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モバイルインターネットの普及に伴い、2014年ごろから医療分野でインターネットが活用されはじめた。この年はまさに「メディテック元年」。同年、中国では1000社以上のスタートアップ企業が参入。また、国内最大のオンライン医療ポータル「平安好医生(Ping An Good Doctor)」を運営する「平安健康互聯網(PING AN HEALTH CLOUD)」が、資本金3億5000万元(約56億5000万円)で設立された。同社の董事長兼CEOの王涛氏を筆頭に、CPO呉宗遜氏、CTO王斉氏、アリババ出身のCOO白雪氏によって、中国メディテックの礎が築かれることになる。
平安好医生は「あらゆる家庭のホームドクターに」をタグラインに掲げ、2015年4月にアプリをローンチ。アプリ経由の問診を入り口に、オンライン医療や健康管理のサービスをスタートした。翌年にはユーザーが1億人を突破。医療分野での全面的なサービスを目指して、オープンなエコシステム構築に向けてまい進していった。
医療機関と患者を結びつけるホームドクター
2016年5月、運営企業の平安健康互聯網はシリーズAで5億ドル(約550億円)を調達。評価額を30億ドル(約3300億円)に押し上げた。2017年12月にはソフトバンク・ビジョン・ファンドからプレIPOラウンドで4億ドル(約440億円)を調達。2018年5月には香港上場を果たした。潤沢な資金を背景に、今年の中間決算では、前年同期比150.3%増の11億2300万元(約181億円)の売上高を達成した。
白COOは、「多くの人々の健康管理に寄与するだけでなく、医療費削減にも貢献するサービスだと考えている」と述べた。
平安好医生が2016年7月に導入した「家庭医生」は、音声認識技術企業との合資企業が開発した、24時間対応のオンライン診断サービスだ。AI技術とオンライン医療を組み合わせた同サービスは、今年の中間決算時点で1日あたり約53万件の診断を行っている。しかし、投資コンサルティングプラットフォーム「灼識咨詢(China Insights Consultancy)」の調べによると、2016年に中国で何らかの医療機関で受診した人はのべ77億人。1日当たりに換算すると約2100万人となるため、平安好医生にとって市場の開拓余地はまだ大きい。
医療の需要が高く、リソースが偏在している中国では、「AIファミリードクター」がもっとも重要な技術だ。AIファミリードクターは診察のプロセスを簡略化し、電子カルテによるトラッキングを可能にすると同社は考えている。
医療機関にかわり、患者の健康管理を担う
平安好医生は2018年6月末時点で2億2800万人の登録ユーザーを抱えるまでに成長した。
2018年9月、国家衛生健康委員会と国家中医薬管理局は共同で、インターネット診療に関する新規定を発表。同分野で可能な診療範囲は、一般疾病の一部と慢性疾患の再診、ホームドクターによる契約サービスと定め、医療費の削減効果に期待を寄せている。白COOはこの新規定が、医療機関との提携を推進する追い風になると考えている。
従来の医療機関では、病気を治療することはできても、病気以前の健康管理までは手が回らない。「医療の主体はやはり医療機関にある。我々はあくまで患者の健康管理を預かる立場だ」。白COOは、オンライン医療は患者との距離が近く、コンサルティングやコンテンツを通じてユーザーの健康意識を高められる点が、従来型の医療機関との違いだとする。
規模拡大と質の担保を両立
平安好医生が多岐にわたるサービスを維持していくためには、ユーザー数を増やすことが必須だ。オンライン医療系の競合他社と比較しても、同社が提供するサービスの範囲はかなり広い。ただし、医療分野は人の健康に関わるため、どんなにサービスの範囲を拡大しても「広く浅く」にはできない。正確さや専門性を失ってはならないのだ。
それでも、患者にとって医療へつながるチャネルを多様化することは重要だと白COOは考えている。診療科目や疾患の種類によってアプローチは異なるが、事業の核心は「人」にあるという点は変わらない。
(翻訳・愛玉)
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