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リチウムイオン電池などの開発を手がける「衛藍新能源(WeLion New Energy Technology)」(以下、衛藍)はこのほど、中国スマホ・IoT家電大手の「シャオミ(小米科技、Xiaomi)」などから5億元(約90億円)を調達した。プロジェクトの総額は50億元(約900億円)と推定される。
関係者によると、シャオミと同社の雷軍CEOが設立した「順為資本(Shunwei Capital)」は今年8月、衛藍へ投資する契約に署名していた。すでにシャオミからの出資は完了しているという。36Krは同情報に関して衛藍にコメントを求めたが、同社からの回答は得られていない。
衛藍はハイブリッドの固液電解質で構成されるリチウムイオン電池と全固体リチウム電池の開発・生産を手掛ける企業だ。中国科学院傘下企業で、同院物理研究所のクリーンエネルギー実験室で開発された固体電池技術の産業化に唯一成功している。同社の設立は2016年で、本社は北京市にあり、同市内のほか江蘇省と浙江省にも生産拠点を設けている。
設立当初、同社は3C(コンピューター、通信機器、家電)製品の電子部品に注力していた。その後、新興EVメーカー「NIO(蔚来汽車)」への半固体電池の供給をスタートさせた。
NIOは今年1月に開催したイベント「NIO Day」で、エネルギー容量150キロワット時(kWh)の車載向け電池パッケージ製品を2022年にもリリースする予定だと発表した。この電池は同社の新型EVセダン「ET7」の航続距離を最長1000kmまで伸ばすことを可能にするという。李斌CEOによると、同電池には最初は液体だが製造過程で固体化するハイブリット材料、カーボン・シリコンの混合材料を使用した負極材、「ウルトラリッチ」のニッケルとナノ粒子によりコーティングされた正極材が採用されている。それにより、従来の三元リチウム電池よりも重量エネルギー密度を50%高め、360Wh/kgを実現した。この情報が公開されると、リチウム電池業界の株価は大きく変動した。
NIO Dayでは新型電池を手がけるメーカー名は公表せず、李CEOがメーカーの先進性と量産技術を保証するにとどめていた。複数の情報筋によると、このメーカーこそが衛藍なのだという。企業情報によると、NIO幹部の曽澍湘氏が衛藍の董事として名を連ねている。
NIOが電池メーカーと提携するのは、車載電池大手の「寧徳時代新能源科技(CATL)」と提携して以来のことだ。CATLにとってNIOはEV大手テスラに次ぐ顧客企業となっている。
衛藍にとってNIOとの提携は電池メーカーとしての命運を握る大きなビジネスになる。両社の協力がどのように発展していくかによって、衛藍が新エネルギー車業界で足場を固められるかどうかが決まる。そして今回のシャオミによる衛藍への出資は、NIOが衛藍に量産発注を行うことへの期待の高さを意味する。
シャオミが新エネルギー車のサプライチェーン関連企業に投資したのは今回が初めてではない。今年秋には自動運転ICチップメーカー「黒芝麻智能科技(Black Sesame Technologies)」に出資している。また、シャオミと順為資本は、車載用LiDARを開発する「Innovusion(図達通)」や自動運転技術を手がけるスタートアップ企業「Momenta(モメンタ)」にも出資してきた。これらはすべてNIOのサプライチェーンを構成する企業だ。
シャオミは今年3月にEV業界への参入を宣言し、100億元(約1600億円)を投入すると明らかにしていた。EV事業本部と工場は北京市に置かれ、すでに500人を超える従業員を抱えている。研究センターは同市のほか上海市や湖北省武漢市などに点在している。シャオミ製のEVは2024年前半にもリリースされる予定だという。
また、戦略投資・産業投資部門を通じて、自動運転技術を手がける「DeepMotion(深動科技)」を買収したほか、自動運転スタートアップ「縦目科技(ZongMu Technology)」やLiDARメーカーの「禾賽科技(Hesai Photonics Technology)」などへの出資を通じ、EV製造のためのリソースを急速に集めている。
しかし、新エネルギー車業界の競争は日に日に熾烈さを増している。シャオミのように遅れて参入した企業は、他社よりもさらに多くの差別化戦略が必要になるかもしれない。(翻訳・Qiunai)
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