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12月14日、中国国家市場監督管理総局(以下「SAMR」と略称)は、「独占禁止法」の第48条、49条に基づき、アリババ傘下の投資会社「阿里巴巴投資(Alibaba Investment)」、テンセント傘下の電子書籍サイト「閲文集団(China Literature)」、宅配大手「順豊(SF Express)」傘下の宅配ボックス運営企業「豊巣網絡(HIVE BOX)」に対し、ともに罰金50万元(約750万円)の行政処分を下した。これを受け、アリババ、テンセント、閲文集団の株価は午後の取引で2%以上値下がりした。
上限額の罰金が業界改善の第一歩
SAMRは、3社とも他社の買収に際しての申告義務を十分に果たしておらず、違法に事業者の集中を進めたと認定した。また、SAMRの担当者は、上述3社は業界内での影響力が大きく、投資・買収を頻繁に行い、専門性の高い法務チームを持ち、事業者集中の事前申告制度を熟知しているにも関わらず、自主的に申告せず、悪影響をもたらしたと指摘する。そのため、法律で定めた上限額の罰金処分を課し、業界全体の規範化に向けたきっかけにしたいと話している。
この処罰に関して、アリババと閲文は「すでに前向きに改善に取り組んでいる」と回答。SAMRはまた、テンセントについて、ゲーム配信プラットフォームの「虎牙(Huya)」と「闘魚(Douyu)」の合併に際しての事業者集中の申告について調査中だと公表した。
虎牙と闘魚はゲーム配信市場のシェアを80%持ち、両社の筆頭株主であるテンセントは合併により大きな見返りを得ることができる。しかし、プラットフォーム型ビジネスについての行政審査が日に日に厳しくなっているため、合併を順調に完了できるかどうかは未知数だ。
中国の市場監督機関は、直近2カ月において、各種措置を講じプラットフォームの独占にメスを入れようとしている。テック大手が資金力に物を言わせ、買収で市場を独占する手法は、長続きできないかもしれない。
インターネット業界にも独占禁止法を適用
中国の独占禁止法は施行から12年経つが、これまでインターネット企業が処分の対象となるのは稀だった。この12年間は、プラットフォームが飛躍的に成長した時期でもあり、アリババ、テンセントらは前代未聞の速さとビジネスモデルで拡大し続けてきた。
独占禁止法の施行以降だけを見ても、インターネット業界において、同業の有力企業同士の合併が繰り返し行われてきたことがわかる。動画プラットフォームの「優酷(youku)」と「土豆(Tudou)」、配車サービスの「滴滴(DiDi)」と「快的(KuaiDi)」、クラシファイド広告の「58同城(58.com)」と「赶集網(ganji.com)」などが代表的だ。こうした事例はこれまで問題視されなかったが、今年になってようやく行政の視野に入ってきた。
今年11月10日、SAMRは「プラットフォーム型ビジネスの独占禁止ガイドライン(意見募集草稿)」を公表し、プラットフォームが優越的地位を濫用することを明確に禁じ、またプラットフォームに頻発する独占禁止法に抵触する行為を規定した。このガイドラインの公表後も、アリババ、テンセントなどの株価が一時暴落した。
テンセントは投資家向けイベントにおいて、同ガイドラインは主に決済に関わるサービスを規定したものであり、ゲーム、動画などのコンテンツプラットフォームへの影響は小さいとして火消しに走ったが、今回の閲文集団への処分を見る限り、テンセントの判断は完全に間違っていたといえる。
SAMRが言明したように、「インターネット業界に独占禁止法を適用しないというわけではない。すべての企業は独占禁止に関する法令を遵守すべきである」。ロイターの報道によると、独占と認定されることを懸念し、アリババとテンセントは、バイドゥ(百度)傘下の動画配信プラットフォーム「愛奇芸(iQiyi)」の買収について、交渉を棚上げしたという。
これまでのインターネット業界では、大手が買収でライバルを潰し、勝者総取りをしてきた。こうした手法に対し、より厳しく取り締まっていくことで、業界の規範化、社会的効果の向上、消費者の利益の増大が期待できるだろう。
(翻訳:小六)
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