処理水放出後、中国でバカ売れの放射線測定器。専門家が「無意味」と言い切る理由

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日本の魚介類は食べられるのか?日本のスキンケア用品は大丈夫?愛用のベビー用品はほとんど日本ブランドのものだけどどうしよう?

日本の福島第一原発で処理水の海洋放出が行われたことを受け、中国の消費者たちは神経を尖らせている。安全に食べられるものは何か、安心して使えるものは何か、彼らが正解を求めて望みを託したのは放射線測定器だ。

中国の大手オンラインモール「淘宝(タオバオ)」の検索ランキングでは9月第1週、放射線測定器の検索回数が232%も増えていることがわかった。検索キーワードのトレンドなどを公開するデータ共有プラットフォーム「百度指数」では1671%も上昇している。

淘宝などでは放射線測定器の多くが品切れとなり、一部の出店業者ではわずか1日で5カ月分の在庫が売れたという。

オンラインモールで飛ぶように売れている放射線測定器の価格は100〜400元(約2000〜8000円)で、主にガイガーカウンターが売れている。化粧品や魚介類、アクセサリー、内装建材などに含まれる放射線を測定できるほか、製造現場では300種類以上のガスを測定できるという。

しかし、環境学や電磁放射線の複数の専門家に尋ねたところ、以下の2点が明らかになった。1つ目は、安価なガイガーカウンターは測定精度が低く、測定量も少ないということだ。正確な測定には高価なガイガーカウンターかガスクロマトグラフが必要だが、ガスクロマトグラフの価格は数百万元(数千万〜1億数千万円)もするうえ、大きさもクローゼットほどあり、家庭用には適さない。2つ目は、放射線の種類やサンプルの属性によってサンプル採取や測定の方法が大きく異なるため、物体表面に置いて測定するだけでは実際の数値とかけ離れた結果が出る可能性があるということだ。

国家核安全局(NNSA)公式サイトによると、中国の国家基準では一般公衆の被ばく線量限度が国際原子力機関(IAEA)と同じ年間1ミリシーベルト以下となっている。これを空間線量率に換算すると毎時0.5マイクロシーベルト以下となる。これほど低いレベルの放射線量を測定するには一般的な測定器では精度が足りず、参考にはならないだろう。

そのため、一般市民が放射線測定器を購入することに大きなメリットはなく、むしろ不必要にパニックをあおるだけだ。一部の消費者は放射線測定器を購入後、放射線量が最も多く測定されるのが自宅内であることに気づく。すると今度はタイルや大理石、塗料、ガラスなどの建材が放射線源なのではないかと疑うようになる。

放射線測定器が爆発的に売れると同時に、かつてのヒット商品である電磁波防止シートも「捲土重来」の様相を見せている。「魔法のステッカー」をスマートフォンやパソコン、電子レンジなどに貼るだけで電磁波を吸収・カットし、頭痛や抜け毛、不眠などを軽減するとうたう商品だ。これがマイナスイオンを発生させることで「放射線対策になる」と、再び話題になっている。

最も皮肉なのは、こうした商品はもともと日本のヒット商品であり、以前は代理購入サービスや旅行のお土産品としてリクエストの常連だったことだ。

実は、こうした電磁波防止シートの遮蔽効果は人の手ほどにも及ばないことがわかっている。中国メディアのIT時報が上海市にある電気通信・IoT関連の研究所と共同で実施した実験結果では、電磁波防止シートを貼り付けたスマートフォンを専用のソフトウェアで測定したところ、放射率にほとんど変化はなく、むしろ人の手でスマートフォンを覆ったほうが放射率が顕著に下がったという。

また、さまざまな種類の放射線や電磁波を一緒くたにして誤った認識が広がっていることも問題だ。スマートフォンやパソコン、家電、通信基地局などが放出するいわゆる「電磁波」と、核物質からの放射線やCTスキャンなどが放出する電離放射線とは異なる。両者の周波数には歴然たる差があり、後者は放出量が多ければ人体に有害だ。

放射線測定器が売れ筋となり、そこから派生して電磁波防止シートにも注目が集まっているが、一般消費者が家庭用に買い求めることを見込んで安価な測定器を売ることは、人々の知識不足につけこんだ商売なのではないか。

原文:WeChat公式アカウント「IT時報(ID:vittimes)」、作者:孫妍
(翻訳・山下にか)

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