半導体製造のトレンドは「チップレット」へ、中国新興「北極雄芯」に注目

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1つのチップに集積した大規模な回路を複数の小さなチップに個片化する「チップレット技術」の研究開発手がける「北極雄芯(Polar Bear Tech)」がこのほど、 雲暉資本(V Fund)から新たに資金を調達した。資金は、初代製品となるチップレットのテープアウトとパッケージング後の最終試験(ファイナルテスト)に用いるほか、中国初の「チップレット製品ライブラリ」の構築に充て、顧客に直接販売する体制を整える方針だという。

半導体チップのトランジスタ集積率が18カ月で2倍になるとする「ムーアの法則」が天井に近づくなか、先進的なパッケージング技術の進歩に伴い、高性能コンピュータチップの世代交代がトランジスタの製造能力だけにとらわれずに進められるようになった。業界の主流は、複数の半導体チップを1つにまとめるチップレットアーキテクチャに移行しつつある。

米調査会社のMarket.USによると、世界のチップレット市場の規模は、2023年の31億ドル(約5000億円)から24年には44億ドル(約7000億円)に拡大し、33年には1070億ドル(約17兆円)に達する見通しだという。人工知能(AI)、車載電子機器、消費者向け電子機器、データセンターといった産業が大きく成長するのに伴い、高性能コンピューティングのニーズが高まり、CPUやGPU、メモリーなどを構成するチップレットの需要が急拡大している。

世界のチップレット市場の規模

チップレットアーキテクチャの強みは、さまざまなチップレットを自由に組み合わせられる点にある。同じ機能のチップレットを集積して性能を高められるだけでなく、異なる製造プロセスや機能のチップレットを組み合わせてカスタマイズすることもできる。

海外では、先進的な製造技術やパッケージング技術、サプライチェーンを背景に、チップレットの活用範囲がCPUやGPU、AIの学習向けなど、汎用的な高性能コンピューティングの分野に広がっている。

クラウド上で大規模言語モデル(LLM)の論理推論などを実行する場合、チップレットアーキテクチャを活用すると、チップレット1つあたりの演算性能の最大値を効果的に高められるほか、メモリーや帯域幅も向上する。個別のチップレットだけでなく、チップレット間を接続するモジュールの処理能力を最大限に高めることで、演算力と帯域幅の使用コストを大幅に削減できるため、1トークンあたりの推論コストを効果的に低減できるようになる。

北極雄芯は、一貫して異なる機能を持つチップレットとそれらをつなぐ接続口の設計に注力し、さまざまな場面で用いられるチップレット集積の設計をより容易にしようと努めている。

同社は2021年に設立され、翌22年にはチップレット技術を用いたAI向け半導体「啓明930 AI Chip」を発表。すでに、機能の異なるチップレットを集積するプロセスの検証を終えており、開発・設計、テープアウト、国内サプライチェーンによる2.5D(2.5次元)パッケージング、AIツールチェーン、モジュール展開、さらにチップレットアーキテクチャのコンパイルやデータリンクの最適化などを完了している。

23年には、独自開発したチップレットの接続口「PB Link」のテストに成功。PB Linkは低コスト・低遅延・広帯域・高信頼性を誇る。PB LinkとAI向け半導体はすでに、外部への提供を実現している。24年に入ってからは、汎用型の高性能SoCチップレットやチップレット技術を用いたAIアクセラレーター「Zeus Gen2 AI」、GPUチップレットなどを相次いでテープアウトしている。また、各種チップレットを絶え間なく打ち出して先行者の強みを維持しつつ、業界に先駆けて中国初の「チップレット製品ライブラリ」の構築を加速していくという。

*1ドル=約160円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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