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帰宅しドアのスマートロックを解除すると、玄関の明かりが灯され、スマートスピーカーから「おかえりなさい」の声が響く。部屋の中では掃除ロボットが充電スタンドに戻り、電気ポットが自動で湯を沸かし始める。リビングに入ると、玄関の明かりが消え、リビングの照明が点く。それに伴いカーテンがゆっくりと開き、テレビのスイッチが入る….
スマートデバイスが普及しつつある今、中国のスマートホーム分野のトップ企業は単品を開発するのではなく、上述のような家全体のスマート化を進める方向に転換し始めている。
ファーウェイとシャオミの新たな競争
スマートホーム市場を狙う企業は数多い。家電大手の「美的(Midea)」は年初にスマートホーム事業群を立ち上げ、バイドゥ(百度)は3月にスマートホームソリューションの「小度」を発表、IoT家電メーカーの「雲米(Viomi)」は4月にスマートホーム戦略の「Helpful」を発表するなど、動きが活発だ。その中で最も注目すべきは、やはりファーウェイである。
スマートフォン事業が制裁措置によって頭打ちとなったファーウェイは、独自のオペレーションシステム「Harmony」を各種デバイスに搭載させたことを皮切りに、スマートホームの中核を担うデバイスであるスマートディスプレイを発売、さらに直近ではファーウェイ独自のスマートホームソリューションを発表するなど、スマートホームへと重心をシフトしている。スマートホーム事業で巻き返しを図ろうとする意図は明らかだ。
ファーウェイのライバルになるのがシャオミだ。最近では自動車製造を開始することが注目されているが、これは自動車産業そのものへの興味よりも、シャオミのAIoT(AI+IoT)デバイスのエコシステムをさらに充実させるための戦略だと考えられる。自動車製造の発表と同時に、シャオミはハイエンドのスマートデバイスを多数発表しており、雷軍CEOは「スマートホームで体系的に推進していく」と話しているのが印象深い。
ファーウェイとシャオミはスマートフォンでしのぎを削ったライバルで、スマートホームでも同様に競合関係にあるが、現時点では違いも大きく、それぞれの特色がよく出ていると言える。
ファーウェイの最大の特徴は、「1+2+N」と呼ばれるネットワーク戦略である。1はネットワークホストとなるデバイスで、2はWi-FiとPLC(Power Line Communications、コンセントからつながる電力線をネットワークの通信回線として利用する技術)という2つの通信技術、NはHarmony OSを搭載した各種デバイスである。ユーザーは自宅にホストを設置し、Wi-FiとPLCで家中のデバイスをホストに接続して使うことになる。何を接続するかは自由で、想定されるのは照明、環境コントロール、水道、セキュリティ、ホーム・エンターテインメントなどだ。この方式は、パソコンにあらかじめOSをインストールして使うやり方と似ている。自宅にネットワークホストというOSをあらかじめ設置すれば、必要な機能を随時接続すればよいのだ。
一方、シャオミはデバイスのみを開発・販売しており、ネットワークの構築には関わらない。そのためデバイスの自由度が高く、引っ越しなどの生活環境の変化にも柔軟に対応できる。ただし、ユーザーはスマートホーム環境を自分で作り上げなければいけないため、デバイスの機能などへの高度な理解が求められるだろう。
ファーウェイが採用したPLCは工業生産のオートメーション化などで広く使われているが、一般家庭への導入は初めてである。PLCを使用すると、電気さえあれば通信が可能となる。その上ファーウェイは、家の中にネットワークホストを設置するため、たとえインターネットが切れていても、電気回線を通しての通信が可能であり、スマートホーム機能が影響されないのだ。それに対し、シャオミのネットワークホストはクラウド上にあるため、インターネットが切断されれば何もできなくなる。この点が両社の最大に違いだと言えよう。
手軽さのシャオミと安定性のファーウェイ。一方が良くて一方が悪いというわけではなく、何を必要としているかをユーザー自身が判断し、その上でどちらを選ぶかを決めるべきだということだ。
(翻訳・小六)
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