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屋内測位技術の研究開発を手がける中国企業「滄穹科技(ZENITH Technology)」がこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億円超)を調達した。深圳市創新投資集団(SCGC)が出資を主導し、銘盛資本(Mingsheng Capital)も参加した。
滄穹科技は2022年に設立され、本社を広東省深圳市に、研究開発センターを湖北省武漢市に置く。主に音響技術を利用した高精度の屋内測位ソリューションを提供しており、測位信号からアルゴリズム、測位チップ、関連システムまでを開発する能力を備える。すでに産業向けの商用ソリューションを打ち出し、複数のプラットフォームでサブメートル級の高精度測位機能を提供している。
同社は設立に先立つ21年には、すでに独自開発した音響測位向けチップ「Kepler A100」を発表。その後も技術開発と製品のアップデートを進め、50件余りの特許(うち4件は米国特許)を取得した。創業者の陳鋭志氏は武漢大学の教授で、フィンランドの科学アカデミー「Finish Society of Sciences and Letters」の会員でもある。陳氏によると、科学的な考え方と市場のルールとは矛盾することもあるため、科学者が起業する場合は投資家の意見にしっかり耳を傾ける必要があるという。
陳氏は、屋内測位はコア技術であるため、国産を実現して国内で管理できるようにすべきだと考えて、起業に踏み切ったと説明した。中国で現在普及している屋内測位ソリューションは、米アップルのUWB(超広帯域無線)技術や米グーグルのWi-Fi RTT(Round Trip Time)技術など、海外の技術に頼っている。特許権に守られた海外の技術を避けるには、完全独自開発が必要になる。陳氏は起業のもう1つの理由として、これまでの研究成果を社会に還元して達成感を得るためだと率直に語った。
音響測位技術は大きな可能性を秘めている。滄穹科技が開発した音響測位信号は、人間の耳には聞こえない周波数帯(非可聴域)を用いて高精度な測位を実現するだけでなく、市場に出回る大多数のマイク付き電子機器に対応する。同社が提供するブロードキャスト方式の測位モデルでは、電源を入れればすぐに使えるベースステーションを利用して、あらかじめエンコードされた音響測距信号を発し続ける。消費者向けのスマートデバイスや独自の測位チップ、IoT機器などと連携することで、屋内測位が可能になる。
同社独自のブロードキャスト方式の測位技術は、トンネルや広い屋内スペースなどでも活用できる。すでに地図サービス大手「高徳地図(Amap)」のナビゲーションアプリと連携して、江蘇省蘇州市に「蘇州星港隧道(トンネル)高精度ナビ技術モデルエリア」を構築し、一般ユーザー向けにシームレスな屋内外の測位サービスを提供している。このほか、複数の大規模交通施設やコンベンションセンター、劇場、ショッピングモール、発電所などでの活用事例がある。
一般ユーザーにより良いサービスを提供するため、さまざまな場面に対応する多種多様なプロダクトもそろえている。公務員向けの肩章や職員証などは、スマートフォンを携帯できない場面でも位置情報を共有できるようにする。物流倉庫では、チップを内蔵した従業員証や標識などが、人・車・モノのリアルタイム測位を可能にする。
陳氏は、将来的には屋内測位の全国ネットワークを構築する必要があると指摘する。滄穹科技は現在、ソフトウエアやハードウエアのサプライヤー各社と共に、エコシステムの構築に取り組んでいる。2023年には5つ省と市でモデル事業10件を実施した。24年は10の省でモデル事業20件の実施を目指すという。
今後は、カメラと5G通信を組み合わせ、音響と映像を一体化させた測位システムに注力すると同時に、より小型で消費電力の低い第2世代のチップの設計に取り組む計画だ。
*1元=約21円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
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