中国の全固体ナトリウムイオン電池メーカー、エネルギー密度300Wh/kgを目指して開発急ぐ

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全固体電池の研究・開発に取り組む中国企業「湖南毅華新能源(Hunan Yihua New Energ)」(以下、毅華新能源)がこのほど、エンジェルラウンドで東方富海(Oriental Fortune Capita)と凌立韋創から数千万元(数億円超)を調達した。資金は研究所の建設や製品開発に用いられる。

毅華新能源は2022年に設立され、コアメンバーは材料分野の研究開発や産業化の経験が豊富な中南大学出身者だ。最高経営責任者(CEO)の王文堯氏はリチウムイオン電池や新エネルギー分野で17年のキャリアがあり、これまでリチウムイオン電池のコア材料の開発や応用プロジェクトを数多く主導してきた。

同社の主力製品は、低コストの固体電解質材料をベースに設計されたバイポーラ型ナトリウムイオン電池とその中核となる固体電解質材料だ。今後3年間は蓄電システム市場と低速車向け車載電池市場をターゲットとし、5年後にはエネルギー密度と安全性でリン酸鉄リチウムイオン電池を超えるナトリウムイオン電池を開発して、新エネルギー車市場への参入を目指すという。

毅華新能源は、高エネルギー密度の正負極材料と固体電解質を組み合わせることで、エネルギー密度が高く、コスト面でも優れた全固体ナトリウムイオン電池の開発に注力している。

全固体電池に使用される固体電解質には、大きく分けて酸化物系、高分子系、硫化物系の3種類があり、それぞれにメリットとデメリットがある。現在のところ、酸化物系を採用するケースが最も多く、次いで多い硫化物系は総合的な性能が最も高いものの、技術面でのハードルが高い。

多くの固体ナトリウムイオン電池メーカーは酸化物系か硫化物系を採用しているが、毅華新能源は高分子と他の材料からなる複合材料を使用して、新たなタイプの固体電解質を開発した。初代製品では、液体成分の含有量0%を目指す。

正極材料には、電極にナトリウムを補充する技術を取り入れることで、電池の初回充放電効率やサイクル寿命を大幅に高めることに成功した。同社のナトリウム補充技術は、ナトリウム含有量が高く、常温環境でも安定しており、コストが低いなどの特長があるという。リチウムイオン電池のリチウム補充やプレリチウム化技術とは異なり、ナトリウム補充技術には安全面でのリスクがなく、大きな効果が見込める。

また、正極材料の安定性を高めるため、有機材料と無機材料を組み合わせた正極材料被覆技術を開発した。正極材料の種類に応じた特殊なスラリーを調合し、同社の固体電解質と組み合わせることで、固体同士の接触面の安定性が向上する。

現在は、層状酸化物、プルシアンブルー、ポリアニオンを使った正極材料のテストを実施しており、ポリアニオン材料では充放電サイクル4000回以上、層状酸化物でも1800回以上を達成したという。

開発中の全固体ナトリウムイオン電池のエネルギー密度はすでに200Wh/kgを超えているが、量産品ではエネルギー密度を300Wh/kgに高め、1Wh当たりのコストを0.3元(約6円)未満に抑える計画だという。現在は初代製品の量産に向けた取り組みが進んでいる。「まだプロトタイプ制作の段階だが、次の資金調達後には量産前の最終的な試作品に取りかかる」と王CEOは語った。

*2024年3月20日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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