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ペロブスカイトの太陽光発電モジュールを開発・生産する「昆山協鑫光電材料(GCL Perovskite)」が5月13日、シリーズBで数億元(数十億円)を調達したと発表した。ネット大手のテンセントが出資を主導した。昆山協鑫光電の大株主は中国のシリコン大手「保利協鑫集団(GCL)」だ。
テンセントは投資への依存度を高めており、2021年の年次報告書によると投資収益は利益全体の65%を占める。しかし、以前はインターネット関連への投資で成長したテンセントも、人口ボーナスが失われ次の成長事業を必要としている。
テンセントに以前太陽光発電分野で動きがあったのは川下だけで、自社のビッグデータセンターに太陽光発電の発電所を設置し、リチウム電池に投資した。同社が太陽光発電業界の川上に参入するのは今回が初めてで、最も基本となる素材に投資した。「双炭(カーボンピークアウト、カーボン・ニュートラル)」は国家戦略であり、10年以上の長期投資の機会をもたらした。資金の豊富なテンセントがこの機会を逃すはずはない。
なぜペロブスカイトなのか
ペロブスカイトは一種の化合物だ。目下、主流となっている太陽電池は結晶シリコンでつくる単結晶または多結晶シリコンで、これが第1世代の太陽電池だ。第2世代は薄膜電池で、建物の外壁に使うことができる。
ペロブスカイトの最大の強みは、より多くの太陽光エネルギーを電気に変換できることだ。変換効率は結晶シリコン太陽電池が23%、最新型のヘテロ接合やTOPCon技術を使用しても27~28%程度しかない。これが結晶シリコン太陽電池の限界で、薄膜電池の変換効率は更に低く、結晶シリコン電池の半分しかない。
ペロブスカイトを使用すると、光エネルギーから電気エネルギーへの変換効率が理論上33%になり、ペロブスカイトの層を厚くして電池をつくると変換効率は50%以上になる。ペロブスカイトの原料はシリコンよりも安く、純度もシリコンほど高くなくてもよい。高温で加工製造する必要もない。結晶シリコン電池との互換性があり、結晶シリコンとペロブスカイトを使用した電池パックも可能だ。
シリコンを原料とする電池の卸売価格は1キロワット 当たり500~1000ドル(約6万4000~12万8000円)だが、ペロブスカイト電池の価格は半分で重量は10分の1だ。電気自動車への大規模な活用が実現し、より多くの電池を搭載できれば、航続距離が伸び価格はさらに安くなるだろう。建物にも安価で太陽光発電モジュールが設置できる。
駆動用バッテリー大手「CATL(寧徳時代)」がこの分野への参入を決めたのもこうした理由からだ。CATLの曾毓群董事長は5月5日、ペロブスカイト電池の生産ラインを設置済みだとして同分野への参入を正式に発表した。このほかペロブスカイト電池を手掛けるスタートアップ「極電光能(UtmoLight)」には、自動車大手「長城控股集団(Great Wall Holding Group)」が出資している。
しかし、ペロブスカイト電池には短所もある。材料が安定性に欠け、高温、強い光、水、酸素さえも劣化を招く。実験室の過酷な条件の下では、2000時間以降の変換効率は当初の90%に落ち込む。結晶シリコン太陽電池の変換効率は通常、25年使用しても83%を保持している。
現在の技術では、大型で変換効率の高いペロブスカイト電池を作るのは難しい。結晶シリコンの太陽電池モジュールは200平方センチメートル以上だが、ペロブスカイト電池は26平方センチメートルで手の平サイズにもならない。
太陽電池は第2世代に進んだばかりで、結晶シリコン太陽電池の技術的な方向性は定まっていない。ペロブスカイト電池は第3世代の技術であり、多くの投資機関は様子見だ。ある投資家は「先端技術であり、実用化には時間がかかる」と話す。
テンセントは投資リターンを早急に求めているのではなく、5年後あるいは10年後に成熟するこの産業に賭けたのだろう。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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