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米国とは異なる路線へ 中国のスマートモビリティが主軸とする「路車協調」

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スマートモビリティ分野の発展において、米中が異なる選択を下したのは2019年のことだ。

米国は自動運転の開発の軸を「車両単体」に置いている。車両に付随する自動運転技術は先進的だ。一方の中国は、ウェイモやGMクルーズといった米国のトップ企業に追いつくには2~3年はかかる。しかし、開発方針を「路車協調」に転換すれば逆転も可能かもしれない。中国では昨年6月、次世代通信規格5Gの営業許可が各通信キャリアに下りたため、路車協調システムを推進する条件が整ったといえる。

「路車協調」が中国自動運転産業の成否を握る

中国が打ち出そうとしている「路車協調」には安全、効率、コスト、実用化と四つの強みがある。

安全面から考えられるメリットは二つだ。

第一に、路車協調システムでは可視領域外でもセンシングが可能だ。車両では検知できない道路情報を路側装置が把握して正確に車両に伝え、死角を減らす。第二に、複合的な意思決定ができる。路側装置は商用電源を使用するため、車載装置より強力な演算装置を搭載している。これによって車両の意思決定能力を大々的に支援するのだ。

商用電源は車両の内燃機関よりもはるかに安く電力を確保できるため、長期的にみれば車両単体よりも路車協調システムを活用したスマートモビリティの方がコストパフォーマンスに優れている。また、路側装置の演算ユニットは光ケーブルを通じて都市全体を統括する大規模なコンピューティングセンターに接続できる。

効率面でも路車協調システムは優れている。

車両単体で自動運転を実現するには車載コンピューターが頼りとなるが、これでは個別の車両の最適化しか図れず、交通渋滞の原因になる。車載AIの深層学習だけでは渋滞の問題は解決できないのだ。しかし路車協調システムを用いたソリューションでは、一つのコンピューティングセンターが交通網全体の統括を行うため、渋滞も根本的に解決でき、効率を大幅に向上できる。無人(自動運転)車両と有人車両が混在する環境下で路車協調システムを採用すると渋滞を30~40%解消できる計算になる。全車両が無人化すれば交通渋滞そのものがなくなるという。

コスト面でも、路車協調システムは中国社会に適したソリューションといえる。

中国には485万キロにおよぶ車道が存在し、3億台の車両が走っている。1台当たり1万5000元(約23万円)のコストを節約できれば、車道1キロ毎に100万元(約1500万円)の予算を割いて改造を加えられることになる。さらに、車道をスマート化させるためにかかる費用は、計算上は1キロ当たり100万元以下で済むと考えられている。

路車協調システムの実現には問題点もある。とくに道路工事費では個々の車両改造費を大幅に上回る莫大な初期費用がかかる。民間企業ではとても負担できない額であり、政府の介入なしには成し得ない。

しかし、安全、効率、コストの三点から長い目でみると、路車協調システムが優れていることがわかるだろう。

将来は未知数だが政策の後押しは十分

路車協調システムには車両、車道、クラウドの連携が必要だ。交通網にはセンサーや路側装置がくまなく設置され、中央交通管制システムが車両や交通施設を統率し、交通網全体を俯瞰する。こうした交通システムは巨大かつ高度なインダストリアルインターネットといえる。

こうした交通網を形成する「点」である通信設備と、「線」である路側装置に求められる処理能力やストレージの大きさ、またこれらをエリア単位で束ねる演算装置との連携方法や転送すべきデータの種類、そこからさらに中央交通管制システムと共有されるべきデータ量などの詳細について、明確な答えはまだ出ていない。路側装置が取得したオリジナルデータはそのまま車両に伝えるべきなのか、あるいはフィルタリング後のデータを伝えるべきか、路側装置をエリアごとに束ねる演算装置は1台でいくつの路側装置を管理すべきか、またどれだけのスペックを持たせるべきかなど、解決が待たれる課題は山積している。

中国が推進する産業インフラ政策「新基建(新インフラ)」で謳われている7つの方針のうち、スマートモビリティに関連するのはAI、5G、インダストリアルインターネットの3項目だ。政策を追い風にして、路車協調システムは大きな成長のチャンスを掴むだろう。中でもタクシー事業で大規模に技術が実用化されていくと考えられている。

AIが路車協調システムのカギを握る

路車協調システムの鍵を握っているのはスマートセンサーだ。スマートセンサーは歩行者やさまざまな種類の車両を検知しながら、各車両の行動履歴とこれからの行動を予測しなければならない。一例としてはそれぞれの車両が交差点できちんと減速するか、信号無視をしないかどうかなど交通ルールの遵守状況を見守ることだが、AIはこれらを事前予測でき、その精度は99%を超えるという。

スマートモビリティを手がける中国企業「中智行(ALLRIDE.AI)」は、上海の臨港地区2カ所ですでに初歩的な路車協調システムを実用化している。路側装置や5Gの進化に伴って、同市では路車協調システムを活用したスマートモビリティがいち早く実現するだろう。(翻訳・愛玉)

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