「新型タバコ」へ相次ぐ参入、中国版「Juul」は現れるのか

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今「新型タバコ」業界が過熱している。

新型タバコにはタバコの葉を加熱する「アイコス」などの加熱式タバコと、エアロゾルにニコチンソルトを含ませて吸引する電子タバコ(Vape)の2種類がある。中国の新型タバコベンチャーは、ほとんどが後者に集中している。

新型タバコはターゲットユーザーの面でも新しいビジネスだ。ベンチマークの米国では、電子タバコメーカーはマルボロなどと既存市場のユーザーを奪い合うのではなく、成長が見込める若者市場に目を向けている。

例えば、米国の電子タバコ「Juul」は、一気に「スター愛用モデル」となった。インスタグラムのフォロワー2200万人を擁するモデルのベラ・ハディッドがJuulを手にした写真をアップしたからだ。

急拡大する市場

Juulは、米カリフォルニア州に本部を置く「Pax Labs」が2015年6月にリリース、現在米国の電子タバコ市場で68%のシェアを誇るという。わずか3年で驚異の成長を成し遂げた。米国市場で地位を確立した後、すぐさま欧州にも進出した。

1兆元(約16兆円)規模の市場を抱えるタバコ大国の中国も、同時期に電子タバコブームを迎えた。「国金証券(Sinolink Securities)」のレポートによれば、今後4年間で電子タバコ市場は3000億元(約5兆円)に成長すると見込まれている。

今の電子タバコブームがJuulの影響を受けていることは明白だ。さらに米食品医薬品局(FDA)が電子タバコの規制に乗り出したことから、世界で9割の電子タバコを製造する中国の電子タバコメーカーが国内市場へとかじを切り、中国で電子タバコのニーズ掘り起こしを始めたことも追い風となっている。

すでに競争加熱

電子タバコメーカー各社は「中国版Juul」を目指しているが、Juulの成功を中国で再現することは難しい。

中国の電子タバコ市場はサプライチェーンがほぼ完成しているため、短期間のうちに多くのブランドが市場に参入することができ、ブランドが細分化しがちだ。Juulのような一人勝ちは不可能だろう。

電子タバコメーカーにとって、市場で認知され始めたこの時期に、早期参入者として遅れを取らないことが何よりも重要だ。このため、各メーカーはマーケティングに力を注いでいる。「Linx(霊犀)」は豊富なセルフメディアを有しており、「Moti(魔笛)」はSF映画「流浪地球(The Wandering Earth)」とのコラボを企画するなど、各社とも露出を増やす戦略をとっている。また積極的にインフルエンサー(KOL)に接触し、トラフィック獲得の入り口にしようとする動きもある。

今のところ、電子タバコには従来の紙巻きタバコの税制や監督管理が適用されていないため、これまでのタバコ販売ルートで購入することは難しい。そのため現時点では、オンラインか電子機器の販売ルートに限られている。

とはいえ、タバコの使用シーンを考えるとオフラインの販売から手を引くことはできない。代理店網などの形でオフラインの販売ルートを確立するのが理想的だ。また土地代が安く、知人の紹介が大きな集客力につながる三級都市やそれより小さな地方都市では、オフライン販売を通じて頭角を現す電子タバコメーカーが出てくる可能性も十分にある。微信(WeChat)を利用した「微商(WeChat Business)」までが電子タバコにフォーカスしており、裾野が拡大し続ける市場にまだチャンスはあると言える。

市場の行方は未知数

電子タバコの市場競争において、最大の変数は政策である。

従来のタバコと比較して、最も影響が大きいのが税率などのコストだ。目下、電子タバコはグレーゾーンだが、政策によって粗利率が大きく変わってくる。ちなみに、従来のタバコの平均税率は約68%だ。

各ブランドが「電子タバコは紙巻きタバコより害が少ない」というメッセージをいくら打ち出しても、「健康上のリスク」はタバコ関連の商品が抱える闇だ。国民の健康を考慮した政策が施行されるだろう。すでに米国では電子タバコが健康に与える影響についての研究が盛んだ。今後中国でも同様の議論が起こることは避けられないだろう。

先ごろ、杭州市と南寧市が公共の場所での電子タバコの使用を禁止したのに続き、深圳市でも電子タバコ禁止条例が発表された。
(翻訳・畠中裕子)

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