全固体電池開発「Enpower」が約28億円調達、ソフトバンクGや東工大とも共同研究

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全固体電池の研究に取り組むスタートアップ「Enpower(恩力動力;中国・日本・米国の電池開発会社を含む)」がシリーズA+で2000万ドル(約27億7000万円)以上を調達した。セコイア・キャピタル・チャイナと日初資本(Dayone Capital)が出資を主導し、広汽資本(GAC Capital)、博潤資本(BR Capital)、天啓資本(Tianqi Capital)、紐励資本(Niuli Venture)も出資に加わった。Enpowerは今年初めにもシリーズAで1億元(約20億円)を調達しており、今回の資金調達で全固体電池の産業化のさらなる進展が期待される。

Enpower社

Enpowerは、リチウム金属電池や全固体電池などの次世代電池とその材料の研究開発および産業化に注力するスタートアップだ。中国、米国、日本に研究開発や生産の拠点を置き、3カ国の博士15名と修士数十名を含む国際的なチームを有している。同社は長年の研究で蓄積した材料関連のコア技術と独自の全固体電池技術を生かして、電池エネルギー密度の向上と安全性における課題解決に取り組んでおり、中国での全固体電池産業チェーンの構築を目指している。

Enpowerはリチウム金属負極の保護と負極材料の改良、硫化物固体電解質材料の合成技術および材料膜形成技術、固体電解質材料とリチウム金属負極・正極材料のコーティングなどの分野で、すでにパイロットテストの実施段階に入っており、実用化が近づいている。

現時点で、Enpowerでは1.2Ah/3.6Ah/10Ahクラスのパウチセルや円筒形セルの製造に成功している。重量エネルギー密度は520Wh/kg、体積エネルギー密度は1100Wh/lを誇る。硫化物固体電解質を用いたリチウム金属負極全固体電池の試作品は1000回以上の充放電サイクル(80%以上の容量を維持)を達成した。

Enpowerは電池のエネルギー密度にこだわるハイエンドドローン市場にまずアプローチし、製造技術の改良や製品ラインナップの拡充、自動車メーカーとの共同開発を進めて、駆動用電池市場へと進出している。2020年にソフトバンクグループの成層圏ドローンと通信用ドローン向けの高エネルギー密度全固体電池の開発で協力し、2021年には初代製品のテスト報告を発表した。ドローンなどの分野では今年、試作と試験飛行の段階に入っている。

Enpowerの研究開発センター

技術とプロセスの改良により、Enpowerの正極被覆技術やコーティング技術、リチウム金属負極の製造技術はすでに成熟している。現在は複数の自動車メーカーと、駆動用電池を共同で開発・量産するための交渉が進んでいるほか、将来的には自社工場や自動車メーカーとの提携を通じて製品の大規模量産と納品を実現するとしている。

市場関係者は2025年が「全固体電池元年」になると予測する。Enpowerの創業者で董事長の戴翔博士は「安全性やエネルギー密度など、現段階での駆動用電池の主要な課題を解決し、優れた超急速充電機能と組み合わせれば、全固体電池が新エネルギー車の使用体験を根本から変えることになるだろう」と語った。

電池の重量物衝撃試験

全固体リチウム金属電池は、産業が成熟すれば三元系リチウムイオン電池より部品コストを20~30%抑えられるほか、生産プロセスで注入や形成などの後工程を省けるため、生産時間やエネルギー消費を大幅に削減でき、全体的に見て生産コストで優位に立てるとEnpowerは考えている。

同社の主要な提携パートナーには、2019年にノーベル化学賞を受賞し「リチウムイオン電池の父」とたたえられる米テキサス大学オースティン校のジョン・グッドイナフ教授とその研究室や、超イオン伝導体LGPSの発明者で硫化物系全固体電池システムの基礎を据えた東京工業大学の菅野了次教授とその研究室など、世界の著名企業30社以上が含まれている。
(翻訳・畠中裕子)

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