オンライン配車最大手「DiDi」、新エネ車製造に動き出した理由

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オンライン配車最大手「DiDi」、新エネ車製造に動き出した理由

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配車プラットフォーム中国最大手の「滴滴出行(DiDi)」が車両製造に乗り出す。とはいっても、委託生産の形式でだ。

9月21日付の米ブルームバーグの報道によると、DiDiはEV(電気自動車)・バッテリー製造大手BYD(比亜迪)にEV製造を委託する。両社にとってはこれが初の協業案件ではなく、今年6月には両社の提携によるロボタクシーが初の公道テストを行っている。

本来はプラットフォーマーのDiDiが自動車製造を構想したのは2018年のことで、同年にはBYDや北汽集団(BAIC Group)など31社とシェアリングモビリティのアライアンス「洪流聯盟(THE D-ALLIANCE)」を結成し、新エネルギー車のシェアリングにまつわる設計・標準化を共同で手掛けていくとした。またシェアリング向けモビリティツールとして純電気自動車(BEV)の「D1」を自動車メーカーと共同で設計・生産していくと発表した。

DiDiが提携する自動車メーカーはBYDだけではない。国営系の北汽集団のほか、新興EVメーカーの「理想汽車(Li Auto)」「小鵬汽車(Xpeng Motors)」とも提携関係にある。彼らが手がける車両はすべてシェアリングモビリティ向けに製造され、DiDiが今後の事業方針や業績目標として掲げる「0188」プロジェクトの実現に貢献することになる。DiDiにとっては新たな強みにもなるが、同社は現段階でこれらについて沈黙を貫いている。

DiDiが自動車メーカーと協業する必然

DiDiとBYDが共同で新エネルギー車の製造に乗り出すとのニュースは最近になって伝えられるようになった。中国工業情報化部の発表によると、BYDは8月に車種名を「D1」とするセダン型EVの販売許可を取得している。これはDiDiにとって自社が所有することになる初のEVで、年内に1万台、来年には10万台を投入するともいわれる。

BYDにとってもDiDiとの協業はメリットでしかない。バッテリーメーカーとしては2017年にライバルの「CATL(寧徳時代新能源科技)」に出荷数で追い越され、世界首位の座を奪われたからだ。

また先にも述べた通り、DiDiと提携するメーカーはBYD一社ではなく、「理想汽車は昨年すでにDiDi向けの試作車を完成させている」と吐露するプロジェクト関係者もいる。

インターネット上で暴露されたDiDiと理想汽車による試作車

DiDiはモビリティプラットフォームとしてピーク時には1日5000万件の配車依頼を受けるまでに成長したが、これほどの受注をさばくにはさらに多くの車両とドライバーが必要であり、これを他社との提携によって解決し、コストダウンを図っていかなければらない。

DiDiが新エネルギー車にこだわる理由

DiDiが単なるモビリティプラットフォーム運営から車両製造へ手を伸ばし始めたのは2018年のことだ。

同年3月、理想汽車(当時の社名は「車和家信息技術(CHJ Automotive)」)がシリーズBで30億元(約470億円)を調達した際、創業者の李想氏がDiDiと戦略的提携を締結したと発表した。両社は合弁会社を設立し、DiDiが株式の51%を、車和家(現・理想汽車)が49%を持分とすることで合意している。また、車和家にとってDiDiは出資者でもあった。

合弁会社は新たなモビリティ製品やサービスを打ち出すために立ち上げられ、具体的にはシェアリングモビリティ専用のスマートEVや車両管理・運営プラットフォーム、自動運転の大規模実用化などを手がけていく予定だ。

DiDiは2019年にも北汽集団傘下の「北汽新能源電動汽車(BAIC BJEV)」とも合弁会社を設立しており、DiDiの子会社が株式の67%を、北汽新能源が33%を持分としている。

これ以前にもDiDiは「長安汽車(Changan Automobile)」、「東風乗用車(DFPV)」、「奇瑞汽車(Chery Automobile)」、「中国一汽集団(FAW Group)」やルノー・日産・三菱アライアンスなど12社と提携関係を結び、共同で新エネルギー車のシェアリングモビリティサービスを設立している。

DiDiが今年4月に発表したデータによると、同社のプラットフォームに登録するBEVは昨年末時点で約97万台で、中国全土の保有台数の3割以上となっている。その総走行距離は約71億キロだ。

化石燃料車に比べ、新エネルギー車はより低コストで運営できる。同程度の性能を有する車両で比較するなら、新エネルギー車の燃費は2リッターガソリン車の25%だ。DiDiが新エネルギー車に注力する理由はここにある。

DiDiの登録車両のうち新エネルギー車が占める割合が増せば運営コストは大幅に圧縮でき、最終的には顧客に還元される。配車プラットフォームが共通して抱える黒字化という課題も解決できる。

ただ、問題となってくるのは新エネルギー車の生産能力だ。BYDがDiDi向けに製造する「D1」は来年に10万台を投入する予定だが、これは2019年の新エネルギー車業界全体の生産台数の半分にも上る数字だ。かといって、既存型の自動車メーカーは新エネルギー車の製造に食指が動かない。ある業界関係者によると「販売価格は高くつけられるが、そもそもの販売台数が少なく、生産高を上げる術がない。金型製作だけで多額の費用がかかり、生産高が少ないなら、資金回収までの期間も長くなる。これでは誰も賭けに出る気がしない」と語る。

さらなる成長に避けられぬ道のり

配車サービスはドライバーと乗客の双方を扱うプラットフォームだ。膨大なユーザーがいることでドライバーは魅力を感じ、ドライバーが増えればユーザー体験は向上する。ドライバーと乗客がともに増え続けることでプラットフォームの運営コストは削減され、初めてスケールメリットが成り立つ。

しかしそのスケールメリットには限界がある。米配車サービス「Lyft」の創業者はかつて、「我々の事業におけるスケールメリットはあるポイントに到達すると薄れる。一般的には、配車依頼から乗車までの時間において『3分の壁』が存在する」と述べている。

さらに、将来的に自動運転が普及すると車両の「所有権」という概念が変わってくる。一般消費者は自家用車を購入する必要がなくなるのだ。自分が所有する車でも、レンタルした車でも、自動運転で走行することに変わりないからだ。

よって、DiDiが車両製造に挑戦するなら、自然と自動運転分野にも参入することになる。

自動運転を手がけるにあたり、DiDiにはこれまでに蓄積したデータと運営実績がある。自動車製造となれば基礎能力もない状態だが、これをものにするには時間も半端ない資金も必要だ。創業者兼CEOの程維氏は「自社で製造を行うことはない」と明言している。

DiDiが今後も業界トップの立場を維持したいなら、ある程度は車両の使用権を抑えておく必要がある。そのために合弁企業を設立して車両の生産に乗り出したわけだが、将来的には自動運転関連の企業とも協業に踏み切る可能性がある。

これは頂上の座を堅持し、スーパーユニコーン企業となるためには必然の道のりなのだ。(翻訳・愛玉)

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