香港の「リトル深圳化」加速、中国本土系飲食チェーンが次々進出の背景

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香港に中国本土系の飲食店が増加している。タピオカなどのドリンクスタンドから四川料理や湖南料理などの中華チェーンまで、これまで中国本土でしか展開していなかった店を香港で見かけるようになった。なぜだろうか。

香港人の「北上ブーム」と家賃の下落が追い風に

コロナ禍後、香港でブームになっているのが食事やマッサージや買い物で深圳に出かける「北上消費」だ。香港の半額程度で飲食できる割安感が魅力で、週末に深圳にいると香港人が話す広東語が聞こえてくることも多い。

広東省で人気の牛肉火鍋店「八合里」や、湖南料理の「農耕記」、羊肉の串焼きが食べられる「木屋焼烤」など本土系チェーン店は2023年以降、続々と香港に出店している。香港島の中心地の一つである銅鑼灣(コーズウェイベイ)から数キロ東の場所に位置する北角(ノースポイント)に6月にオープンした農耕記は、平日の夜でも多くの客で賑わっている。

農耕記の唐辛子と豚肉の炒め物。本格的な湖南料理が香港でも食べられるようになった。

北上消費ブームに加え、香港の家賃の下落も追い風になっている。コロナ禍で大きな打撃を受けた香港の飲食店は、その後は地元の人が深圳で外食するようになったことで、相変わらず苦しい。閉店した店も少なくなく、テナント料が下がったところに大陸系の飲食店が出店する。香港メディアによると2024年4月に香港の中心地の一つである旺角(モンコック)にオープンした深セン発の串焼きチェーン店 木屋燒烤の1ヶ月の賃料は26.8万香港ドル(約536万円)。前年まで同じ場所で営業していたパン屋の賃料は40万香港ドル(約800万円)だったので、33%下落したことになる。コロナ禍で池袋や上野に多くのガチ中華がオープンしたのと同じ構図だ。

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香港の沙田のショッピングモールには中国チェーンの太二酸菜魚や牛肉鍋の八合里、煮込み焼き魚の探魚などがオープンし、SNSでは「リトル深圳になった」という声もあがる。

以前は深セン必食と謳われていた八合里牛肉火鍋の広告。今は香港でも食べられる。

日本に2023年に進出して話題になったカフェチェーン蜜雪冰城(MIXUE)と庫迪咖啡(Cotti Coffee)は同年、香港にも店を出している。両チェーンは低価格をウリに中国で店舗数を伸ばしてきたが、香港でも他のドリンクスタンドに比べると安価な価格で商品を提供しており、価格競争力は高い。

多くの人が並ぶ香港の蜜雪冰城

海外進出のファーストステップに

中国本土の企業がグローバル進出を目指す最初のステップとして香港を選ぶケースも多い。筆者が中国に留学していた2016年ごろからはやり始めたドリンクスタンドの喜茶(Hey Tea)は2018年に香港に出店し、同年にシンガポール、2023年にニューヨーク、さらに2024年6月にはパリ、7月にはロンドンにも進出を果たした。香港から華人・華僑が多いシンガポールやマレーシア、カナダ、日本に進出先を広げ、欧米を目指すのが外食チェーンの王道と言える。

ティードリンクスタンドの喜茶

中国の景気減速を背景に、最近は中国企業の海外進出が非常に活発化している。香港に新しく登記された企業のリストをみると、ドリンクスタンド「 霸王茶姬(CHAGEE)」や辛い炒め物が人気の湖南省料理チェーン「費大廚」など大中国本土では名の知れた飲食店の名前が並んでいる。

筆者が中国留学中に食べていた懐かしいチェーン店の料理が香港でも食べられるようになることは嬉しいが、香港らしさが薄くなってしまうことに複雑さも覚える。

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作者:阿生

東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng

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