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11月2日、シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスが出資するVC「食芯資本(Bits x Bites)」が、新たなドル建てファンドの一次募集を終えた。テマセク・ホールディングスのほか、シンガポールの「Heritas Capital Management」、フィリピン最大の食品会社「Monde Nissin」、中国・アジア太平洋地域の食品会社や投資家が出資している。一次募集の金額は3000万ドル(約30億円)。二次募集もまもなく始まる予定で、合計7000万ドル(約70億円)の募集を計画している。
食芯資本は食品や農業を専門とするVCで、投資対象はスマート農業、農産物の疫病予防と栄養改善、食品加工、代替タンパク質技術などである。主にプレシリーズAからシリーズBまでの投資を行う。
食芯資本は本部を中国上海に置く。創業者兼総経理の何瑞怡(Matilda Ho)氏は、以前にファームトゥーテーブル(農場から食卓へ食材を直接届けるというコンセプト)のECプラットフォーム「一米市集(Yimishiji)」を創業したことがあり、コンサルティングファームでの長年のキャリアを持つ。マネージングパートナーの周桓達(Joseph Zhou)氏は、投資銀行、PEなどで12年のキャリアを持つ。
新型コロナは資本市場にも大きなインパクトを与え、農業分野での資金の流れが変わり、食料安全保障が特に注目されている。米国の農業・食品分野の資金調達情報プラットフォーム「AgFunder」の集計によると、2020年上半期、同分野の資金調達額は11億ドル(約1100億円)となり、2019年全年の10億ドル(約1000億円)を超えた。特に注目すべきは、川上である農業の資金調達額が、2013年以来初めて川下である食品の資金調達額を超えたことである。
こうした状況にあって、何氏は今まさに中国の農業・食品分野の技術革新へ投資すべきだと考えている。彼女によると、「バイオテクノロジー、AIなど先端技術が農業、食品産業を変えつつある。さらに、IoT、センサー、アルゴリズムのコストも下がり続けている。そのため、複雑なプロセスを要し、標準化が難しかった農業でもデータの採集と分析が進み、より安定した効率の良い生産が可能になっている」という。
また、中国市場について、何氏は「中国では、10年以上に及ぶモバイルインターネットの目覚ましい成長によって、世界トップレベルの生鮮食品EC、デリバリープラットフォームを持つに至った。彼らは消費者のニーズとビジネスモデルの変化を反映しており、こうした変化が、農業・食品の技術革新、サプライチェーンの変革を求めている」と指摘する。
食芯資本は新たなファンドで、これまでに投資してきた企業のなかで、特に優れている企業へ追加出資する予定である。たとえば、英バイオテクノロジー企業の「Tropic Biosciences」は、独自のゲノム編集技術で、バナナの感染症である新パナマ病の対策を行い、農業大手と提携している。ほかにも、ひよこ豆のタンパク質抽出技術を開発するイスラエルの「InnovoPro」などが投資先の候補に上がっている。
(翻訳:小六)
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