30歳でKADOKAWAの外国人取締役、日中マーケティング「コロナ・リカバリープラン」を語る

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30歳でKADOKAWAの外国人取締役、日中マーケティング「コロナ・リカバリープラン」を語る

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先日「30歳で日本企業の取締役に、中国人留学生の『普通だけど尋常ではない経歴』」という記事が、インターネットでちょっとした話題となった。その主人公は、KADOKAWAグループ傘下のJ-GUIDE Marketingで事業統括をしているヤンロン(楊嶸)氏だ。

J-GUIDE Marketingは、KADOKAWAグループのリソースを活用し、広告、EC、IPなどの事業を手がけ、日本および中国向けにマーケティングのサービスを提供している。現在は、約20名の社員が在籍しており、8割が日本での留学や仕事の経験がある中国人社員だ。

この会社のキーマンは、1989年生まれの31歳で中国福建省出身のヤン氏。彼は、2009年に中国の高校を卒業した後、留学のため来日。日本語学校で2年間、千葉商科大学で4年間と、6年間の留学生活を経て、2015年にヤフー株式会社に新卒として入社。広告営業職として代理店営業を担当。その後、2018年に株式会社KADOKAWAの子会社であるJ-GUIDE Marketingの創業メンバーとして、事業の立ち上げに参画。現在は、J-GUIDE Marketingの外国人取締役として、事業全般を担当している。

インフルエンサーとしてスタート

ヤン氏は10年前の中国SNS黎明期からインターネット界で趣味として活動してきた。

中国版Twitterと呼ばれる微博(Weibo)では、「日本情報站」という日本総合情報を発信するアカウントの運営をしており、今では約200万のフォロワーがいる。

「中国人向けに、日本の情報および在日中国人の生活に役立つ情報をリアルタイムで紹介するといった内容をコンセプトに、10年間配信し続けてきた。大変有り難いことに、昨年末には微博社から『日本情報達人』のカテゴリで賞をいただくことができた」と明るい笑顔を見せながら語るヤン氏。

この10年間で配信してきた、自治体の観光情報、メーカーの商品紹介や、体験サービスなど数百社以上にものぼる宣伝実績が、現在の会社経営に非常に役立っているそうだ。

ヤンロン氏の受賞時の様子

コロナ後の「リカバリープラン」

しかし、誰も思いもしなかった感染症の流行が、ヤン氏の事業計画を大きく乱した。

昨年は、インバウンド系のクライアントが多く、J-GUIDE Marketingが大きく成長した一年だった。今年は、オリンピックが開催されることを前提に、目標を高く設定したが、まさかのコロナショックに見舞われた。

苦しい時期でも雇用を維持し、社員が楽しく働ける空間を創り出すという難しい経営課題に直面し、悩まされたヤン氏だが、長く足踏みすることはなかった。

リカバリープランとして、経営側で出した戦略で、計画していた新規事業を加速させたのだ。

今まで日本企業の対中マーケティングをメインにやってきた同社は、日本で構築したリソースやノウハウを活かし、越境ECソリューションと中国企業の日本マーケティング支援に方向転換することにした。

数カ月間試行錯誤した結果、最近ようやく期待していたことが実ってきたという。今年10月には、アニメ関連の商品を販売するアリババ傘下の「T-mall国際」の越境EC店の運営・宣伝が始まる。

さらに、中国大手ゲーム会社が日本でリリースするゲームの大型プロモーションを受託することができ、新しい事業の将来性が見えてきた。

「ここからは、アクセルを踏むタイミングだと思い、増員することにした」と今の世の趨勢とは逆の判断をした。

日中マーケティングの違いについて

日中両方にサービスを提供しているので、「日本と中国マーケティングの違いは」と質問を投げかけたところ、「二つの事業部とも私の管轄で、違いは非常に大きい。瞬時の思考切り替えが必要で、大変だった」とヤン氏は笑った。

その違いの一つ目はマーケティング手法だという。日本ではエンジン検索、TVCM、電車広告など多種多様だが、中国マーケティングは、基本デジタルファースト。その中でもSNSマーケティングが一番主流となっている。

二つ目はクライアント業種。日本でマーケティング活動を展開している中国企業は、IT企業とゲーム会社が多いが、中国でマーケティング活動を展開している日本企業は自治体、商業レジャー施設、メーカー企業が多く、基本はインバウンド集客が主要目的となるそうだ。

三つ目は人口あたりの予算が挙げられる。中国企業は日本企業と比べ、予算配分が多い傾向がある。

第二の創業の気持ちで再チャレンジ

その認識の上で、事業方向の転換を図ってきたヤン氏は、最後にいつもの笑顔を見せながらこう語った。

「コロナ禍で苦しんでいる創業者にとって、今年は大きな試練だが、このような非常時だからこそ、直ちに思考を変え、適時調整することが大事だと思う。私は、ピンチをチャンスに変え、第二の創業という気持ちで、今は新規事業の準備期間として、来年の飛躍に向けて前向きに頑張っていきたい」

(作者・Ai)

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