するスマート水道メーターは、毎月の検針作業を省力化できるだけでなく、漏水などの異常をすぐに検知できるため、水道事業の大幅な効率化につながる。中国でも現在、従来の機械式水道メーターからスマート水道メーターへの切り替えが進み始めており、リサーチ機関「前瞻産業研究院(Qianzhan Industry Research Institute)」の2018年から19年までの統計では、スマート水道メーターの導入率は全体の30%未満となった。2013年以降、スマート水道事業や水資源管理などに関する政策が集中的に打ち出されたことで市場の注目度が高まったことに加え、ここ数年のIoTやAIなどの普及が、水道メーターの世代交代を後押ししている。従来型メーターは今なお約7割を占めるだけに、今後、スマートメーターへの更新余地は非常に大きい。

海外での事業展開

創業者の鄭楽進氏によると莱宸科技は2012年4月に設立、14年には第1世代のスマート水道メーターの開発を完了した。当初はアフリカや東南アジアを中心とする海外市場向けに製品を開発。鄭氏によると、上記エリアの国々では長い間、水道メーターによる水道使用量計測と料金計算が困難だったことに加え、水道管の漏水率が40~60%に達していた。水道管をリアルタイムにモニタリングする機能がないために迅速かつ有効な検査もできず、利用者は料金を支払う際にはじめて異常に気付いていたという。

欧米諸国ではすでに超音波スマート水道メーターの普及が進んでいたが、価格が高すぎた。そこで、同社は国際的な前払い式メーターの基準「The Standard Transfer Specification(STS )」に基づく遠隔検針可能な前払い式スマート水道メーターを独自開発することとした。

2年の開発期間をかけて完成した莱宸科技の製品は、漏水警報を発することが可能な水道メーターとエリア管理システムを組み合わせることで漏水率を20%以下に抑えることを目標とし、前払い方式による料金徴収で水道会社のキャッシュフローを大幅に改善することを可能にした。価格は欧州メーカーの製品よりも大幅に抑えられている。現在は20カ国余りで販売されており、累計出荷台数は50万台に上る。中国国外での売上高は2015年から19年まで倍々ペースで伸びており、同社の売上高の大部分を占めている。

中国市場進出に向けて

中国では、ここ2年でスマート水道事業が拡大すると同時に、IoT技術なども整備され、スマート水道メーターの普及が進む可能性が高まった。また、水道会社の統合が進み、スマート水道ネットワークの建設も加速している。これらの状況を踏まえ、莱宸科技は今年、中国市場に進出することを決めた。

莱宸科技は、海外市場における売上高と純利益の着実な伸びを背景に、中国向け製品の開発を進めている。鄭氏は、スマート水道事業の最終目標はデジタル化された水道ネットワークを構築し、水道会社の運営効率を向上させることだと指摘。これを受け、同社は中国向けの製品として、IoT技術やIoT向けの通信規格「NB-IoT」に基づくスマート水道事業向けソリューションを提供していく方針だという。

同社の主軸製品は価格設定に段階性を持たせたスマート水道メーターで、近距離無線通信「ブルートゥース」などの技術と自社開発したシステムを組み合わせ、リアルタイムでの遠隔モニタリングや異常時の警報出力、データ分析などの機能を水道会社向けに提供していく。

鄭氏は、中国ではすでに「寧波水表(Ningbo Water Meter)」や「三川智慧(Sanchuan Wisdom Technology)」などの上場企業が、経済的に発達した地区での大型事業を押さえているため、莱宸科技は地方都市で事業を展開する中規模企業をターゲットとする方針を明らかにしている。また、試験事業段階での客単価は数十万元(数百万円)から100万元(約1500万円)程度だが、市場への正式参入後は、中規模顧客の客単価が数千万元(数億円)になるとの見通しを示している。

莱宸科技の売上高は5年連続で70%超の成長率を記録し、現在の年間売上高は5000万元(約7億5000万円)以上、純利益も1000万元(約1億5000万円)以上となっている。今年上半期は新型コロナウイルス感染症の流行が海外市場に大きな影響を与えたものの、成約額は約12%の伸びを実現し、下半期には成長率も回復する見通しだ。

莱宸科技が海外で築いた独自のニッチ市場は、株式上場を目指す同社の着実な業績向上を支えていくだろう。同社は、中国国内の投資機関との意思疎通を深めていく方針も示している。

(翻訳・田村広子、編集・後藤)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録